- 公開日: 2026.09.04
- 住宅購入の基礎知識
単身者向け賃貸併用住宅の特徴|メリット・注意点と資金計画

賃貸併用住宅を検討するとき、まず決めることになるのが「ファミリー向けにするか、単身者向けにするか」です。同じ土地・同じ予算でも、この選択で収支の形も、暮らしの感じ方もかなり変わってきます。ご自身の予算と賃貸経営の方針にあわせて、それぞれのメリット・デメリットを把握したうえで選びましょう。
前回の記事では、ファミリー向け賃貸併用住宅の特徴を紹介しました。今回は、単身者向け賃貸併用住宅の特徴を、良い面と気をつけたい面の両方から見ていきます。あわせて、住宅ローンが使えるのかという資金面の話まで整理しますので、はじめて検討する方もご安心ください。
限られた土地と建物で多くの入居者を収容できる
単身者向け賃貸併用住宅の特徴は、まず限られた土地と建物で多くの入居者を受け入れられることにあります。
単身者向けの住戸は、居室が1部屋あれば成り立つケースが多くなります。ファミリー向けなら最低でも2〜3部屋は必要になることを考えると、同じ床面積でも1戸あたりを小さくすることで、住戸数を増やすことができるわけです。
そのため、同じ広さの土地・建物でも、単身者向けのほうが多くの家賃収入を見込めるという構図になります。
参考までに、総務省の令和5年住宅・土地統計調査によると、共同住宅(マンション・アパート)1住宅当たりの延べ面積は全国平均で50.31㎡です。単身者向けの住戸はこれよりかなり小さく設計されることが多く、限られた敷地に住戸を並べやすいことが数字からもうかがえます。
家賃収入が高く利回りも期待できる

先ほど述べたとおり、単身者向けの賃貸併用住宅では限られた土地と建物でも多くの入居者を受け入れられるため、結果として家賃収入の合計を大きくしやすいという特徴があります。
ファミリー向けで1世帯に3部屋を貸した場合、得られるのは1世帯分の家賃です。一方、単身者向けであれば同じ規模で3戸に分けて3人に貸すことができ、3戸分の家賃が見込めます。1戸あたりの家賃はファミリー向けより低くても、合計では上回ることが多いのはこのためです。
また、単身者向けはファミリー向けと比べて設備が少なく、メンテナンスにかかるコストも抑えやすい傾向があります。そのため、限られた土地と建物でも利回りを確保しやすく、効率的な賃貸経営がしやすいといえます。
ただし注意点もあります。戸数が増えるほど、入退去の回数も、募集にかかる費用も増えます。1戸あたりの家賃が低いぶん、原状回復費用や広告料が収支に占める割合は相対的に重くなります。「家賃の合計」だけでなく、年間でならした手残りで考えるようにしてください。
利便性が良い立地であれば次の入居まで早い
単身者向け賃貸併用住宅は、入居者が退去したあと、次の入居者が決まるまでの期間が短めになる傾向があります。特に、駅が近い、スーパーマーケットやコンビニエンスストアが徒歩圏にあるといった利便性の良い立地であるほど、空室期間は短くなるといえます。
ファミリー向けの場合、立地の利便性だけでなく、共働きなら双方の勤務先へのアクセス、お子さんがいれば学校や学区の問題など、部屋を選ぶ基準が多岐にわたります。検討に時間がかかるぶん、退去後に次が決まるまでも長くなりがちです。
単身者であれば、基本的には勤務先や学校へのアクセスと生活の利便性が中心で、判断の軸が少なくなります。そのため、良いと思った物件はそのまま契約に結びつきやすいのです。
ただし、これは立地が良い場合の話です。利便性が伴わない場所では、単身者向けはむしろ空室が長引きます。単身者は「そこに住まなければならない理由」が弱いぶん、条件の良い別の物件へ簡単に移ってしまうからです。単身者向けの利点は、立地とセットで初めて成り立つと考えておきましょう。
賃貸物件の設備の修繕や維持費用が安い

単身者向けの賃貸住戸では、設備の修繕費や維持費といったコストを抑えやすいというメリットもあります。
単身者向けはファミリー向けほど多くの設備を必要としないため、その分の費用を抑えられます。また、退去後のハウスクリーニングなどの原状回復費用についても、居室が1部屋程度であればファミリー向けより安く済みます。
一方で、単身者向けの住戸ではエアコンや給湯器、照明などをあらかじめ備え付けることが一般的です。備え付けた設備は、故障や不具合、破損が生じれば貸主の負担で修繕することになります。戸数が多いほど、同じ設備を戸数分だけ抱えることになる点は忘れないでください。エアコンや給湯器はおおむね10年前後で交換時期を迎えるため、「何年目に、何戸分の設備をまとめて入れ替えるのか」を最初から資金計画に入れておくと安心です。戸数と設備のバランスを考えながら検討しましょう。
