- 公開日: 2026.09.10
- 住宅ローンの注意点
地震で住宅が倒壊したら住宅ローンはどうなる?残債と備えを解説

地震で建物が全壊しても、住宅ローンの残債は原則としてそのまま残ります。住む家を失ったうえに返済だけが続き、建て直しのために新しいローンを組めば二重ローンになる——2011年3月11日の東日本大震災のあと、多くの世帯が直面したのがこの状況でした。ただし、地震保険・銀行の特約・被災者向けの債務整理の仕組みを知っておけば、負担はかなり小さくできます。倒壊したときに残債がどう扱われるのか、そしていまから準備できる備えを、順番に見ていきましょう。
地震で倒壊しても住宅ローンは原則免除されない

住宅ローンの返済中に地震で建物が完全に倒壊しても、住宅ローンの残債の支払いは原則として免除されません。住宅ローンは「建物を担保にお金を借りる契約」ですが、返す義務そのものは借りた人にあります。建物が無くなっても、借りたお金の返済義務は残るのです。
そのため、住宅が倒壊した場合は、建物を建て直す、土地を売って残債の返済に充てる、といった対応が必要になります。建て直しのために再度ローンを組めば二重ローンとなり、家計への負担が非常に大きくなります。支払いが行き詰まれば自己破産などの債務整理に至るリスクもあります(後述のとおり、被災者向けの債務整理の仕組みもあります)。
ここでよく誤解されるのが団体信用生命保険(団信)です。団信は、契約者が亡くなったり所定の高度障害状態になったりしたときに残債が保険金で返済される仕組みで、「建物が壊れたこと」に対する保障ではありません。つまり、家が全壊しても契約者が無事であれば、団信でローンが消えることはないのです。団信がどんなときに使えるのかは住宅ローンを払わなくてよくなるのは?団信の保障と備え方でくわしく整理していますので、あわせて確認しておくと安心です。
地震に備えるためには「地震保険」への加入は必須
地震による倒壊で住宅ローンが免除されない以上、あらかじめ「地震保険」でリスクヘッジしておくことが重要です。もうひとつ押さえておきたいのは、地震・噴火・津波が原因の火災や損壊は、通常の火災保険では補償されないという点です。「火災保険に入っているから大丈夫」とは言えません。
地震保険は単独では加入できず、火災保険とセットで契約します。保険金額は火災保険の保険金額の30〜50%の範囲で設定し、建物は5,000万円・家財は1,000万円が限度です。すでに火災保険に入っている場合は、契約期間の途中からでも地震保険を追加できます(財務省「地震保険制度の概要」/2026年9月確認)。補償内容や保険料は、どの損害保険会社で契約しても同じ内容になっているのも地震保険の特徴です。
保険金は損害の程度に応じて全損・大半損・小半損・一部損の4区分で支払われます。

ここで気づいてほしいのが、「全損」でも受け取れるのは火災保険金額の最大50%までだということです。たとえば火災保険を3,000万円で契約し、地震保険をその上限50%=1,500万円に設定していた場合、建物が全損と認定されて受け取れるのは1,500万円。ローン残債が2,500万円あれば1,000万円が残る計算になります。地震保険だけで住宅ローン残債のすべてを賄うことはできません。地震保険は被災後の生活再建のための当面の費用という位置づけで考えましょう。
建物だけではなく「家財」にも保険を適用すること

