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任意売却物件は買っても大丈夫?契約の注意点と確認すべき5つのこと

任意売却物件(以下、任売物件といいます)の購入を検討するにあたっては、一般的な売却物件の購入手続きに加えて、いくつか知っておきたい注意点があります。

それは任売物件の売主が、資金的な理由でどうしても売却しなければならない状況にあるからです。買主となる皆さんには、慎重さと同時に、決断のスピードが求められます。

また、任売ならではの“イレギュラーなルール”もあります。「相場より安く買えるかもしれない」という魅力の裏側で、何を確認しておけばよいのか。ここでは、はじめて検討する方に向けてやさしく整理していきます。

任売取引では買主側からの条件交渉ができない場合が多い

任売物件の売主は、住宅ローンや税金の滞納など資金的な理由から、金融機関等の債権者との協議のうえで売却を選択しています。
そのため、相場を踏まえた価格であると同時に、債権者側が納得する価格でなければ売却が成立しません

皆さんが任売物件を検討する場合、価格交渉を申し出ること自体は自由ですが、債権者側が応じるかどうかは何とも言えないところです。

たとえば表示価格から100万円の値引きを申し出るとして、売主と債権者(弁護士などが関わる場合もあります)で協議したうえで、値引きなしで買う人が現れるのを一定期間待つ、といった判断になることも考えられます。交渉のテーブルにいるのが売主だけではない——ここが一般的な中古住宅との一番の違いです。

そしてもうひとつ、任売物件では売主の契約不適合責任を免責とする特約が付くことが多くなっています。引き渡しを受けた後で物件に不具合が見つかっても、原則として買主側の負担で補修等を行うことになる、ということです。

用語ミニ解説:契約不適合責任と、その「免責」

かつて「瑕疵(かし)担保責任」と呼ばれていた制度は、2020年4月1日に施行された改正民法によって「契約不適合責任」に改められました。引き渡された建物や土地が契約の内容に適合していなかった場合に、買主が売主へ補修(履行の追完)・代金の減額・損害賠償・契約の解除を求められる、という考え方です。古い記事や書籍にはまだ「瑕疵担保責任」の表記が残っていますが、現在の契約書では契約不適合責任として扱われます。

任売物件のように売主が個人で、資金的な余裕がないケースでは、この責任を免除する特約が結ばれるのが一般的です。特約自体は民法上、原則として有効とされています。

ただし、免責にも限界があります。押さえておきたいのは次の2点です。

  • 売主が不具合を知りながら買主に告げなかった場合、その部分については免責されません(民法第572条)。
  • 売主が宅地建物取引業者である場合は、引き渡しから2年以上とする特約を除き、民法より買主に不利な特約は無効です(宅地建物取引業法第40条)。

とはいえ、免責が原則である以上、建物の状態は自分の目と、できれば専門家の目で確かめておくことが重要です。中古住宅の状態を建築士などが調べる「インスペクション(建物状況調査)」を利用できないか、担当者に相談してみるとよいでしょう。

契約や権利関係で買主側が損害を被ることはないのか?

前回の説明で、任売や競売物件を専門に扱う不動産会社のお話をしました。

一般の不動産会社でも任売物件を扱うことはありますが、専門に扱う会社は取扱件数が格段に多く、さまざまな事情に精通した担当者がついてくれます。

先ほど「買主側からの条件交渉が難しい」とお話ししましたが、これは買主が不利になるという意味ではありません。任売という特殊な事情を抱えた物件であり、その事情を考慮して相場よりも価格を抑えているからこそ、そこからさらに下げる交渉が通りにくい、という意味です。

実務では、債権者に配慮した価格設定を行い、抵当権などの複雑な権利関係を調整したうえで、すべての抵当権が抹消されたまっさらな状態で買主に引き渡す——ここまでを段取りするのが、任売を扱う不動産会社の仕事です。住宅ローンや登記手続きの手配も含めて進めてくれるため、権利関係については過度に心配する必要はないでしょう。