入居期間が短めである
単身者向け賃貸併用住宅の大きなデメリットは、1回あたりの入居期間が短めになりやすいことです。
入居者が学生であれば卒業に伴って退去しますし、独身の社会人であれば転勤や結婚といったライフイベントで住まいを変えます。一方、ファミリー向けの賃貸物件は、お子さんの学校のことや夫婦それぞれの事情があるため、いったん入居すると長く住み続ける傾向にあります。
単身者向けは、限られた土地と建物で多くの入居者を受け入れられて利回りが高いというメリットがある反面、入れ替わりが激しくなると家賃収入が不安定になりやすいのが弱点です。
そのため、単身者向け賃貸併用住宅を建てる場合は、立地を十分に検討することに加え、入居者の募集に強い不動産仲介会社に依頼するなどの工夫が必要です。あわせて、卒業や異動が重なる2〜3月に退去が集中しやすいことを前提に、その時期に募集をかけられるよう準備しておくと、空室期間を短くできます。
生活音やマナーをめぐるトラブルが起きやすい

もうひとつ知っておきたいのは、単身者向けでは生活音やマナーをめぐるトラブルが表面化しやすいという点です。もちろん入居者の大多数はきちんと生活されていますが、戸数が多くなるぶん、そうしたトラブルが起こる確率は上がります。
具体的には、ゴミ出しのルールが守られない、深夜の音楽や来客による騒音、家賃の入金の遅れといったことが挙げられます。ファミリー世帯の場合は、同じ住戸に複数の家族が暮らしているため、家庭内で自然と生活時間やマナーの意識が働きやすく、結果として近隣とのトラブルが起きにくい面があります。
賃貸併用住宅では、貸主であるあなた自身が同じ建物に住んでいます。だからこそ、トラブルは他人事ではなく、日々の暮らしの快適さに直結します。対策として、入居審査を管理会社と一緒にしっかり行うこと、入居時にゴミ出しや騒音についてのルールを書面で明確に伝えること、家賃保証会社の利用を必須にすることが有効です。
また、日々の対応を自分で抱え込まないことも大切です。管理を専門の会社に委託しておけば、クレーム対応や家賃の督促を直接顔を合わせずに進められます。賃貸併用住宅では、この「直接やり取りしない仕組み」が、長く住み続けるうえで想像以上に効いてきます。
ファミリー向けとの違いを一覧で比べる
ここまでの内容を、ファミリー向けと並べて整理してみましょう。どちらが優れているという話ではなく、ご自身の土地の条件と、どんな暮らし方をしたいかで選ぶものだとお考えください。
| 比較の観点 | 単身者向け | ファミリー向け |
|---|---|---|
| 同じ広さで確保できる戸数 | 多い | 少ない |
| 家賃収入の合計 | 大きくしやすい | 戸数が少ないぶん限られる |
| 1戸あたりの入居期間 | 短めになりやすい | 長くなりやすい |
| 退去後に次が決まるまで | 立地が良ければ早い | 検討に時間がかかりやすい |
| 原状回復・設備の費用 | 1戸あたりは安い(戸数分かかる) | 1戸あたりは高い(戸数は少ない) |
| 入退去にかかる手間 | 回数が多く手間がかかる | 回数は少ない |
| 立地への依存度 | 高い | 単身者向けよりは低い |
| 向いている土地 | 駅・勤務先・学校に近い利便性の高い土地 | やや駅から離れても環境が良い土地 |
ざっくり言えば、利便性の高い土地なら単身者向け、生活環境の良さで勝負できる土地ならファミリー向けが噛み合いやすい、という整理になります。
単身世帯はこれからどうなる?公的な推計で見る
「これから人口が減るのに、単身者向けで大丈夫だろうか」という不安は、多くの方がお持ちになります。ここは感覚ではなく、公的な推計を見てみましょう。
国立社会保障・人口問題研究所が2024年4月に公表した「日本の世帯数の将来推計(全国推計)-令和6(2024)年推計-」によると、世帯総数は2030年の5,773万世帯をピークに減少に転じる一方で、単独世帯(ひとり暮らし)の割合は2020年の38.0%から2050年には44.3%へと6.3ポイント上昇すると見込まれています。世帯数でみても、2020年より増加するのは単独世帯だけで、2020年の2,115万世帯から2050年には2,330万世帯になると推計されています。
