- 公開日: 2026.08.12
- ゼロから学ぶ住宅ローン
住宅ローンの繰り上げ返済|2つの型と損しないための注意点

住宅ローンを借りるなら、あわせて考えておきたいのが繰り上げ返済です。「余裕ができたら早めに返したほうがいい」と聞いたことがある方も多いでしょう。
たしかに利息を減らせる効果はあります。ただしいつ・いくら・どのやり方で返すかによって、効果も副作用も変わります。ここでは仕組みからやさしくほどいたうえで、資金計画の中でどう位置づければよいかを整理していきます。
住宅ローンの繰り上げ返済とは?
住宅ローンは数千万円を何十年もかけて返していく借入れです。毎月の返済とは別に、まとまったお金を追加で返すことを繰り上げ返済(一部繰上返済)といいます。
ここがいちばん大事なところなのですが、繰り上げ返済で払ったお金は、まるごと元金(借りた金額そのもの)の返済に充てられます。元金が減れば、その後にかかる利息も減る——これが「利息を節約できる」と言われるしくみです。
やり方は大きく2種類。返済期間を短くする「期間短縮型」と、毎月の返済額を下げる「返済額軽減型」です。同じ金額を入れても効果の出方が違うので、後ほど比べてみましょう。詳しいルール(手数料・最低金額・手続き方法)は金融機関や商品によって異なります。
「最初の数年は利息しか払っていない」は本当?

