- 公開日: 2026.07.28
- 住宅購入の基礎知識
ファミリー向け賃貸併用住宅の立地選び|資金計画と管理の基本

賃貸併用住宅を建てるときは、入居者のターゲット層を明確にして、そのニーズに見合った建物にする必要があります。また、建物そのものの工夫に加え、そのニーズが多い場所(立地)に建てることが何より重要です。
今回は、親と子どもで暮らすファミリー層をターゲットにした賃貸併用住宅について、最適な立地の見極め方を整理します。「賃貸経営なんて自分にできるだろうか」という方でも順を追って判断できるよう、資金計画や管理のポイントもあわせてやさしく解説します。
ファミリー向けの賃貸併用住宅を建てるポイント
ファミリー層をターゲットに賃貸併用住宅を建てる場合、居住する人数が多くなりますので、2LDKから3LDKなど部屋数に余裕のある間取りが必要になり、そのぶん広めの土地と建物が求められます。また、ファミリー層は自家用車を保有することも多いため、駐車場の確保も重要です。
そのため、ファミリー層をターゲットに賃貸併用住宅の経営を考えている場合は、どれだけの家族に入居してもらうかを決めた上で、その世帯数・人数に合わせて土地探しと建物の設計を進めることになります。
どれだけの家族に入居してもらうかは、ご自身の予算と確保できる土地によっても変わります。「立地 → 建物の規模 → 資金計画」という順番で考えると、途中でつじつまが合わなくなる事態を避けやすくなります。
【ミニ解説】賃貸併用住宅とは
1棟の建物の中に、オーナー自身が住む自宅部分と、第三者に貸す賃貸部分が同居している住宅のことです。家賃収入をローン返済に充てられる点が魅力ですが、その一方で「自宅」と「賃貸経営」の両方の判断が同時に必要になります。
周囲に生活に必須な施設が揃っていること

ファミリー向けの賃貸併用住宅を建てる上で意識しておきたいポイントとして、まず周囲に生活に必要な施設が揃っているかを確認します。例えば、スーパーマーケットやコンビニエンスストア、銀行や郵便局などの金融機関、行政手続きができる役所やその支所などが挙げられます。
また、これらの施設が閉店してしまう可能性も考えて、同じ用途の施設を複数使える立地であればなお良いといえます。さらにスーパーマーケットについては、品揃えや価格など、生活者の立場に立って見ることも重要です。もちろん、これらの施設は賃貸併用住宅を経営するご自身や家族も利用することになりますので、入居者と同じ目線でチェックできるのは併用住宅ならではの強みです。
これらの施設が揃っていると、入居者を募集する際にアピールポイントとして活用でき、入居率アップに期待できます。
交通の利便性や安全性が良いこと

交通の利便性も重要なポイントです。地方のファミリー層は自家用車を保有することも多く、駅への近さがそれほど重視されない場合もありますが、お出かけは自家用車、毎日の通勤は電車という方も少なくありません。
そのため、近隣にお住まいの方がどこへ通勤しているのかも調べた上で、忙しい朝でも快適に通勤できるよう、通勤需要が多いエリアへアクセスしやすい駅の近くを探すとよいでしょう。
また、自家用車を保有している方が快適に運転できるかという視点から、周囲の道路状況を確認するのもポイントです。例えば、見通しの悪い交差点の有無、交通事故の発生状況、通勤時間帯の渋滞具合なども調べておきましょう。
駅に近いことは、入居者募集の際に利便性としてアピールでき、家賃収入から諸経費を差し引いた利回りが高くなる傾向にあるため、経営面でも有利に働きます。
周囲に教育関連施設は揃っていること

