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親との同居・近居を見すえた家選び|変化に対応できる住宅購入の考え方

核家族化が進んだいま、「長男だから必ず実家を継ぐ」という考え方は少なくなりました。それでも、将来の親のことを思うと、マイホームを買ってよいものかどうか迷ってしまう——そんな声はよくお聞きします。

ここでは、ご両親との関係を視野に入れながら、自分たちの希望も無理なく取り入れる方法を整理していきます。ポイントは、計画をきっちり固めすぎないこと。先々の変化に対応できる「余白」を持たせておくという考え方です。

マイホームを購入し、将来両親を迎えて同居するという考え

最初に思いつくのが、はじめから同居を前提に家を買っておく方法です。マイホームの購入と親の住まいの問題を、いちどに解決できそうに見えます。

ただ、ご自身に子どもがいて、そのうえで両親を迎えるとなると、相応の部屋数が必要になります。建物が大きくなれば購入費用もかさみ、毎月の返済負担も重くなります。金利が上昇している局面では、この差はいっそう効いてきます。

もうひとつ見落としがちなのが、ご両親の側の気持ちです。実家から離れた場所で購入した場合、長年住み慣れた地域を離れることに不安を感じ、結局は同居が実現しないというケースも少なくありません。同居を前提に広い家を買ったのに、その部屋が使われないまま返済だけが続く——これはいちばん避けたい形です。

同居を織り込むなら、「本当に来てもらえるのか」を早い段階でご両親と話しておくことが、いちばん確実な備えになります。

購入する物件の対象に「幅」を持たせる

そこでおすすめしたいのが、“マイホームは一生の買物”と身構えすぎず、先々の変化に対応できる柔軟な姿勢で選ぶという考え方です。具体的には、購入する物件の対象に幅を持たせておきます。

たとえば、新築の一戸建てだけに絞らず、中古マンションも候補に入れてみる方法があります。中古であれば、築年数に折り合いをつけることで、利便性の良い場所を選びやすくなります。将来、実家を建て替えたり別に土地を購入したりして同居することになった場合も、売却して次に移りやすいという身軽さがあります。

ただし、ここは事実として押さえておきたい点があります。「中古マンションなら賃貸の家賃と同等以下の返済で買える」とは、今は言い切れません。アットホームの調査によれば、2026年7月の首都圏の中古マンション1戸あたり平均価格は5,928万円で、24か月連続の上昇となっています(※これは同社に登録された物件の売り出し価格の平均であり、実際に成約した価格ではありません)。

つまり、中古を選ぶ理由は「安いから」ではなく、「立地の選択肢が広がるから」「次に動きやすいから」に変わってきているということです。価格はエリアと築年数で大きく違いますので、必ずご自身が検討する地域の相場を確かめてください。

中古を選ぶなら知っておきたい、9月からの制度変更

中古住宅を検討している方にとって、うれしい制度変更があります。住宅金融支援機構は、令和8年(2026年)9月1日のお借入れ分から、【フラット35】で中古住宅を購入する際に、簡易なリフォームの工事費用もまとめて融資できるようにしました。

これまでは、物件の代金は住宅ローンで借りられても、リフォーム代は自己資金や別のローンで用意する必要がありました。入居前に手を入れたいけれど、その分の現金が足りない——という悩みに直接効く変更です。

使う際は、次の点に気をつけてください。

  • 対象は【フラット35】の適合証明の内容に影響を与えない工事に限られます。
  • 柱位置の変更・間取り変更・床面積の増減・断熱材の交換などは対象外とされています。
  • 金利を引き下げる【フラット35】リノベ(リフォーム一体タイプ)とは別の制度で、こちらの金利引下げは適用されません。
  • 借入対象に含めた工事を実施しなかった場合は、その費用相当額を繰上返済する必要があります。

詳しい条件は機構の公式ページと、実際に申し込む取扱金融機関でご確認ください。

両親と夫婦の関係が気掛かりなら、“近居”という選択肢もある

ご両親と配偶者との関係は、別居しているうちは問題がなくても、いざ同居してから思わぬ摩擦が生まれることがあります。どちらが悪いという話ではなく、生活のリズムや価値観の違いが日常のなかで表に出てくるためです。

そこで検討したいのが“近居”という形です。実家の近くや、実家と同じ電車沿線にマンションを購入し、行き来はしやすいけれど生活は分かれているという距離感を保ちます。適当な物件を確保できるかという課題はありますが、同居の良さ(助け合える)と別居の良さ(気を遣いすぎない)を両立しやすい選択です。

比べる観点 同居する場合 近居する場合
住まいの費用 1軒で済むが、部屋数が必要で価格は上がりやすい 2軒分かかるが、それぞれは小さくてよい
助け合いのしやすさ 日常的に支え合える 行き来の手間はあるが、必要なときに動ける
生活のペース 合わせる場面が増える それぞれのペースを保ちやすい
親の住み慣れた環境 引っ越しをともなうことが多い 今の地域に住み続けてもらいやすい
将来の変化への対応 間取りの変更や増改築が必要になることも どちらかを売却・賃貸するなど選択肢が残る