ただし、「プロに任せておけば何も確認しなくてよい」ということではありません。任売ならではの、買主側で確かめておきたい点があります。

確認したいこと 一般的な中古住宅 任意売却物件
価格交渉 売主との協議で決まる 債権者の同意が必要で、応じられないことが多い
契約不適合責任 期間を定めて負うことが多い 免責とする特約が付くことが多い
引き渡しの時期 売主の都合で調整しやすい 債権者との期限があり、後ろにずらしにくい
取引が流れる可能性 比較的低い 債権者の同意が得られない・競売の手続きが先に進むと、成立しないことがある
マンションの滞納管理費 引き渡しまでに清算されるのが通常 滞納が残っている場合、買主が支払義務を負うことがある

とくに見落とされやすいのがマンションの滞納管理費・修繕積立金です。区分所有法第8条により、管理組合は滞納分を特定承継人=そのマンションを買った人にも請求できるとされています。任売物件は売主が資金難であることが多く、管理費が滞っているケースは珍しくありません。「滞納はいくら残っているか」「引き渡しまでに清算されるのか」は、契約前に必ず書面で確認してください。

このほか、売主の引っ越し時期・残置物の扱い・引き渡し猶予の有無も、あとからトラブルになりやすいポイントです。いずれも担当者に質問すれば答えてもらえることですので、遠慮せず聞いておきましょう。

住宅ローンの準備は「先に」進めておく

任売物件を検討するうえで、初心者の方がいちばんつまずきやすいのが時間の制約です。

任意売却には、債権者との間で「いつまでに売却を成立させるか」という期限があります。競売の手続きが並行して進んでいることもあり、のんびり住宅ローンを比較している時間はありません。良さそうな物件が出てから金融機関を探し始めると、間に合わずに他の買主に決まってしまうこともあります。

そこで、任売物件を視野に入れるなら次の順番で進めるのがおすすめです。

  1. 先に住宅ローンの事前審査を受けておく……借入可能額の目安がわかっていれば、物件が出たときにすぐ動けます。
  2. 諸費用を含めた資金計画を立てておく……仲介手数料・登記費用・火災保険料に加え、任売物件では引き渡し後の補修費も見込んでおくと安心です。
  3. 金利タイプと団信の条件を決めておく……あとから変更するのは手間がかかります。判断の軸を先に決めておきましょう。

金融機関によって、金利だけでなく事務手数料や保証料、団信の内容はかなり違います。たとえばSBI新生銀行は保証料と一部繰上返済手数料が0円で、一般団信も上乗せ金利なしで付帯するため、諸費用の見通しを立てやすいのが特徴です。店舗相談とオンライン手続きの両方に対応しているので、「急ぎで相談したい」という場面でも選択肢になるでしょう。

よくある質問

Q. 任売物件は本当に相場より安いのですか?
A. 事情を考慮して価格を抑えていることが多いのは事実ですが、必ず安いとは限りません。債権者が納得する金額でなければ成立しないため、極端に安くなることも少ないと考えておきましょう。周辺の成約事例と見比べて判断してください。

Q. 契約したのに引き渡しを受けられないことはありますか?
A. 債権者の同意が得られない、競売の手続きが先に進んでしまったなどの理由で、成立しないことはあり得ます。そうなった場合に手付金がどう返還されるのかを、契約前に必ず確認しておきましょう。

Q. 住宅ローン控除は使えますか?
A. 物件や入居時期などの要件を満たせば、中古住宅として利用できます。ただし床面積や住宅の性能、入居時期によって条件が異なりますので、個別の適用可否は国税庁の案内や税務署でご確認ください

まとめ

任意売却は、売主にとっては競売よりも納得のいく形で整理できる手段であり、買う側にとっても選択肢が広がる仕組みです。

一方で、価格交渉が通りにくい・契約不適合責任は免責が基本・引き渡しまでの期限がタイト・マンションでは滞納管理費が付いてくることがある——といった、一般的な中古住宅とは異なる性質があります。

だからこそ大切なのは、良質な物件かどうか、誠実に説明してくれる不動産会社かどうかを見極める目と、先に住宅ローンと資金計画を固めておく準備です。この2つがそろっていれば、任売物件は十分に現実的な選択肢になります。

※記載の制度は2026年8月時点で確認したものです。個別の物件の条件や契約内容は、必ず取り扱いの不動産会社・専門家にご確認ください。

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