- 公開日: 2026.10.02
- 売買契約のポイント
手付金を払う前の確認ポイント|敷地・建物・保全措置の注意点その①

手付金を払う前に確かめておきたいのは、敷地、建物の状態、売買契約書の中身、資金計画の4つです。初めての方はとくに、住宅ローン特約の有無と期限、そして売主が不動産会社なら手付金の保全措置が必要な金額かどうかを押さえておくと、万一のときに手付金を失うリスクをぐっと小さくできます。
契約の時には、売主に対して数十万〜数百万円の手付金を支払うため、「確認不足はないかな」と不安になるのは自然なことです。ここでは新築・中古の一戸建て購入を例に、手付金を支払う前のチェックポイントを順番に見ていきます(このページでは前半の2項目を中心に扱います)。
契約前に確認すべきことは、大別すると4つある!
買主が売主に対して支払う手付金の額は、売買代金の5〜10%程度が一般的です。なお売主が不動産会社(宅地建物取引業者)の場合、宅地建物取引業法により手付金は売買代金の20%(10分の2)を超えて受け取ることができないと定められています(同法第39条第1項)。
契約を結んで手付金を支払った後に、買主の都合(住宅ローン特約による解除を除く)で契約を解除すると、手付金は戻ってきません。ですから物件の状況や契約内容を、いま一度十分に確認したうえで契約しなければなりません。確認事項は、大別すると以下の4点になります。
- 敷地条件の確認
- 建物の状況・状態の確認
- 売買契約書の内容理解
- 資金計画に不備不足がないかの確認
手付金の「性格」=解除のルールとセットになったお金
手付金は「代金の一部前払い」というより、契約を解除するときの取り決めとセットになったお金だと考えるとイメージしやすくなります。
不動産取引で交付される手付は、一般に「解約手付」として扱われます。売主が宅地建物取引業者の場合は、相手方が契約の履行に着手するまでは買主は手付を放棄して、売主は手付の倍額を提供して、契約を解除できるとされています(同法第39条第2項。買主に不利な特約は無効)。
そしてもうひとつ、初めての方にぜひ知っておいてほしいのが住宅ローン特約(ローン特約)です。これは「期日までに住宅ローンの承認が得られなかったときは、契約を白紙に戻し、手付金は返還される」という取り決めのこと。多くの売買契約書に入っていますが、特約が付いているか、いつまでにどの金融機関で承認を得る前提になっているかは必ず確認してください。
手付金の基本(相場や種類)は住宅購入の手付金の相場・種類・返金のしくみでも詳しくまとめています。
| 契約をやめる理由 | 手付金はどうなる? | 気をつけたい点 |
|---|---|---|
| 住宅ローンの審査が通らなかった(住宅ローン特約による解除) | 原則として返還される(白紙解除) | 特約の有無と期限、対象の金融機関・借入額の条件を契約前に確認 |
| 気が変わった・ほかに良い物件が見つかった(手付解除) | 放棄することになる(戻らない) | 相手方が契約の履行に着手すると、手付解除自体ができなくなる |
| 相手が約束を守らない(債務不履行による解除) | 契約書の違約金の定めによる | 違約金の割合が書かれているので契約前に読んでおく |
「解除できるかどうか」ではなく、「解除しなくて済むように、契約前に確かめ切る」のが本来の姿勢です。
売主が不動産会社なら「手付金等の保全措置」も確認
手付金を払ってから引渡しまでの間に、万一売主の会社が倒産したら……。そんな不安に備える仕組みが、宅地建物取引業法の手付金等の保全措置です(同法第41条・第41条の2)。売主が不動産会社で、受け取る手付金・中間金などの合計が一定額を超えるときは、銀行等による保証などの措置を講じてからでないと、売主は手付金等を受け取れません。
| 物件の状態 | 保全措置が必要になる金額 | 保全の方法 |
|---|---|---|
| 工事完了前(未完成の新築など) | 手付金等が売買代金の5%を超えるか、1,000万円を超えるとき | 銀行等による保証、または保険事業者による保証保険 |
| 工事完了後(完成済みの新築・中古など) | 手付金等が売買代金の10%を超えるか、1,000万円を超えるとき | 上記2つに加え、指定保管機関による保管も可 |
たとえば代金4,000万円の未完成の建売住宅なら、5%は200万円です。手付金を300万円払うなら保全措置の対象になります。保全措置が必要なのに講じられていない場合、買主は手付金等の支払いを拒むことができます。重要事項説明書の「手付金等の保全措置の概要」欄で、保証機関の名前と方式を確かめておきましょう。なお売主が個人の場合(個人間の中古売買など)は、この保全措置の義務はありません。
未完成の物件を買う場合の注意点は、未完成の新築建売住宅を買うときの注意点(引渡し・手付金・保証)もあわせてご覧ください。
建物の敷地だけでなく周辺状況も含めて確認しましょう!
