- 公開日: 2026.09.25
- 更新日: 2026.10.20
- 住宅購入の基礎知識
私道の所有権とは?通行・掘削トラブルを防ぐ確認ポイント

道路にも所有権があります。国や自治体が持つ公道のほかに、個人や近所の複数の人が持っている私道があり、私道に面した土地を買うときは、通行と掘削(配管工事)の承諾書、上下水管の使用に関する念書がそろっているかを契約前に確かめておくことが、トラブルを防ぐいちばんの近道です。
2023年4月の民法改正で、水道やガスの配管を他人の土地に通す権利がはっきり定められましたが、書面で取り決めておく大切さは変わっていません。はじめて家を買う方に向けて、道路の権利関係を順番に整理していきます。
公道と私道の違いと「接道義務」(用語ミニ解説)
道路は大きく、国道・都道府県道・市町村道などの公道と、個人や複数の人が所有する私道の2つに分けられます。見た目は同じアスファルトの道でも、持ち主が違えば使うときのルールも変わってきます。
家を建てるときの大前提になるのが接道義務です。建築基準法では、建物の敷地は原則として幅員4m以上の道路に2m以上接していなければ建物を建てられないと定められています(建築基準法第43条。地域によっては幅員6m以上が基準になる区域もあります)。火事のときに消防車が入れる、避難ができるといった安全のためのルールです。
- 2項道路(みなし道路)…幅が4m未満でも、古くから家が建ち並んでいた道路は特例で道路と認められます。ただし建て替え時は道路の中心線から2m下がる「セットバック」が必要になり、その分だけ家を建てられる面積が小さくなります。
- 位置指定道路…宅地を分けるときに、行政から「道路」として指定を受けた私道です。見た目はふつうの道でも、権利上は私道であることがあります。
私道でも「4m幅員・2m接道」という考え方は同じです。ただ、権利関係によっては、通行や配管工事のたびに所有者との調整が必要になることがあります。
接道義務を満たしていない土地は再建築ができなかったり、担保としての評価が下がって住宅ローンを借りにくくなることがあります。土地を決める前に、役所の建築指導課や不動産会社などで道路の種類を確認しておきましょう。地盤など、土地そのものの確認ポイントは新築の地盤は大丈夫?地盤調査と改良工事の確認ポイントで紹介しています。
私道の持分があっても、承諾書をもらっておくと安心
私道の持分は、たとえ100分の1でも持っていれば、その道路を利用・通行することができます。持分があるかどうかは、私道部分の登記事項証明書(登記簿)で確かめられます。
私道が複数の人の共有になっている場合は、売り主を通じて「新しい所有者になる」ことを共有者へ伝えてもらうほうが安心です。「所有者が変わったなんて聞いていない」と、あとから無用なトラブルになるのを防げます。
加えて、「道路通行および掘削承諾書」に署名・実印の押印をもらい、印鑑証明書を添えてもらいましょう。これは、道路の通行と、配管工事などで生じる道路の掘削について、共有者から承諾を得ていることを示す書面です。
注意したいのは、承諾書は基本的に当事者どうしの約束だという点です。将来どちらかの所有者が変わったときにも効力が続くよう、「承継人にも引き継ぐ」旨の一文が入っているかを確認しておくと安心です。
私道の持分が無いなら「上下水管の念書」も交わす
どうしても私道の持分を取得できない場合は、前述の「道路通行および掘削承諾書」に加え、上下水管の使用許可および維持管理に関する念書を交わしておきましょう。
上水(給水)の配管は、道路の下の本管は水道事業者が管理していることが多い一方、下水の配管は私道所有者の所有・管理になっていることが少なくありません。そのため、私道所有者から下水管を使う許可を得て、維持管理の負担について取り決めた書面を交わしておく必要があるのです。
私道の持分を持っている場合でも、万全を期して、上下水管の使用許可および維持管理に関する念書を交わすことがあります。この念書にも、承継人に引き継ぐ旨の一文が入っているか見ておきましょう。
2023年の民法改正で配管を通す権利が明文化された
