- 公開日: 2026.08.14
- 住宅ローンの注意点
住宅ローンの繰り上げ返済|2つの型の違いと注意点をやさしく解説

住宅ローンは、毎月決まった金額を利息とあわせて返していく長いおつきあいです。ただ、ボーナスや貯蓄でお金に余裕が出てきたときに「この機会に繰り上げ返済をして、残っているローンを減らしたい」と考える方はとても多いです。
繰り上げ返済をすれば住宅ローンの残債(残っている借入金)を減らせますが、いいことばかりではありません。手数料や住宅ローン控除など、知らないまま進めると損をしてしまう注意点もいくつかあります。
そこでこの記事では、これから初めて繰り上げ返済を考える方に向けて、繰り上げ返済の種類と選び方、見落としやすい注意点、そして金利が上がりやすい局面での考え方まで、順番にやさしく解説します。
繰り上げ返済には2種類が存在する

まず、繰り上げ返済を行うに当たり、住宅ローンの残債をすべて一括で返済する「全額繰上返済」と、住宅ローンの残債の一部のみを繰り上げ返済する「一部繰上返済」の2つが存在します。
全額繰上返済
全額繰上返済は、すべての住宅ローンの残債を返済することになりますので、返済後の住宅ローンの負担や金利の負担はなくなります。返済額は残債の元本に充てられますので、その後の金利負担はなくなり、本来の返済期間で支払うべき金利を軽減するメリットがあります。
一部繰上返済
一部繰上返済は、住宅ローンの残債の一部を繰り上げ返済する方法です。返済した金額分の残債は減りますが、一部繰上返済を行う場合、返済期間が短くなる「返済期間短縮型」と、毎月の返済負担額が軽減する「返済額軽減型」に分けられます。
住宅ローンを繰り上げ返済を考えている方で一番利用が多いのは「一部繰上返済」です。その中でも、返済期間短縮型を選択する方が多いとされています。
用語ミニ解説:繰り上げ返済したお金は「元本」に充てられる
初めての方がいちばん混乱しやすいのが、「毎月の返済」と「繰り上げ返済」の違いです。毎月の返済(約定返済)は、元本(借りたお金そのもの)と利息の両方に充てられますが、繰り上げ返済したお金は、その全額が元本に充てられます(SBI新生銀行の公式サイトでも同様に説明されています)。
元本が減れば、その元本にかかっていたはずの将来の利息もまとめて消えます。これが「繰り上げ返済をすると利息が減る」といわれる理由です。逆にいえば、すでに支払った利息が戻ってくるわけではないので、繰り上げ返済は早い時期に行うほど効果が大きくなります。
一部繰上返済の返済期間短縮型と返済額軽減型の違い
一部繰上返済を行う場合、返済期間短縮型と返済額軽減型の2つから選ぶことができますが、それぞれの違いは何があるのでしょうか。
返済期間短縮型
返済期間短縮型は、従来の返済期間から繰り上げ返済を行う相当額の期間を差し引くことで、トータルの返済期間を短縮するものです。
例えば、返済期間が35年の住宅ローンを契約しており、すでに10年返済が完了し、新たに繰り上げ返済として5年分に相当する額を返済する場合、残りの返済期間は、残り20年となります。
毎月の返済額は今までどおりのまま、完済の時期だけが前に動くとイメージするとわかりやすいでしょう。
返済額軽減型
返済額軽減型は、当初契約した返済期間は変わらず、毎月の返済金額を軽減する返済方法です。繰り上げ返済を行う金額を元本から差し引き、差し引いた残りの残債を残りの返済期間に合わせて計算をし直します。
こちらは完済の時期は変わらず、毎月の負担だけが軽くなるタイプです。
2つの型を並べて比べてみる
| 比較の観点 | 返済期間短縮型 | 返済額軽減型 |
|---|---|---|
| 毎月の返済額 | 変わらない | 少なくなる |
| 完済の時期 | 早くなる | 変わらない |
| 利息を減らす効果 | 同じ金額を返すなら、一般に効果が大きい | 期間短縮型に比べると小さめ |
| 向いている場面 | 定年までに完済したい/利息の総額を抑えたい | 教育費や収入減にそなえ、毎月の負担を下げたい |
| 気をつけたい点 | 手元のお金が減る/短くしすぎると住宅ローン控除に影響することがある | 返済が続く期間は変わらないので、利息の軽減は控えめ |
利息を減らすという一点で見ると、同じ金額を繰り上げ返済するなら、一般に返済期間短縮型のほうが効果は大きくなります。SBI新生銀行も公式サイトで「利息の軽減には期間短縮型が効果的」と説明しています。
効果のイメージ(金融機関が公表している試算例)
効果の大きさは、金利・残高・タイミングによって変わるため一律には言えませんが、金融機関が公表している試算例を見るとイメージがつかめます。SBI新生銀行の公式サイトでは、2,500万円を金利年2.0%・30年で借り入れ、毎月1万円を繰り上げ返済していった場合、約113万円の利息軽減効果と3年9か月の期間短縮効果が得られるという例が示されています。
あくまで一定の条件を置いた一例ですので、ご自身の場合は借入先のシミュレーションで確認してみてください。それでも「毎月1万円でもこれだけ変わる」という感覚はつかめるはずです。