ここでいう敷地は、物件そのものの敷地だけでなく、周辺状況も含めた「広義の敷地」として捉えます。
まず道路ですが、幅員が4m以上あるか(建築基準法上の道路か)、所有権を持っていない私道のような道路ではないか、などを確認します。建築基準法では、建物の敷地は原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していなければならないとされています(接道義務)。この条件を満たさない土地は、将来の建て替えができない可能性があるため、資産価値にも直結する重要なポイントです。
私道が絡む場合は、通行や水道・ガス管の工事のときに所有者の承諾が要ることがあります。「通行・掘削の承諾書」があるかを必ず確認しましょう。
次に敷地内では、陥没や地崩れなどの現象が起きていないか、境界が明確であるか、樹木や物置など隣地からの越境物がないかなどを確認します。境界標が見当たらない場合は、引渡しまでに境界を確定してもらえるかを契約前に相談しておくと安心です。
他にも、希望の学区内であるか、通学路に不安要素がないかなど、見落としがないかしっかり確認しておきましょう。あわせて、自治体が公表しているハザードマップで浸水・土砂災害の想定を見ておくことをおすすめします。災害リスクは重要事項説明でも触れられる項目ですが、自分の目で地図を確かめておくと納得感が違います。
新築だから大丈夫だろう・・・案外そうでもないかも知れません
新築・中古どちらであっても確認は必要です。「新築は新しいから問題ないだろう」と考えるかも知れませんが、どんなに法規制を厳しくしても新築住宅の欠陥問題はなかなかなくなりません。
制度としては、住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)により、新築住宅の売主・請負人は「構造耐力上主要な部分」と「雨水の浸入を防止する部分」について、引渡しから10年間の瑕疵担保責任を負うことになっています。さらに住宅瑕疵担保履行法によって、売主等には保険への加入か保証金の供託という資力確保措置が義務づけられており、万一売主が倒産しても補修費用が確保される仕組みが整えられています。
そのうえで押さえておきたいのが、2020年4月に施行された改正民法により、従来の「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」へと改められたことです。買主は、契約の内容に適合しないものが引き渡された場合、修補などの履行の追完・代金の減額・損害賠償・契約の解除を求められます。
ここでいう「契約の内容」の基準になるのは売買契約書や重要事項説明書ですから、書面に書かれていることが以前にも増して重要になっています。気になる点は口約束で済ませず、書面に残してもらいましょう。契約する前に再度内覧して、気になるところやチェックしていなかった箇所などをしっかり確認するようにしましょう。
中古だから傷んでいるのは当たり前・・・そのような考えではあなたの財布が傷みますよ
一方、中古の場合は「中古なのだから多少は傷んでいても仕方ない」と考えがちですが、これは危険な考えです。
ひと口に中古住宅と言っても、建物の状態はそれぞれ異なります。粗悪な住宅を購入してしまうと購入後すぐに補修することになり、想定外の費用が掛かってしまう場合があります。同じ築20年でも、状態の良いものと悪いものでは相当な違いがあるものなのです。
そこで役に立つのが建物状況調査(インスペクション)です。国土交通省の定める講習を修了した建築士が、構造耐力上主要な部分と雨水の浸入を防止する部分を目視や計測で調べる調査です。
2018年(平成30年)4月の宅地建物取引業法の改正により、既存住宅の取引では次の対応が不動産会社に求められています。
- 媒介契約時に、調査業者のあっせんができるかを示す
- 調査が実施済みなら、重要事項説明で結果の概要を説明する
- 契約時に、建物の状況について当事者双方が確認した事項を書面に記載する
つまり「調査するかどうか」は買主・売主が選べますが、「制度の案内」は受けられるということ。あっせんを希望するか聞かれたら、遠慮せず相談してみてください。