ファミリー層は子育て世代の入居が予想されるため、周囲に教育関連施設が揃っていることも望ましいといえます。
小中学校が徒歩圏内で通学可能であることに加え、図書館や公民館、公園など、子どもが学んだり遊んだりできる施設があると、子育て世帯にとって魅力的に映ります。
また、近隣に同世代のファミリー層がどれだけ住んでいるのかも、あわせて確認するとよいでしょう。実際に通学路を歩いてみて、安全に通学できるかを自分の目で確かめることも大切です。
自治会などで子ども会やお祭り、地域イベントといった行事が行われているかも、確認してみることをおすすめします。さらに、公的な学校だけでなく、英会話教室や学習塾、書道教室、ピアノ教室といった習い事の場が周辺にあるかも見ておくと、判断材料が増えます。
周囲の治安が良いこと
ファミリー向けの賃貸併用住宅に限ったことではありませんが、治安が良い場所であることも重要です。
特にファミリー層はお子さんがいる世帯も多いことが予想されます。そのため、安心して子どもが通学できる街が理想です。不審者の情報が多い場所や、過去に事件があった場所は、ファミリー層に避けられる傾向にあります。
また、空き巣被害の状況などを事前にチェックしておくことも重要です。犯罪の発生情報は、最寄りの警察署や都道府県警察が公開している犯罪発生マップ、市区町村の窓口などで確認できます。地域限定で発行されている情報紙に、小さな事件の情報が載ることもありますので、あわせて目を通しておくとよいでしょう。
予算に余裕があれば、オートロックの導入や各住戸へのホームセキュリティの設置を検討すると、入居率が上がる可能性があります。
公的な地図サービスで立地を裏づける
ここまで挙げた「施設」「交通」「教育」「治安」は、現地に足を運んで確かめるのが基本です。ただし、いまは国が用意した無料の地図サービスで、事前に多くのことを裏づけられます。
国土交通省は2024年4月1日に「不動産情報ライブラリ」(https://www.reinfolib.mlit.go.jp/)の運用を開始しました。1つの地図上に、不動産の取引価格・地価公示などの価格情報、学校や小学校区、医療機関などの周辺施設情報、洪水浸水想定区域などの防災情報、都市計画情報を重ねて表示できるサービスです。従来は省庁や自治体のサイトを個別に見に行く必要があった情報が、ここでまとめて確認できます。
賃貸併用住宅を検討する方にとっては、次のような使い方ができます。
- 学区を確認する…小学校区が表示できるため、「その土地がどの小学校の学区か」をファミリー層目線で確認できます。
- 周辺施設を面で把握する…学校・医療機関などの立地状況を地図で俯瞰でき、現地見学の前に候補を絞り込めます。
- 災害リスクを確認する…洪水浸水想定区域や土砂災害警戒区域などを重ねて表示できます。より詳しい防災情報は、国土交通省・国土地理院の「ハザードマップポータルサイト」(https://disaportal.gsi.go.jp/)でも確認できます。
- 周辺の価格水準を知る…地価公示や取引価格情報から、その土地の相場観をつかめます。
ただし、地図でわかるのはあくまで「条件」であって「暮らし心地」ではありません。朝の通勤時間帯の混み具合、夜道の明るさ、生活音といった点は、必ず現地で、しかも時間帯を変えて確かめてください。
立地チェックの早見表
ここまでの内容を、確認する場所とあわせて表にまとめました。現地見学の前後で使ってみてください。
| チェック項目 | 見るポイント | 調べ方・確認先 |
|---|---|---|
| 生活施設 | スーパー・コンビニ・金融機関・役所などが複数使えるか | 地図サービス+現地(営業時間も確認) |
| 交通 | 通勤需要の多い方面へ出やすいか、駐車場は確保できるか | 路線図・時刻表+通勤時間帯の現地確認 |
| 道路の安全性 | 見通しの悪い交差点、通学路の状況、渋滞 | 現地確認・自治体の通学路点検資料 |
| 教育 | 小中学校が徒歩圏か、学区はどこか、公園・図書館の有無 | 不動産情報ライブラリ(小学校区)+自治体 |
| 治安 | 不審者情報・空き巣被害の状況 | 警察署・都道府県警の犯罪発生マップ・地域情報紙 |
| 災害リスク | 洪水・土砂災害などの想定区域に入っていないか | ハザードマップポータルサイト・自治体 |
| 賃貸需要 | 同世代のファミリーが住んでいるか、周辺の募集状況・家賃水準 | 賃貸情報サイト・地元の不動産会社へのヒアリング |
資金計画:住宅ローンで建てられるのか
賃貸併用住宅で最初につまずきやすいのが、「住宅ローンで建てられるのか、それともアパートローンなのか」という点です。ここは金利や返済期間に直結するため、土地を探し始める前に押さえておきましょう。
一般に、賃貸併用住宅で住宅ローンの利用が検討できるのは、建物の延床面積のうち自宅部分が一定割合以上(おおむね2分の1以上)を占める場合とされています。ただし、取り扱いの可否や条件は金融機関によって異なります。同じ計画でも「住宅ローンで可」という金融機関と「アパートローンで」という金融機関に分かれることがあるため、設計を固める前に複数の金融機関へ相談することをおすすめします。