自分のライフプランに合わせた返済方法を選ぶ

住宅ローンを繰り上げ返済したいと考えた場合、今後のご自身やご家族のライフプランに応じて返済方法を選ぶことが重要になります。例えば、今すぐにでも残債を減らしたいと考えているケースと、今後子供の教育費の負担が高くなることが予想される場合では、繰り上げ返済する目的が異なります。
返済期間短縮型はすぐに返済したい方におすすめ
返済期間短縮形は、今すぐにでも住宅ローンを返済したいと考えている方や、金利負担をできるだけ少なくしたい、定年まで完済したいと考えている方に向いているといえます。
返済額軽減型は将来の支出増加による負担軽減したいと考えている方におすすめ
返済額軽減型は、将来の支出増加を予想して、今のうちに毎月の返済額を減らしたいと考えている方におすすめです。例えば、今後子供の教育費の負担が高くなることが予想される場合や、転職などを予定しており収入が減る恐れがあるといった場合に最適であると言えます。
その前に「そもそも選べるのか」を確認しておく
ここでひとつ、初めての方がつまずきやすい落とし穴があります。金融機関によっては、2つの型のうち片方しか取り扱っていないことがあるのです。
たとえばSBI新生銀行は、繰上返済を返済期間短縮型のみの取り扱いとしていることを公式サイトに明記しています。「返済額軽減型にしよう」と決めていても、借入先で扱っていなければ選べません。どちらの型が選べるのか、インターネットで手続きできるのかは、繰り上げ返済を考え始めた段階で借入先の公式サイトを確認しておくと安心です。
繰り上げ返済を行う際の注意点
繰り上げ返済を行うと、返済した金額分の残債は減るメリットはありますが、いくつか注意点もあります。
家計が苦しくならないようにする
繰り上げ返済をすることで、住宅ローンの残債は減り心理的にも安心感は生まれますが、安易に繰り上げ返済をしすぎることで、家計が苦しくなってしまうのでは意味がありません。繰り上げ返済を行う場合、万が一のことを考えて手元にも資金を残しておくことが重要です。
繰り上げ返済に使ったお金は、原則として引き出して使うことはできません。病気・失業・家電や住宅設備の故障など、急な出費にそなえる分は必ず残しておきましょう。目安として生活費の数か月分、教育費や車の買い替えなど使う予定が決まっているお金は別に確保しておく、といった整理をしてから金額を決めると失敗が少なくなります。
繰り上げ返済をする場合は手数料がかかることも
繰り上げ返済を行う場合、金融機関によって手数料の扱いが大きく異なります。近年はインターネットバンキングからの手続きを無料としている金融機関が多い一方で、窓口や電話での手続きには手数料がかかる金融機関もあります。金額も金融機関ごとに違うため、必ず借入先の公式サイトや商品説明書で確認してください。
実際の例を挙げると、【フラット35】は窓口・インターネットサービス(住・My Note)のいずれでも一部繰上返済・全額繰上返済に手数料はかかりません(住宅金融支援機構の公式サイトで確認)。またSBI新生銀行は、繰上返済手数料を0円とし、インターネットバンキング「パワーダイレクト」から1円以上1円単位で、いつでも何度でも繰り上げ返済ができるとしています。こうした金融機関なら、少額をこまめに返していく使い方もしやすくなります。
なお、住宅ローンを契約する際に保証料を支払っている場合、期間が短くなることで保証料の一部が返金され、その際に別途事務手数料が必要になることがあります。また、固定金利の特約期間中の繰り上げ返済について独自の取り扱いを定めている金融機関もありますので、条件は事前に確認しておきましょう。
住宅ローン控除が受けられなくなることも
見落とされがちですが、いちばん金額のインパクトが大きいのがこの点です。住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、返済期間が10年以上あることが条件とされているため、繰り上げ返済で期間を短くしすぎると、その年以後は控除が受けられなくなってしまいます。
ここで大事なのが「10年」の数え方です。国税庁は、繰上返済後の償還期間で判定するとしたうえで、当初の契約で定められていた最初に償還した月から、短くなった後の最終の償還月までの期間が10年以上あれば、その年以後も控除を受けられると示しています。つまり「残りの返済期間が10年を切ったらアウト」という意味ではありません。すでに10年以上返済してきた方であれば、返済期間を短くしても条件を満たすケースがあります。
【フラット35】でも、一部繰上返済の結果として返済期間(初回返済日から最終回返済日まで)が10年未満になると控除の対象外になり、申告に必要な「融資額残高証明書」が送付されなくなると案内されています。判定の起点が「初回返済日」であることが、公式の案内からもはっきり読み取れます。