一方で、「夫婦と子」の世帯は25.2%から21.5%へと3.7ポイント低下する見込みです。また、平均世帯人員は2020年の2.21人から、2033年に初めて2人を割り込み、2050年には1.92人になるとされています。
ただし、この数字をそのまま「単身者向けなら安心」と読むのは早計です。同じ推計では、2050年に65歳以上男性の独居率は26.1%、女性は29.3%になるとされており、増える単独世帯には高齢の単身世帯が多く含まれます。学生や若い社会人を想定した間取りと、高齢の単身者が求める住まいは同じではありません。
さらに、世帯の増減は地域によって大きく異なります。全国の傾向を、そのままご自身の土地に当てはめないよう気をつけてください。市区町村単位のデータを確認したうえで判断しましょう。
資金計画のかなめ・住宅ローンは使えるのか
賃貸併用住宅を考えるうえで、多くの方が最初につまずくのがここです。ポイントを整理します。
1. 「自宅がメインであること」が基本の考え方
賃貸併用住宅は、あくまでご自身が住む家に賃貸部分がくっついた住宅です。そのため、自宅部分が一定以上を占めていることが、住宅ローンや税制優遇を使うための前提になります。たとえば住宅ローン控除(住宅ローン減税)では、国土交通省が示す要件として「店舗等併用住宅の場合は、床面積の1/2以上が居住用であること」と明記されています。
2. 【フラット35】を検討する場合の注意点
住宅金融支援機構の【フラット35】は、資金使途が「申込ご本人またはそのご親族の方がお住まいになる住宅の建設・購入資金」と定められており、第三者に賃貸する目的の投資用物件には利用できないと公式に明記されています。また併用住宅の場合、住宅部分の床面積が非住宅部分(店舗・事務所など)の床面積以上であることが必要で、非住宅部分にかかる建設費・購入価額は借入対象外です。賃貸部分をどのように扱うかは取扱金融機関の判断になりますので、検討の早い段階で必ず確認してください。
3. 民間の住宅ローンは金融機関ごとに取扱いが違う
賃貸併用住宅そのものを住宅ローンの対象としている金融機関もあれば、対象外としているところ、賃貸部分についてはアパートローンなど別の商品を案内するところもあります。「住宅ローンが使えるかどうか」は商品ごとに違うため、土地や建物のプランを固める前に、複数の金融機関に相談しておくのが安全です。
金融機関を比べるときは、金利だけでなく、事務手数料の考え方(定率型か定額型か)、保証料の有無、繰上返済の手数料、団体信用生命保険の保障範囲まで見比べてください。たとえばSBI新生銀行は、事務手数料が借入金額×2.20%(税込)の定率型で、保証料と一部繰上返済手数料がかからず、一般団信の上乗せ金利もないため費用の見通しを立てやすく、店舗での相談とオンライン手続きの両方に対応しています。賃貸併用住宅のように相談しながら進めたい計画では、窓口で顔を合わせて話せる選択肢があるかどうかも比較の材料になります。取扱いの可否や最新の条件は、各金融機関の公式サイトでご確認ください。
4. 家賃収入を返済の前提にしすぎない
賃貸併用住宅は「家賃で返済の一部をまかなえる」のが魅力ですが、空室が出れば、その分はご自身の収入から支払うことになります。全戸が空いても最低限やっていける返済額かどうかを、必ず一度は確認しておきましょう。
検討をはじめるときの進め方
はじめての方向けに、進め方の順番をまとめます。
ステップ1:目的をはっきりさせる
「返済の負担を軽くしたい」のか「将来の収入源をつくりたい」のか。目的によって、賃貸部分をどれくらいの規模にするかが変わります。
ステップ2:土地の条件から向き不向きを判断する
利便性が高い土地なら単身者向け、環境の良さが売りならファミリー向け、という見当をつけます。
ステップ3:近隣の募集家賃を自分で調べる
同じ広さ・築年数の物件がいくらで募集されているかを確認します。建築会社の提示する想定家賃は、必ずこの実勢と照らし合わせてください。
ステップ4:資金の相談を先にする
プランを詰めてから「ローンが下りない」と分かるのがいちばん困ります。賃貸併用住宅を扱っているかどうかを、早い段階で金融機関に確認しましょう。
ステップ5:空室を織り込んだ収支を作る
満室前提ではなく、たとえば1〜2戸の空室が続いた場合でも成り立つかを試算します。固定資産税・都市計画税、火災保険料、管理委託料、将来の修繕費も忘れずに入れてください。