この制度は2024年(令和6年)4月1日施行の見直しで、さらに使いやすくなりました。媒介契約書にはあっせんを「無」とする場合の理由を書く欄が設けられ、調査は瑕疵の有無を判定するものではないといった調査の限界も明記されています。
また、鉄筋コンクリート造などの共同住宅(マンション)については、重要事項説明の対象となる調査結果が調査実施から1年以内から2年以内へ見直されました(戸建て住宅は従来どおり1年以内)。詳しくは国土交通省「既存住宅流通について(建物状況調査の活用に向けて)」で確認できます。
契約日までの確認ステップ(初めての方向け)
「何をいつまでに」が分かると、落ち着いて進められます。目安として次の順番で確認しましょう。
- 重要事項説明書と売買契約書の案を、契約日より前にもらう……当日に初めて読むのは避けたいところです。
- 敷地まわりを自分の足で確認する……道路・境界・越境物・周辺環境、そしてハザードマップ。
- 建物をもう一度見る(できれば建物状況調査も検討)……新築なら仕上がり、中古なら水回り・雨漏りの跡・床の傾きなど。
- 手付金の額と保全措置を確かめる……売主が不動産会社なら、金額が保全措置の対象になるか、重要事項説明書に保証機関が書かれているかを見ます。
- 資金計画を数字で確かめる……手付金・諸費用として当日いくら現金が必要か、住宅ローン特約の期限はいつかを書き出します。
- 疑問をリストにして質問する……回答は口頭ではなく、書面やメールで残してもらうのが安心です。
よくある質問
Q. 手付金はいくら用意すればよいですか?
A. 売買代金の5〜10%程度が一般的で、売主が不動産会社なら20%が上限です。金額が大きいほど手付解除のハードルが上がるため、「安ければ安いほど安心」というものでもなく、売主との交渉のなかで決まると考えてください。
Q. 住宅ローンの審査に落ちたら、手付金は戻ってきますか?
A. 住宅ローン特約が付いていて、その条件(期限・金融機関・借入額など)を満たしていれば、原則として返還されます。特約の期限を過ぎてからの解除だと返ってこない可能性があるため、審査の進み具合は不動産会社と共有しておきましょう。
Q. 売主の不動産会社が倒産したら、払った手付金はどうなりますか?
A. 保全措置が講じられていれば、保証した銀行や保険会社などから返還を受けられます。保全措置が不要な金額(未完成物件で代金の5%以下かつ1,000万円以下など)の場合は対象外なので、売主の信用も含めて契約前に確認しておくと安心です。
Q. 契約書の文言に納得できないときは修正してもらえますか?
A. 条文の形式は決まっているため大きな修正は難しいものの、特約として「引渡しまでに境界を確定する」「◯◯を撤去する」といった約束を書き加えてもらうことは実務でよく行われます。まずは希望を伝えてみてください。
Q. 建物状況調査は誰が費用を負担するのですか?
A. 法律で決まっているわけではなく、依頼した側が負担するのが一般的です。買主が依頼する場合は売主の承諾も必要になるため、検討するなら契約前の早い段階で相談しましょう。
まとめ
欠陥のある建物を購入するリスク(補修費用の負担や交渉の手間など)は小さくありません。多少の費用は発生しますが、できれば第三者の専門家による住宅診断(ホームインスペクション)を受けておくと、後々の問題回避にもつながります。
そして忘れがちなのが資金計画です。手付金は契約時に現金で用意する必要があり、諸費用とあわせると想像以上のお金が動きます。住宅ローンを選ぶときは金利だけでなく、事務手数料や保証料などの諸費用がいくらかかるか、諸費用を借入に含められるかもあわせて比べておきましょう。節約できる費用・できない費用の見分け方は住宅購入の諸費用は節約できる?交渉できる費用・できない費用で整理しています。
後半の2項目(売買契約書と資金計画の確認)については、次項その2でお話ししていきます。法律の条文そのものはe-Gov法令検索の宅地建物取引業法で確認できます。

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