- 公開日: 2026.09.19
- 更新日: 2026.09.26
- 住宅ローンの注意点
親に住宅購入資金を出してもらう際の注意点|持分と贈与税

親や祖父母に住宅購入資金を出してもらうと、出してもらった割合に応じて、その人に住宅の「持分(もちぶん)」が発生するのが原則です。援助のつもりでも、登記の上では共有者になってしまいます。
持分を持たせたくない場合は、お金を「贈与」として受け取り、住宅取得等資金の贈与税の非課税枠を使うのが基本の流れになります。ただしこの非課税の特例には令和8年(2026年)12月31日までの贈与という期限があり、申告も必要です。
順番に、つまずきやすいポイントを見ていきましょう。
不動産購入にお金を出すと持分(所有権)が発生する
住宅を含め、建物や土地といった不動産は高額な買い物です。複数の人がお金を出し合って購入するケースも多くありますが、その際、不動産の購入にお金を出した人には、原則として「所有権」が発生します。
日常的に使う物には「一つの物を一人が所有する」という感覚がありますが、不動産は違います。1つの建物や土地に対して、複数の人が所有する権利を持つことができます。
複数人で保有する場合は、所有者一人ひとりの「持分」が決められ、その持分を法務局に登記します。持分は割合(%)で表され、出したお金の割合に応じて決めるのが原則です。
イメージとしては、不動産投資信託(REIT)に近いと言えます。REITは出資の代わりに有価証券を受け取り、不動産を間接的に保有する仕組みで、出資した金額に応じて所有割合が決まります。
持分をどう登記するかは、後から簡単に直せるものではありません。登記そのものの流れは住宅購入で必要な4つの登記と登記費用の解説もあわせてご確認ください。
持分が発生するのは物件価格だけではない
出してもらったお金の使い道が物件本体の代金でなくても、不動産を取得するために必要な費用に充てた場合は所有権が発生します。
対象になりやすいのは、不動産会社に支払う仲介手数料、不動産取得税・登録免許税・固定資産税・都市計画税といった各種税金、中古住宅を買うときのリフォーム費用、ガスや電気などの備え付け設備費用、ローン契約時の事務手数料などです。
一方で、取得に任意・付随的な費用に充てた場合は、原則として持分は発生しません。保険料や保証料、ローン返済時の利息、引っ越し費用、家電の購入代金などがこれにあたります。
どこまでが「取得のための費用」かは金額が大きいほど判断が難しくなります。仲介手数料そのものを抑えたい場合は、仲介手数料の値引き交渉のポイントも参考になります。
持分を複数人にする場合は手続きへの同席が必要
お金を出してもらったうえで持分を複数人にしたい場合は、住宅の購入手続きやローンの契約手続きに同席してもらう必要があります。
これらの手続きでは、所有権を持つことを証明するために、各種書類への署名や捺印が必要になります。覚書の作成を求められることもあります。
遠方に住んでいる、高齢で移動が難しいといった事情がある場合は、日程の調整だけで契約が遅れることもあります。「誰がいくら出して、持分をどう分けるか」を、物件の契約前に話し合っておくのが確実です。
親側に持分を持たせたくないなら贈与税の非課税枠を使う
「お金は出してもらいたいが、資金援助が目的なので親に持分は持たせたくない」という場合は、お金を贈与として受け取り、贈与税の非課税枠を使うことで、持分を分ける必要がなくなります。
ここで誤解しやすいのが「所有権を持たない」という言葉の向きです。持分を持たないのはお金を出した親や祖父母の側であって、贈与を受けた本人(子)は、その住宅を所有する(共有持分を持つ場合を含む)ことが特例の条件になっています。買った家が自分名義にならないなら、この特例は使えません。
省エネ等住宅なら最大1,000万円まで非課税
父母・祖父母などの直系尊属から住宅取得等資金の贈与を受ける場合、令和6年(2024年)1月1日から令和8年(2026年)12月31日までの贈与について、一定の要件を満たすと次の金額まで贈与税が非課税になります。
| 住宅の種類 | 非課税限度額 | 省エネ等基準の目安 |
|---|---|---|
| 省エネ等住宅 | 最大1,000万円 | 新築なら断熱等性能等級5以上かつ一次エネルギー消費量等級6以上。耐震等級2以上・免震建築物、高齢者等配慮対策等級3以上のいずれかでも可 |
| それ以外の住宅 | 最大500万円 | 上記の基準を満たさない住宅 |
中古住宅(建築後使用されたことのある家屋)の場合は、断熱等性能等級4以上または一次エネルギー消費量等級4以上で省エネ等住宅と扱われます。いずれも住宅性能証明書など一定の書類を申告書に添付して証明する必要があります。