なお、子育て支援や空き家対策、地域活性化に力を入れている自治体では、住宅取得への補助金と組み合わせて【フラット35】地域連携型という金利引下げが使える場合があります。子育て支援・空き家対策のメニューでは当初5年間 年0.5%の引下げ、地域活性化のメニューでは当初5年間 年0.25%の引下げです(予算に達すると受付終了、借換えには利用できません)。同居・近居の支援を独自に行っている自治体もありますので、候補の地域が決まったら、自治体の窓口と機構の公式サイトで対象になるかを確認してみてください。

「幅を持たせる」ときに、気をつけたい3つのこと

柔軟に構えるのは良い考え方ですが、その前提として知っておくべきことが3つあります。

1つ目は、住宅ローンは「自分が住む家」のためのものだということ。「将来は貸しに出せばいい」と考える方がいらっしゃいますが、返済中の住宅を賃貸に出すには、原則として金融機関への相談が必要です。【フラット35】では投資用物件への利用が認められておらず、機構は定期的に居住の確認を行っており、第三者に賃貸していることが判明した場合は借入額の全額を一括返済することになると明記されています。「完済してから貸す」のと「返済中に貸す」のは、まったく別の話だとご理解ください。

2つ目は、売却は必ずしも希望どおりの価格にはならないということ。先ほど見たとおり足元の中古価格は上昇していますが、それが将来も続く保証はありません。「いざとなれば売ればいい」を計画の前提に置かず、売れなくても困らない借入額にしておくのが安全です。

3つ目は、親からの資金援助には税金のルールがあるということ。直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受けた場合、一定の要件を満たせば省エネ等住宅で1,000万円まで、それ以外の住宅で500万円までが非課税になる特例があります。ただし現行の対象は令和8年(2026年)12月31日までの贈与で、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告をする必要があります(非課税でも申告は必要です)。適用の要件は細かいので、実行前に国税庁の案内を確認するか、税務署・税理士にご相談ください。

あわせて、将来まとまった資金ができたときに繰上返済しやすいかどうかも見ておくと安心です。たとえばSBI新生銀行は保証料が0円で、一部繰上返済の手数料もかかりません。ご両親からの援助や退職金で身軽になる道を残しておきたい方には、こうした費用面の条件も選ぶ理由になります。

同居・近居を考える方から、よくいただく質問

Q. 30歳で家を買うのは早すぎるでしょうか。
A. 早い遅いより、この先どれくらい変化がありそうかを織り込めているかが大切です。30歳で購入すれば、その後の人生は長く続きます。予想しなかった変化が起きるのはむしろ当たり前ですから、計画をガチガチに固めず、変化に対応できる住まいを選ぶという発想が生きます。

Q. 二世帯住宅にするのと、近くに別々に住むのと、どちらがよいですか。
A. 費用だけを見れば1軒にまとめるほうが有利なことが多い一方、生活のペースを保てるのは近居です。「何を優先したいか」をご家族で先に決めてから、費用の比較に進むと迷いにくくなります。

Q. 将来、親の家を相続する予定があります。それでも今買って大丈夫でしょうか。
A. その可能性があるなら、なおさら売ったり貸したりしやすい物件(駅からの距離、管理状態、需要のあるエリアかどうか)を意識して選ぶ価値があります。ただし相続の時期も内容も確定していないことが多いので、相続をあてにした返済計画にはしないことが大切です。

Q. 中古マンションは、築何年くらいまでなら選べますか。
A. 一律の答えはありませんが、【フラット35】を使う場合は機構の定める技術基準に適合していることが条件になり、共同住宅では住宅の床面積30㎡以上といった要件もあります。築年数そのものより、管理状況・修繕の履歴・耐震性を見るほうが実際的です。

Q. 両親から資金を出してもらってローンを完済し、その家を貸すことはできますか。
A. 完済していれば、賃貸に出すこと自体に住宅ローン上の制約はありません。ただし資金援助には前述の贈与税のルールがあり、賃貸に出せば家賃は不動産所得として確定申告の対象になります。実行の前に税務署や税理士へご確認ください。

変化を織り込んでおくことが、いちばんの備えになります

もし30歳でマイホームを購入するとすれば、そこから先の人生はまだ50年ほど続きます。その間に予測していなかった変化が起きるのは、むしろ自然なことです。

だからこそ、計画をガチガチに組むのではなく、変化にも柔軟に対応できるマイホームを選ぶ——これが賢いやり方だと言えます。同居か近居か、新築か中古か。どれが正解かを最初から決めきる必要はありません。「もし変わったら、こう動ける」という道を1本残しておくこと。それが、いちばん現実的な備えになります。

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