よく耳にする話ですが、これは正確ではありません。
多くの人が選ぶ元利均等返済では、毎月の返済額は一定で、その内訳が「利息分」と「元金分」に分かれています。返済が始まった当初は残高が大きいぶん利息の割合が高く、元金の減りがゆっくりになりますが、元金がまったく減っていないわけではありません。返済が進んで残高が減るにつれ、同じ返済額のなかで元金の割合がだんだん増えていきます。
この「初期ほど利息の割合が高い」という性質があるからこそ、繰り上げ返済は早い時期に行うほど、減らせる利息が大きくなります。逆に、返済の終盤で行っても効果は小さくなります。
ちなみに元金均等返済という方法もあり、こちらは毎月返す元金が一定で、返済額が少しずつ下がっていきます。どちらを選べるかは金融機関によりますので、申し込み時に確認しておきましょう。
期間短縮型と返済額軽減型、どちらを選ぶ?
同じ100万円を繰り上げ返済しても、選ぶ型で「何が楽になるか」が変わります。
| 比較の観点 | 期間短縮型 | 返済額軽減型 |
|---|---|---|
| 変わるもの | 返済が終わる時期が早くなる | 毎月の返済額が下がる |
| 毎月の家計 | 変わらない | すぐに楽になる |
| 利息を減らす効果 | 一般に大きい | 一般に期間短縮型より小さい |
| 向いている人 | 定年までに完済したい/家計に余裕がある | 教育費などで支出が増える時期が近い/金利上昇に備えたい |
「利息を減らしたいなら期間短縮型、毎月の負担を軽くしたいなら返済額軽減型」——まずはこの理解で十分です。ただし期間短縮型には後述する注意点(住宅ローン控除)がありますので、そこだけは押さえておいてください。
手数料と「いくらから」は商品ごとに違います
かつては繰り上げ返済のたびに手数料がかかるのが当たり前でしたが、いまはインターネットからの手続きなら手数料がかからない金融機関も増えています。
たとえば【フラット35】は、保証料と繰上返済手数料が不要と公表されています。ただし1回あたりの最低金額があり、機構のインターネットサービス「住・MyNote」からの申込みで10万円以上、取扱金融機関の窓口では100万円以上です。
ここは「手数料がいくらか」と「いくらから使えるか」をセットで確認するのがコツです。手数料が無料で少額から使える商品なら、ボーナスのたびにこまめに実行するという選び方もできます。逆に窓口手続きで手数料がかかるなら、ある程度まとめてから、というほうが合理的です。条件は金融機関ごとに違いますので、契約前に必ず確認しておきましょう。
急いで返さないほうがよい場面もあります
繰り上げ返済は万能ではありません。次の4点は、実行する前に必ず考えておきたいところです。
①手元のお金がなくなってしまう
いちばん多い失敗がこれです。教育費や車の買い替えのような予定できる出費だけでなく、病気・けが・失業といった予定できない出費にも備えが要ります。住宅ローンは基本的に「返しすぎたお金」を引き出せません。生活費の数か月分は必ず手元に残しましょう。
②住宅ローン控除の対象から外れることがある
見落とされがちな注意点です。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)の対象になる借入金は、契約で償還期間が10年以上とされているものに限られます。国税庁は、繰上返済をした場合の償還期間は繰上返済後の期間で判定するとしており、繰り上げたことで10年以上に該当しなくなった場合は、その年以後は控除を受けられません。
判定の基準は「当初の契約で最初に償還した月から、短くなった後の最終の償還月までの期間」。ここが10年以上あれば控除は続けられます。期間短縮型を選ぶときは、この線を割らないか確認してください。制度の要件は改正されることがあるため、詳細は国税庁の情報を確認するか、税務署へご相談ください。
③団信という保障がなくなる部分がある
住宅ローンには団体信用生命保険(団信)が付いていることが多く、契約者に万一のことがあれば残りの債務は保険金で完済されます。繰り上げ返済で減らした分は、自分の現金で先に払ったことになるという見方もできます。保障の性質を踏まえて、手元資金とのバランスで判断しましょう。
④運用に回したほうがよいかは、単純な利率比較では決まらない
「ローン金利より高い利回りで運用できるなら、そちらが有利」という考え方はあります。ただし繰り上げ返済は将来の利息を確実に減らせるのに対し、投資の運用成果は約束されておらず元本割れもあり得ます。数字の大小だけで比べられる性質のものではない、という点は押さえておきましょう。
実行する前に決めておきたい3つのこと
- 手元に残す金額を先に決める……生活費の数か月分、直近で予定している大きな出費、教育費の準備分。ここを差し引いた残りが、繰り上げ返済に回せるお金です。
- 目的から型を選ぶ……早く完済したいのか、毎月を軽くしたいのか。目的が決まれば型は自然に決まります。
- 控除と手数料を確認する……住宅ローン控除の残り期間、繰上返済手数料、最低金額。この3点を確認してから金額を決めます。
よくある質問
Q. こまめに実行するのと、まとめて実行するのはどちらが得ですか?
手数料がかからない商品なら、早い時期に実行できるぶん、こまめなほうが利息を減らす効果は出やすくなります(元金が早く減るため)。逆に1回ごとに手数料がかかる商品なら、回数を抑えたほうが有利になることもあります。手数料の有無と最低金額を確認したうえで判断しましょう。
Q. 期間短縮型と返済額軽減型で迷ったら、どう決めればよいですか?
これから支出が増える予定があるかどうかで分けるのが分かりやすい考え方です。お子さんの進学が近いなど、数年内に家計が苦しくなりそうなら返済額軽減型。当面は余裕が続きそうで、定年前に完済しておきたいなら期間短縮型。迷ったときは、返済額軽減型のほうが家計の安全側に働きます。
Q. 金利が上がりそうなときは、繰り上げ返済を急いだほうがよいですか?
変動金利で借りている方が気になるところですね。参考になる動きとして、三菱UFJ銀行は2026年9月1日から住宅ローンの変動金利の基準金利を見直すと公表しています(同行公式・2026年6月17日現在。9月の基準金利は8月31日に発表予定で、以降は毎月1日を基準日として見直すとされています)。ただし基準金利の見直しは、そのまま適用金利や返済額が上がることを意味するものではありませんし、時期も内容も金融機関ごとに違います。
なお同行は「変動金利かつ元利均等返済で借入中の場合、10月1日を基準とした5年間は返済額に変更はありません(返済額の元金分と利息分の割合は変わります)」とも案内しています。返済額が据え置かれても、利息の割合が増えて元金の減りが遅くなる——ここが、いわゆる5年ルールで誤解されやすい点です(元金均等返済には5年ルール・125%ルールはありません)。
ですから金利上昇局面での繰り上げ返済は、「あわてて全額を投じる」のではなく、手元資金を確保したうえで元金を計画的に減らしていくという向き合い方が現実的です。ご自身の契約がどの金利タイプなのか、返済のお知らせなどで確認するところから始めましょう。
Q. 繰り上げ返済をすると、住宅ローンの契約内容も変わりますか?
期間短縮型なら返済終了日が、返済額軽減型なら毎月の返済額が変わります。手続き後には新しい返済予定表が発行されますので、金額と期間が思っていたとおりになっているか必ず確認してください。
まとめ
繰り上げ返済は、早い時期に・元金を・手元資金を残しながら減らすのが基本です。「利息がもったいないから全部返す」ではなく、教育費や不測の出費、住宅ローン控除まで含めた資金計画の中に置いてこそ、効果が生きてきます。
だからこそ借りるときから「繰り上げ返済のしやすさ」を比べておくことをおすすめします。たとえばSBI新生銀行は、一部繰上返済手数料が0円で、保証料もかかりません。一般団信の保険料上乗せもなく、事務取扱手数料は借入金額×2.20%(税込)の定率型です。手数料を気にせず、余裕ができたタイミングで元金を減らしていけるという点は、長い付き合いになる住宅ローンでは効いてきます。店舗での相談とオンライン手続きの両方に対応しているので、返済計画を相談しながら決めたい方にも向いています。
なお、繰上返済の条件・手数料・金利・団信の内容は見直されることがあります。最新の情報は必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。

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