単身者向け賃貸併用住宅のよくある質問
Q. 賃貸部分は何戸くらいがちょうどよいのでしょうか?
A. 土地の広さと、自宅部分をどれだけ確保したいかで決まります。ただし住宅ローンや税制優遇の観点からは自宅部分の割合が重要になるため、「戸数を増やしたら住宅ローンが使えなくなった」ということがないよう、資金面の条件を先に確認してから戸数を決めるのが順番として安全です。
Q. 自分が同じ建物に住んでいると、入居者は嫌がりませんか?
A. 気にされる方は一定数いらっしゃいます。玄関や動線を分ける、共用部で顔を合わせにくい配置にする、管理会社を窓口にして直接のやり取りを減らす、といった設計・運用の工夫で、かなり和らげることができます。
Q. 将来、子どもが独立したら自宅部分も貸せますか?
A. 発想としては可能ですが、住宅ローンで購入した住宅を賃貸に出すには、事前に金融機関へ相談が必要です。無断で貸すと契約違反になることがあります。将来そうした使い方を考えているなら、申し込みの段階で相談しておきましょう。
Q. 家賃収入には税金がかかりますか?
A. 家賃収入は不動産所得として所得税・住民税の課税対象になり、原則として確定申告が必要です。建物の減価償却費やローンの利息(賃貸部分に対応する分)などは必要経費にできますが、按分の考え方は個別性が高いので、税理士や税務署に確認することをおすすめします。
Q. 管理は自分でやったほうが得ですか?
A. 管理委託料は抑えられますが、入居者対応・家賃の督促・退去立会いをすべてご自身で行うことになります。同じ建物に住んでいるからこそ、直接のやり取りは負担になりやすいものです。金額だけでなく、続けられるかどうかで判断してください。
Q. 高齢の単身者を受け入れるのは難しいでしょうか?
A. これから増えるのは高齢の単独世帯なので、無視できないテーマです。見守りサービスや家賃保証会社の活用、住宅セーフティネット制度など、受け入れを支える仕組みも整えられてきています。ご自身の物件で対応できるかは、管理会社や自治体の窓口に相談して確認してみてください。
まとめ
単身者向け賃貸併用住宅は、限られた土地で戸数を確保でき、家賃収入の合計を大きくしやすいのが最大の魅力です。設備や原状回復の費用も1戸あたりでは抑えやすく、立地さえ良ければ空室期間も短く済みます。
一方で、入居期間が短くなりやすく、戸数が増えるぶん入退去の手間やトラブルの確率も上がります。同じ建物に自分たちも住むという賃貸併用住宅の特性を踏まえると、収支だけでなく「毎日の暮らしやすさ」まで含めて判断したいところです。
公的な推計では単独世帯の割合は今後も上昇が見込まれていますが、その中身は高齢の単身世帯が多くを占めます。全国の傾向と、ご自身の土地がある地域の実情は別物です。近隣の募集家賃と空室の状況を自分の目で確かめること、そして資金の相談を早めに始めることから始めてみてください。制度や商品内容は変わることがありますので、最新の取り扱い状況は必ず各金融機関・公的機関の公式サイトをご確認ください。

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