おもな要件は次のとおりです。
- 受贈者が贈与を受けた年の1月1日時点で18歳以上であること
- 受贈者のその年の合計所得金額が2,000万円以下(取得する家屋の床面積が40平方メートル以上50平方メートル未満の場合は1,000万円以下)であること
- 取得する住宅の登記簿上の床面積が40平方メートル以上240平方メートル以下で、その2分の1以上が受贈者の居住用であること
- 贈与を受けた年の翌年3月15日までに、資金の全額を充てて住宅を取得(新築・増改築等)すること
- 翌年3月15日までにその家屋に居住する、または遅滞なく居住することが確実と見込まれること
- 配偶者や親族など、特別の関係がある人から住宅を取得した場合は対象外
見落としやすいのが最後の2つです。翌年12月31日までに住んでいないと、原則として特例は受けられず修正申告が必要になります。また、親が所有する家を子が買い取るようなケースは、そもそも対象になりません。
非課税の範囲に収まっていても、贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに贈与税の申告が必要です。申告して初めて特例が適用されます。必要書類は住宅資金の贈与税非課税の申告書類まとめで住宅の種類別に整理しています。
そのほかの贈与は年110万円までが非課税(暦年課税の基礎控除)
この住宅取得資金の特例とは別に、贈与税には1年間に110万円までの基礎控除(暦年課税)があります。110万円以内であれば原則として申告も不要です。
住宅取得資金の非課税特例と、この年110万円の基礎控除はあわせて利用することもできます。制度の詳しい中身は住宅取得資金の贈与税がいくらまで非課税になるかの解説でも取り上げています。
非課税枠を超えるときの2つの選択肢
援助額が非課税枠を超えそうなときは、超えた部分をどう扱うかで税負担が変わります。主な選択肢は2つです。
1つめが相続時精算課税の選択です。住宅取得等資金の贈与については、令和8年(2026年)12月31日までの贈与であれば、贈与者がその年の1月1日時点で60歳未満でも相続時精算課税を選べる特例があります。受贈者の合計所得金額の要件がなく、床面積の上限もない(40平方メートル以上)点が、先ほどの非課税特例との違いです。
ただし相続時精算課税は、名前のとおり相続のときに精算する仕組みで、いったん選ぶと同じ贈与者からの贈与について暦年課税へは戻せません。相続全体を見て判断すべき選択なので、税理士への相談をおすすめします。
2つめが親族からの借入れにする方法です。金銭消費貸借契約書を作り、返済の実態(金利の設定、銀行振込による返済記録など)をきちんと残すことが前提になります。返済実態のない「あるとき払い」は贈与とみなされることがある点に注意してください。
なお、住宅ローンを組む場合は、親からの借入れも金融機関の審査で他の借入れとして扱われることがあります。借入額が希望どおりにならない可能性もあるため、申込前に金融機関へ伝えておきましょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 非課税の範囲内なら贈与税の申告はしなくてよいですか?
A. 申告が必要です。住宅取得等資金の非課税特例は、税額がゼロでも申告して初めて適用されます。翌年2月1日〜3月15日に、戸籍謄本や契約書の写しなどを添えて所轄の税務署へ提出します。
Q. 親と祖父母の両方からもらえば非課税枠は2倍になりますか?
A. なりません。非課税限度額は贈与を受ける人ごと(省エネ等住宅で1,000万円、それ以外で500万円)です。複数の人から受け取っても、合計でこの金額までが非課税になります。
Q. 夫の親からもらったお金を妻名義の持分に使えますか?
A. 非課税特例が使えるのは直系尊属からの贈与に限られます。配偶者の父母は、養子縁組をしていない限り直系尊属にあたりません。誰が誰から受け取ったお金かによって扱いが変わるため、資金の出どころと持分を対応させて整理しましょう。
Q. 仲介手数料だけを親に払ってもらった場合はどうなりますか?
A. 仲介手数料は住宅を取得するために必要な費用にあたるため、原則として出した人に持分が発生します。持分を分けたくない場合は、贈与として受け取ったうえで非課税枠や基礎控除の範囲に収まるかを確認してください。
Q. この非課税の特例はいつまで使えますか?
A. 令和8年(2026年)12月31日までの贈与が対象です(令和8年4月1日現在の法令)。その後の取扱いは今後の税制改正によるため、贈与の時期を検討している場合は国税庁の公式情報で最新の状況を確認してください。
まとめ
親や祖父母からの資金援助は、住宅購入の大きな助けになります。ただし「持分を発生させるか」「贈与として受け取るか」で、登記も税金も変わります。
最初にやるべきことはシンプルで、誰がいくら出すのかを書き出し、それを持分・贈与・借入れのどれで処理するかを契約前に決めておくことです。金額が大きい場合や、非課税枠を超えそうな場合は、早めに税務署や税理士に相談しましょう。
※制度の内容や期限は税制改正で変わることがあります。最新の要件は国税庁タックスアンサー No.4508およびNo.4503(相続時精算課税選択の特例)でご確認ください。

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