- 公開日: 2026.08.01
- オープンハウス見学
中古住宅で引渡し後にガスが使えない!契約不適合責任と対処法

中古物件のオープンハウスを見学する際、立地条件や間取り、日当たりなどのチェックはもちろん、主要構造部分や設備機器などに不具合が無いかもチェックする必要があるということを以前取り上げました。
もしその物件が気に入って、不具合箇所の問題が解消すれば、晴れて契約、引渡しへと進みます。
ところが、引渡しを受けた後で不具合が発覚するケースがあります。
こんなときはどうすれば良いのでしょう。泣き寝入りするしかないのでしょうか?
結論からいえば、泣き寝入りする必要はありません。ただし、権利を使うには期限と契約書の書き方という2つの壁があります。順番に見ていきましょう。
設備機器は、一定期間使用しないと故障の原因になることも
引渡し後に不具合が見つかる箇所として代表的なのが「給湯器」です。オープンハウスや内覧の時は問題が無かったはずなのに、いざ引越してみたらお湯が出ない、ということが起こります。
これは、売主の居住中は毎日使用していたものの、売買に伴って売主が引っ越してから一定期間使われないままになることで、着火装置などが動かなくなってしまうためです。他にも、ガスコンロや給排水設備で同様のケースが考えられます。
特に設置から10年以上経過している設備は注意が必要です。給湯器やガスコンロはおおむね10年前後で交換時期を迎えるといわれており、「今は動いているが、いつ止まってもおかしくない」状態のこともあります。
そこで、引渡しの直前にもう一度現地を確認する機会(引渡し前の内覧)をつくり、次の点を実際に動かして確かめておきましょう。
| 確認する場所 | 見るポイント | 備考 |
|---|---|---|
| 給湯器・ガスコンロ | 実際にお湯を出す・点火するところまで確認する | 電源が入るだけでは不十分。設置年(本体の銘板)も見ておく |
| 水まわり(台所・浴室・洗面・トイレ) | 通水して排水の流れ・水漏れ・においを確認 | 長期間使われていない排水口は封水が切れてにおうことがある |
| 電気・換気・エアコン | ブレーカーを上げて照明・換気扇・エアコンを動かす | 設備表で「引渡し対象」となっているものを1つずつ |
| 建具・サッシ | すべての扉・窓・雨戸を開け閉めする | 建て付けの狂いは基礎や床の不具合のサインのことも |
中古住宅の売買では、売主が記入する「設備表」と「物件状況報告書(告知書)」という書類があります。どの設備が引渡しの対象で、どこに不具合があると売主が認識しているかが書かれた重要な資料です。契約前に必ず目を通し、内容と現物が一致しているか確かめてください。
主要構造部分の不具合は、契約そのものの効力を失いかねない?
例えば、柱にシロアリが巣食っていたり、屋根から雨漏りしているという場合は、物件が契約の内容に適合していないことになりますから、売主側に修補や損害賠償などの責任が生じる可能性があります。
そもそもシロアリ・雨漏りなどは、居住中にその“兆候”が現れているはずで、売主がそれを知りながら告げなかった場合には責任を免れません。また、売主から売却を依頼された不動産会社にも、調査・説明の面で責任の一端があるといえます。
売却を依頼されたら、物件を調査して不具合箇所が無いかを確認する必要がありますし、売主にもヒアリングして事実関係を確かめ、どのような措置を講じるのかを整理したうえで売却活動を開始すべきなのです。
【重要】「瑕疵担保責任」は「契約不適合責任」に変わりました
ここで、2020年4月1日に施行された改正民法(債権法改正)による大きな変更点をお伝えします。かつて売買契約書に記載されていた「瑕疵担保責任」という枠組みはなくなり、「契約不適合責任」に改められました(法務省・民法の一部を改正する法律)。2020年4月1日以降に結ばれた契約には、こちらのルールが適用されます。
買主にとって大きいのは、請求できる内容が増えたことです。
| 買主ができる請求 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 追完請求 | 修補(直してもらう)・代替物の引渡しなどを求める | 改正前の瑕疵担保責任にはなかった請求 |
| 代金減額請求 | 直してもらえないときに、程度に応じて代金を減らしてもらう | 原則として先に追完の催告が必要 |
| 損害賠償請求 | 生じた損害の賠償を求める | 売主に帰責事由がない場合の扱いなど要件に注意 |
| 契約の解除 | 契約をなかったことにする | 不適合が軽微な場合は解除できない |
そして必ず押さえておきたいのが期限です。種類・品質に関する不適合については、買主が不適合を知った時から1年以内にその旨を売主へ「通知」しなければ、原則として権利を主張できなくなります(民法566条)。改正前と違い、1年以内に必要なのは「通知」までで、具体的な請求まで済ませる必要はありません。不具合を見つけたら、まず記録(写真・日付)を残して、書面やメールなど残る形で売主・不動産会社に伝えることが大切です。