2023年4月1日に施行された改正民法では、他人の土地に設備を設置しないと電気・ガス・水道などを引き込めない土地の所有者は、必要な範囲で他の土地に設備を設置したり、他人の設備を使ったりできることが明文化されました(民法第213条の2)。下水道や電話・インターネットの配線も含まれると考えられています。
この権利を使うときは、あらかじめ工事の目的・場所・方法を土地の所有者などに通知する必要があり、相手の土地への損害が最も少ない方法を選び、損害に応じた償金を払うことも定められています。法務省は、通知の時期の目安を事案によるとしつつ「2週間〜1か月程度」と示しています。
「承諾をもらえないと永遠に工事ができない」という状況は、法律上は解消に向かいました。ただし、通知の手順や償金の話し合いで近所との関係がこじれては、暮らしやすさが損なわれます。購入前に承諾書や念書で取り決めておくほうが、はるかにスムーズです。
共有私道の補修や掘削については、法務省が具体的な事例ごとの考え方を法務省「所有者不明私道への対応ガイドライン(第2版)」の概要にまとめています。
公道と私道、購入前にここを確認(早見表)
| 比較の観点 | ポイント | 備考 |
|---|---|---|
| 道路の種類 | 公道か私道か、私道なら誰の所有か | 役所・不動産会社・登記簿で確認 |
| 接道の状態 | 幅員4m以上の道路に2m以上接しているか | 満たさないと建築・再建築が難しい |
| 通行・掘削の権利 | 通行および掘削承諾書があるか | 共有者全員の承諾・承継条項があると安心 |
| 上下水管 | 使用許可・維持管理の念書があるか | 下水は私道所有者管理のことも |
| セットバック | 2項道路で後退が必要か | 建てられる面積が変わる |
こうした道路の権利関係をきちんと調べて説明してくれるかどうかは、不動産会社選びの物差しにもなります。見極め方は失敗しない不動産業者の選び方|住宅購入で損をしないための確認ポイントもあわせてどうぞ。
工事を伴う場合は、早めの挨拶で良い印象を
私道が絡む物件を購入したら、私道の持分を持っていてもいなくても、前もって私道所有者と町内会長に挨拶するようにしましょう。
既存の住宅にそのまま入居するなら引っ越しのときでもよいと思いますが、解体や新築などの工事を伴う場合は、多少なりとも近隣に迷惑がかかります。工事のスケジュールが決まったら、できるだけ早めに伺うほうが良い印象につながります。
よくある質問(FAQ)
Q. 私道に接した土地だと、住宅ローンは借りられないのですか?
A. 借りられないとは限りません。ただ、通行・掘削の承諾が取れていなかったり接道義務を満たしていなかったりすると、担保評価が下がって審査が厳しくなることがあります。承諾書などの書面がそろっているかが大切です。
Q. 民法が改正されたなら、掘削承諾書はもういりませんか?
A. あったほうが安心です。改正後も、工事のたびに事前の通知や償金の話し合いが必要になり、近所との調整の手間は残ります。購入時に承諾書を交わしておけば、将来の配管工事や建て替えがスムーズに進みます。
Q. セットバックすると土地はどうなりますか?
A. 道路の中心線から2mまで後退した部分は、建ぺい率・容積率の計算で敷地面積に含められず、門や塀も建てられません。見た目の広さより小さな家になる可能性があるので、契約前に後退面積を確認しましょう。
まとめ|所有は手段、支障なく使えることが目的
私道の持分が無くても、承諾書や念書を交わしておけば、通行や配管工事の安心を得られることがお分かりいただけたと思います。持分を持つに越したことはありませんが、大事なのは「所有は手段であり、支障なき道路利用が目的」ということです。
道路の権利関係は、購入後の暮らしやすさだけでなく、住宅ローンの借りやすさにも関わります。気になる土地が見つかったら、まずは道路の種類と権利関係を確認し、わからない点は不動産会社や役所に遠慮なく質問しながら、安心できる一歩を踏み出してください。

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