控除の内容自体も、以前とは変わっています。2022年(令和4年)1月以降に入居した場合は、控除率が年末残高等の0.7%、控除期間は住宅の区分に応じて10年または13年(国税庁タックスアンサーNo.1211-1、令和7年4月1日現在の法令等)となっており、かつての「1%・10年間」は2021年以前に入居した方の内容です。控除を受けられる年の合計所得金額の上限などの要件もあるため、制度の最新の内容と、ご自身が対象かどうかは国税庁のウェブサイトでご確認ください。
繰り上げ返済で減る利息と、控除で戻ってくる税金のどちらが大きいかはケースによって変わります。控除を受けている期間中に大きく期間短縮をするなら、金額を決める前に一度、税務署や税理士、借入先に相談するのがおすすめです。
経過利息などが別途かかる場合がある
繰り上げ返済のタイミングによっては、直前の返済日の翌日から繰上返済日までに発生した利息(経過利息)を支払う場合があります。【フラット35】でも公式サイトにその旨が案内されています。金額は大きくないことが多いものの、「返した金額がまるごと元本に充てられるとは限らない場面がある」ことは知っておくとよいでしょう。
手続きの時期と最低金額は商品ごとに違う
「思い立ったらすぐできる」とは限らないのが繰り上げ返済です。申し込みの期限や、1回に返せる最低金額が決められていることがあるためです。
わかりやすい例として、【フラット35】の取り扱いを見てみましょう(いずれも住宅金融支援機構の公式サイトで確認できる内容です)。
| 手続きの方法 | 一部繰上返済の最低金額 | 申し込みの時期など |
|---|---|---|
| 金融機関の窓口 | 100万円以上 | 繰り上げて返済する1か月前までに申し出。入金日は毎月の返済日 |
| インターネット(住・My Note) | 10万円以上 | 返済日の2か月前から1か月前の日の前営業日まで。手続き後、次の申し込みは最短1か月おき |
ボーナス返済を利用している方が期間短縮をする場合は、ボーナス返済月がずれないように6か月単位(毎月払い6回分+ボーナス払い1回分)で入金する必要があるなど、細かなルールもあります。全額繰上返済(完済)についても、1か月前までの申し出が必要とされています。
一方、銀行の住宅ローンでは、インターネットバンキングから少額・短い準備期間で手続きできるところもあります(前述のSBI新生銀行のように1円から可能な例もあります)。「いつまでに、いくらから、どの方法で」は商品ごとにまったく違うので、繰り上げ返済したい月が決まったら、早めに借入先の案内を確認しておきましょう。
金利が上がる局面での繰り上げ返済の考え方
ここ数年は金利が動きやすい局面が続いています。変動金利で借りている方にとっては、繰り上げ返済の意味が以前より少し変わってきている面があるので、あわせて整理しておきましょう。
返済額が変わらなくても、元本の減り方は変わる
変動金利かつ元利均等返済の住宅ローンには、一般に5年ルールと呼ばれる仕組みがあります。適用金利が上がっても、一定期間は毎月の返済額そのものが変わらないという扱いです。
たとえば三菱UFJ銀行は公式サイトで、変動金利かつ元利均等返済で借入中の場合、基準日から5年間は返済額に変更がなく、返済額に占める元金分と利息分の割合が変わると説明しています(同行の案内では、元金均等返済の場合は5年ルール・125%ルールの対象外とされています)。
つまり毎月の引き落とし額は同じでも、そのうち利息に回る分が増え、元本が減りにくくなることがあるわけです。返済額が変わらないと変化に気づきにくいのですが、この状態では元本を直接減らせる繰り上げ返済の意味が相対的に大きくなります。
反映の時期は銀行と契約タイプで違う
金利の見直しがいつ返済額に反映されるかも、金融機関と契約のタイプで異なります。三菱UFJ銀行は、2026年6月16日発表の短期プライムレート引き上げに伴い2026年9月1日より住宅ローンの変動金利の基準金利を見直し、以降は毎月1日を基準日として見直すことを公表しています(2026年9月の基準金利は2026年8月31日に発表予定)。2026年8月31日以前に借り入れている方の反映時期は、変動金利(毎月型)が2026年11月の約定返済分から、変動金利(年2回型)が2027年1月の約定返済分から、と案内されています(いずれも2026年8月時点の公式案内)。
ご自身の契約がどのタイプで、いつ見直されるのかは、返済予定表や「ご返済のお知らせ」、借入先の公式サイトで確認しましょう。
「今すぐ返さないと損」ではありません
なお、今後の政策金利について、2026年8月13日にブルームバーグが「日本銀行は9月か10月の金融政策決定会合での政策金利引き上げを視野に入れている」と関係者への取材として報じ、市場でも追加利上げを織り込む動きが伝えられています。ただしこれは報道による観測であって、日銀が決定した事実ではありません(次回の金融政策決定会合は2026年9月17日・18日に予定されています)。
金利の先行きは誰にも断定できません。だからこそ「上がりそうだから手元のお金を全部返す」ではなく、手元資金を確保したうえで、無理のない範囲で元本を減らしていくという順番が大切です。金利タイプの変更や借り換えという選択肢もあるので、迷ったときは繰り上げ返済だけで判断せず、借入先に相談してみてください。