全期間固定金利の【フラット35】については、住宅金融支援機構の公式サイトに「第三者に賃貸する目的の物件などの投資用物件の取得資金にはご利用いただけません」と明記されています。また、機構は融資住宅あてに残高証明書を送るなどして、申込本人や親族が実際に住んでいるかを定期的に確認しており、目的外の利用が判明した場合は借入額の全額を一括返済することになるとされています。「自宅として借りて、あとから貸す」という進め方は絶対に避けてください。賃貸併用住宅での利用可否は、必ず取扱金融機関と住宅金融支援機構の公式情報でご確認ください。
【ミニ解説】アパートローン(賃貸事業用ローン)
賃貸経営のための融資で、自宅を買うための住宅ローンとは審査の考え方が異なります。返済原資として家賃収入が見込まれる一方、一般に住宅ローンとは金利水準や借入期間の条件が異なるため、返済計画への影響も変わります。詳しい条件は各金融機関の公式サイトでご確認ください。
税金の扱いも通常の住宅とは異なる部分があります。住宅ローン控除や固定資産税の軽減は自宅部分と賃貸部分で扱いが分かれ、家賃収入には所得税・住民税がかかります。判断に迷う部分は、国税庁のサイトや税理士など専門家に確認してから計画を固めましょう。
建てたあとの管理と、法律の基礎知識
賃貸併用住宅は「建てて終わり」ではありません。入居者募集、家賃の入金管理、設備の修繕、退去時の精算といった業務が続きます。自主管理するのか、管理会社に委託するのかは、早い段階で考えておきたいポイントです。
管理を委託する場合や、一括で借り上げてもらう「サブリース」を検討する場合は、賃貸住宅管理業法(賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律)の存在を知っておくと安心です。この法律により、
- サブリース事業については、誇大広告の禁止・不当な勧誘の禁止・契約締結前の重要事項説明などの規制が2020年12月15日から始まっています。
- 賃貸住宅管理業の登録制度が2021年6月15日に施行され、管理戸数が200戸以上の管理業者には国土交通大臣の登録が義務づけられています。
つまり、「家賃保証」といった条件面は、契約前に書面で説明を受けられる仕組みになっているということです。家賃保証額が将来にわたって固定されるとは限らない点を含め、説明を受けたうえで納得してから契約しましょう。制度の詳細は国土交通省の公式ページでご確認ください。
なお、自宅と賃貸部分が同じ建物にあるということは、オーナーと入居者の距離が近いということでもあります。生活音や来客、ゴミ出しのルールなど、住まい方の取り決めをあらかじめ明確にしておくと、あとのトラブルを減らせます。
はじめての方が迷いやすいポイント
Q. 土地が先か、建物のプランが先か、どちらから考えればよいですか?
A. ファミリー向けを狙うなら、必要な部屋数と駐車場から逆算して土地の広さが決まります。まずは「どんな世帯に、いくらくらいで貸すのか」を仮に決めてから、その条件を満たす土地を探すと、判断がぶれにくくなります。
Q. 空室になったら返済はどうなりますか?
A. 家賃収入がゼロでも、ローンの返済は続きます。家賃収入をあてにしすぎない返済計画を立てることが、賃貸併用住宅で最も大切な備えです。金融機関に相談する際も、空室時に家計から返済できるかを確認しておきましょう。
Q. 自宅部分と賃貸部分の割合は、どう決めればよいですか?
A. 割合は資金計画に直結します。自宅部分を大きくすると住宅ローンの条件を満たしやすくなる一方、賃貸部分が小さくなれば家賃収入も減ります。「借りられる条件」と「収入の見込み」の両面から、金融機関と設計者に相談しながら決めるのが現実的です。
Q. 将来、家族構成が変わったらどうすればよいですか?
A. 子どもの独立などで自宅部分が余ることもあります。将来的に自宅部分も賃貸に回す、二世帯で使うなど、使い方を変えられる設計にしておくと選択肢が広がります。ただし、用途を変える際はローンの契約内容に反しないか、必ず金融機関へ確認してください。
Q. 立地は良いのに家賃が周辺より高くなりそうです。どう考えればよいですか?
A. 家賃は建築費ではなく、周辺の相場と需要で決まります。周辺の募集事例を複数調べ、「その家賃で借り手がいるか」を先に確かめてから建築計画を固めましょう。
まとめ
ファミリー向けの賃貸併用住宅で成否を分けるのは、建物の設備よりも「その場所に、家族連れの需要があるか」という一点に尽きます。生活施設・交通・教育・治安という4つの視点で候補地を見比べ、不動産情報ライブラリやハザードマップポータルサイトで裏づけを取り、最後は自分の足で確かめる——この手順を踏むだけで、判断の精度は大きく変わります。
そして、忘れてはいけないのが資金計画と管理の準備です。住宅ローンで建てられるのか、空室のときも返済を続けられるのか、管理は誰が担うのか。この3つに答えを出せていれば、賃貸併用住宅は「住まい」と「収入」を両立させる選択肢になります。
※本記事は2026年7月時点の情報にもとづいています。融資の取り扱い条件や税制、各制度の運用は変更されることがあるため、最新の情報は各金融機関・住宅金融支援機構・国土交通省・国税庁の公式サイトでご確認ください。

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