地震保険に加入するうえでの注意点は、補償の対象が「建物」だけになっていて、「家財」が含まれていないケースがあることです。火災保険・地震保険を契約する際は、建物だけでなく「家財」も補償対象に設定することが重要です。建物と家財は別々に契約するものなので、証券を見て「家財」の欄に金額が入っているかを確認してみてください。
地震で建物が倒壊すれば、家具や家電などの家財も使えなくなり、買い直しが必要になります。実際には建物の倒壊までは至らなくても、家具・家電の転倒や落下で家財だけが損害を受けるケースの方が多いと言えます。家財の保険金は、家財の種類ごとに定められた損害割合にもとづいて支払われ、家財の限度額は1,000万円です。
返済額の減免・免除につながる制度や商品
地震保険のほかにも、ローン返済の負担を軽くできる仕組みがあります。役割が違うので、まずは全体像をつかんでおきましょう。
| 備えの種類 | 何を助けてくれるか | 押さえておきたい点 |
|---|---|---|
| 地震保険 | 建物・家財の損害に対して保険金が出る | 火災保険とセット。受け取れるのは火災保険金額の最大50%まで(建物5,000万円・家財1,000万円が限度) |
| 銀行の自然災害特約 | 被災の程度に応じて住宅ローンの返済が一部免除される | 借りるときに付ける特約。上乗せ金利がかかり、取扱いは銀行ごとに異なる |
| 自然災害債務整理ガイドライン | 被災後に、残ったローンの減額・免除を金融機関と話し合える | 災害救助法の適用など要件がある。被災してから使う仕組み |
①自然災害債務整理ガイドライン(被災ローン減免制度)
災害救助法が適用されるような自然災害で住宅ローンの返済が難しくなった場合、自己破産などの法的手続きによらず、金融機関との合意にもとづいて住宅ローンの減額・免除を受けられる「自然災害による被災者の債務整理に関するガイドライン」という仕組みがあります。一定の財産を手元に残せる、債務整理をしたことが個人信用情報に登録されないため、その後の新たな借入れに影響が及ばないなど、被災者に配慮された制度です(全国銀行協会「自然災害債務整理ガイドライン」/2026年9月確認)。
利用できるかどうかには要件がありますので、被災したときはまず借入先の金融機関に相談するのが第一歩です。借入先が銀行の場合は、一般社団法人全国銀行協会 相談室(ナビダイヤル 0570-017109)でも問い合わせに応じています。
②自然災害時に返済が一部免除される住宅ローン
借りるときの選択肢として、自然災害で建物が被害を受けた場合に返済の一部が免除される特約を用意している銀行もあります。たとえば三井住友銀行の「自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン」には2つのタイプがあり、地震のほか台風・豪雨なども対象に被災の程度に応じて一定期間の返済額が払い戻される約定返済保障型(上乗せ 年0.1%)と、地震・噴火・津波で全壊の認定を受けた場合に建物ローン残高の50%相当が免除される残高保障型(上乗せ 年0.5%)から選ぶ形です。約定返済保障型は「半損」以上が対象で一部損害は対象外、残高保障型は「全損」のみが対象といった条件もあります(三井住友銀行 公式:自然災害時返済一部免除特約付住宅ローン/2026年9月確認)。
こうした特約はあとから付けられないのが一般的です。借入先を比べる段階で「災害への備えが商品としてあるか」も見ておくと、選択肢が広がります。
住宅ローンは借りすぎないこと、あわせて公的制度もチェック!
地震などの自然災害への備えとしては、地震保険への加入を検討するとともに、そもそも住宅ローンを借りすぎず、手元資金に余裕を持っておくことが大切です。被災後にいちばん効くのは、実は「毎月の返済額に無理がないこと」と「すぐ使える現金があること」だからです。頭金をどう考えるかで迷っている方は、頭金なしで住宅ローンは組める?金利と売却時のリスクを解説もあわせてご覧ください。
公的支援としては、次のような制度があります。
- 被災者生活再建支援制度…住宅が全壊した世帯などに支援金が支給される制度で、基礎支援金と加算支援金を合わせて最大300万円(単身世帯はその4分の3)。返済の必要がない給付です。
- 災害援護資金…世帯主の負傷や住宅・家財の被害があった場合に、所得が一定以下の世帯へ市町村が貸し付ける制度で、限度額350万円・償還期間10年。こちらは借入なので返済が必要です。
いずれも所得や被害の程度などの要件があります。制度の全体像は内閣府「被災者支援」にまとまっていますので、必要になったときはここと市区町村の窓口を起点にするとよいでしょう。
なお、これから住宅ローンを組む方・借り換えを検討する方は、保証料0円で一部繰上返済手数料もかからないSBI新生銀行のように、諸費用と毎月の固定費を抑えやすい銀行を候補に入れておくのも、災害に強い家計づくりの一つです。
Q. 地震で家が全壊したら、団信で住宅ローンはなくなりますか?
A. なくなりません。団信は契約者が亡くなった場合や所定の高度障害状態になった場合の保障で、建物の被害は対象外です。家が全壊しても契約者が無事であれば、残債はそのまま残ります。
Q. 地震保険に入っていれば、住宅ローンの残債は全額返せますか?
A. 難しいのが実情です。地震保険の保険金額は火災保険金額の30〜50%の範囲で設定するため、全損でも受け取れるのは最大50%まで。残債が保険金を上回ることは珍しくありません。生活再建の資金として位置づけましょう。
Q. 火災保険の契約途中からでも地震保険は付けられますか?
A. 付けられます。すでに火災保険を契約している場合でも、契約期間の途中から地震保険を追加できます。建物だけでなく家財も対象にできるか、あわせて確認しておくと安心です。
Q. 被災してローンが払えなくなったら、まずどこに相談すればいいですか?
A. 最初の相談先は借入先の金融機関です。滞納してから動くより、支払いが難しくなりそうな段階で相談したほうが選べる手段が多くなります。借入先が銀行なら、全国銀行協会 相談室(0570-017109)でも問い合わせに応じています。
※支援制度の金額や要件、各銀行の特約の取扱内容は変わることがあります。最新の内容は各金融機関・内閣府・お住まいの市区町村の公式サイトでご確認ください。

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