なお、売主が不動産会社(宅地建物取引業者)の場合は、宅地建物取引業法により、担保責任の期間を引渡しの日から2年以上とする場合を除いて、民法の規定より買主に不利な特約は無効とされています。一方、売主が個人の中古住宅では、実務上「契約不適合責任は引渡しから3か月」「設備は対象外」といった特約が設けられることが多く、誰が売主かで守られ方が大きく変わります。ただし、売主が不適合を知りながら告げなかった事実については、免責の特約があっても責任を免れません(民法572条)。
不具合に関するトラブルに巻き込まれないためには、特約を明記してもらう
設備機器も主要構造部分も、不具合が発生した場合の取り決めを、売買契約書の特約条項に具体的に書いてもらうようにしましょう。
加えて、引渡しを受けた後、一定期間内に発生した不具合についての責任の所在も明記してもらいます。民法にも規定はありますが、実際には契約書の特約が優先されるため、できるだけ長い期間にしてもらう交渉が有効です。目安として、主要構造部分については3〜6か月、設備機器については2〜3か月を申し出てみるとよいでしょう。実際に交渉にあたるのは不動産会社ですから、こちらの意向をしっかり伝えておきます。
さらに、いまは買主が使える仕組みが増えています。
- 建物状況調査(インスペクション)……2018年4月1日施行の改正宅地建物取引業法により、中古住宅の売買を仲介する不動産会社は、調査を実施する者のあっせんに関する事項を媒介契約書面に記載し、調査が実施されている場合は重要事項説明でその結果の概要を説明することが義務づけられました(調査を受けること自体は任意で、費用は依頼者の負担です)。説明の対象となるのは、実施から一定期間内(原則1年以内、鉄筋コンクリート造等の共同住宅は2年以内)の調査結果です。「インスペクションを受けたいのですが」と自分から切り出してよいと知っておいてください。
- 既存住宅売買瑕疵(かし)保険……調査で一定の条件を満たすと加入でき、引渡し後に見つかった構造上の不具合や雨漏りの補修費用などが保険でカバーされます。売主が個人で責任期間が短い場合ほど、検討する価値があります。
- 契約前の再内覧……契約直前・引渡し直前にもう一度現地を確認する機会をつくりましょう。
よくある質問
Q. 引渡し後に給湯器が動かなくなりました。誰に言えばよいですか?
A. まず仲介した不動産会社に、できるだけ早く記録の残る形(メール等)で連絡してください。売買契約書の特約に設備の保証期間が定められていれば、その期間内かどうかが分かれ目になります。あわせて、契約書と設備表の該当箇所を確認しておきましょう。
Q. 「設備は現況有姿(げんきょうゆうし)で引き渡す」と言われました。何かあっても諦めるしかない?
A. 現況有姿は「今ある状態のまま引き渡す」という意味で、中古住宅ではよく使われます。ただし特約の書き方によって扱いは変わりますし、売主が知りながら告げなかった不具合については責任を免れません。契約前に「設備の不具合が見つかった場合はどうなるのか」を書面で確認しておきましょう。
Q. 契約不適合責任の期間は、長ければ長いほどよいのですか?
A. 買主にとっては長いほど安心です。ただし個人の売主にとっては負担が大きいため、交渉になります。期間を延ばせない場合は、既存住宅売買瑕疵保険でカバーするという代替案も検討できます。
Q. インスペクションの費用はどれくらいで、誰が払うのですか?
A. 費用は調査会社や住宅の規模・調査範囲によって異なり、依頼した側の負担になります。金額と調査範囲は事前に見積もりで確認してください。「何を見て、何は見ないのか」を把握しておくことが大切です。
Q. 修繕費は住宅ローンに組み込めますか?
A. 住宅の購入と同時にリフォームを行う場合、その費用を借入対象に含められる商品があります。取り扱いは金融機関によって異なるため、購入を検討する段階で借入先に確認しておきましょう。あわせて、入居後の設備交換費用(給湯器の交換など)を資金計画に見込んでおくと、いざというときに慌てずに済みます。
まとめ
購入への流れが進んでいくと、契約・住宅ローン・引越しなどで忙しくなるため、こうしたことにはなかなか頭が回りません。
だからこそ、契約前に再度内覧を申し出て不具合が無いかチェックする機会をつくること、そして契約書の特約条項について自分の希望をしっかり伝えることの2つを、忘れずに進めてください。判断に迷うときは、契約前に不動産会社や専門家に相談しましょう。
※本記事は一般的な情報をまとめたものです。個別の契約内容や紛争については、契約書の記載が優先されます。詳しくは不動産会社・弁護士等の専門家にご相談ください。改正民法の内容は法務省「民法の一部を改正する法律(債権法改正)について」、建物状況調査については国土交通省「既存住宅流通について(建物状況調査(インスペクション)活用に向けて)」をご確認ください。

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