繰り上げ返済のよくある質問
Q. 毎月の返済と繰り上げ返済は、何が違うのですか?
毎月の返済(約定返済)は元本と利息の両方に充てられますが、繰り上げ返済は全額が元本に充てられます。だから将来の利息が減ります。すでに支払い済みの利息は戻らないため、同じ金額なら早めに実行するほど効果は大きくなります。
Q. 数万円のような少額でも意味はありますか?
意味はあります。少額でも元本が減れば、その分にかかる将来の利息は消えるためです。ただし1回の最低金額が決まっている商品もあるため(前述の【フラット35】は窓口100万円以上・住・My Note 10万円以上)、少額でこまめに返したい方は、少額から手続きできる金融機関かどうかを先に確認しておくと無駄がありません。
Q. 貯蓄と繰り上げ返済、どちらを優先すべきですか?
一律の正解はありません。判断材料になるのは、急な出費にそなえる手元資金が足りているか/住宅ローン控除を受けている期間か/借入金利の水準などです。優先順位としては、まず生活を守るための手元資金、次に使う時期が決まっている教育費などの資金、そのうえで余ったお金で繰り上げ返済、と考えると安全側に寄せられます。
Q. 期間短縮型で短くした期間は、あとから元に戻せますか?
原則として、いったん短縮した返済期間を自由に戻すことはできません。ただし取り扱いは金融機関によって異なり、たとえばSBI新生銀行には、繰上返済で短縮した期間の分を後から使える「コントロール返済」という仕組みが用意されています。「戻せない前提」で金額を決めるのが基本ですが、こうした仕組みの有無も比較のポイントになります。
Q. 全額繰上返済で完済したら、団信(団体信用生命保険)はどうなりますか?
住宅ローンの返済が終われば、それに付随する団信の保障も終了します。【フラット35】では、全額繰上返済にあたり機構団信の特約料が返戻される場合があると案内されています。完済のときは、抵当権の抹消書類の受け取りや団信の扱いもあわせて確認しておきましょう(書類の到着には時間がかかることがあります)。
まとめ:あわてず、手元のお金を残しながら
繰り上げ返済は、住宅ローンの負担を軽くできる有力な手段です。ポイントを整理すると次のようになります。
・繰り上げ返済したお金は全額が元本に充てられ、早いほど効果が大きい
・一部繰上返済には返済期間短縮型と返済額軽減型があり、利息の軽減効果は一般に期間短縮型のほうが大きい
・そもそもどちらの型を選べるか、手数料や最低金額はいくらかは金融機関ごとに違う
・住宅ローン控除は「初回返済日から最終回返済日まで10年以上」が判定の基準。短縮しすぎると控除が使えなくなることがある
・変動金利は、返済額が変わらない期間でも元本が減りにくくなることがある。だからこそ手元資金を残しつつ元本を減らす意味は大きい
これから借入先を選ぶ、あるいは借り換えも視野に入れて考えるという方は、金利だけでなく「借りた後の返しやすさ」もあわせて比べてみてください。たとえばSBI新生銀行は、繰上返済手数料を0円とし、インターネットバンキングから1円以上1円単位で何度でも繰り上げ返済ができるほか、短縮した期間を後から使える「コントロール返済」も用意しています。保証料や一部繰上返済手数料が不要で、一般団信の保険料も上乗せなしという分かりやすさもあり、繰り上げ返済を活用しながら返していきたい方にとっては、検討に値する選択肢の一つといえるでしょう。
繰り上げ返済は「早く・多く返すほど正解」ではありません。ご家族のこれからの支出と、手元に残すお金を見ながら、無理のないペースで進めていくことがいちばん大切です。なお、手数料や制度の内容は改定されることがありますので、実行前には各金融機関・国税庁の公式サイトで最新の情報をご確認ください。

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