- 公開日: 2026.07.19
- 不動産の売却について
住宅を売却して損失が出たら税金はどうなる?損益通算と繰越控除の特例

住宅の買い替えや諸事情によって、現在住んでいる住宅を売却した場合、建物や土地の価値の下落により、購入したときの価格より安い値段でしか売れないことは珍しくありません。
今回は、住宅を売却した際に損失(譲渡損失)が発生した場合の税金の扱いについて、初めての方にも分かりやすく解説します。
譲渡損益は取得費用から諸経費を差し引いて計算する
はじめに、住宅などの不動産で損益が出たかどうかは、不動産の売却で得た金額(譲渡収入)から、不動産の購入費用(取得費)と、仲介手数料などの譲渡費用を差し引いて判断します。
不動産を売却する際は、別の記事で詳しく解説していますが、不動産会社に売却活動や売買契約手続きを依頼するための「仲介手数料」、契約書に貼る「印紙税」、抵当権抹消などの「登記費用」など、さまざまな諸経費が発生します。
譲渡収入から取得費と諸経費を差し引いてプラスになれば、課税対象の譲渡所得として所得税と住民税がかかります。一方で、差し引いてマイナスになれば「譲渡損失」が発生したことになります。
ただし、譲渡損失が発生した場合でも、その不動産が居住用の住宅(マイホーム)であれば、「買い換える場合」と「売却のみの場合」に合わせて2種類の特例が用意されており、他の所得にかかる税金を軽減できる可能性があります。
なお、これらの特例は適用期限の延長が繰り返されてきた制度で、令和8年度税制改正により適用期限は2027年(令和9年)12月31日までの譲渡まで2年延長されています(2026年7月時点。改正で要件が見直される場合があるため、最新の期限・要件は国税庁サイトでご確認ください)。
居住用住宅を買い換える場合の譲渡損失の特例

マイホームを買い換える際に譲渡損失が発生した場合、その損失を給与所得や事業所得など他の所得と相殺(損益通算)でき、相殺しきれない分は翌年以後3年間にわたって繰越控除できます(「マイホームを買い換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」)。
給与所得者であれば、毎月の給与から所得税が源泉徴収されていますが、譲渡損失と損益通算することで、納めた税金の還付を受けられたり、翌年以降の税負担を軽減できたりするわけです。
この特例を受けるための主な要件は次のとおりです(国税庁タックスアンサーNo.3370)。
・売った年の1月1日時点で、所有期間が5年を超えているマイホームであること
・譲渡の年の前年1月1日から翌年12月31日までの間に、床面積50平方メートル以上の新居を取得すること
・新居を取得した年の翌年12月31日までに居住する(見込みである)こと
・新居について、取得した年の12月31日時点で償還期間10年以上の住宅ローンがあること
また、繰越控除は合計所得金額が3,000万円以下の年分に限り適用できます(3,000万円を超える年があれば、その年のみ適用不可)。旧居の敷地が500平方メートルを超える場合、超える部分に対応する損失は繰越控除の対象外です。なお、この特例は住宅ローン控除との併用が可能です。
住宅ローン控除の適用要件については、別の記事で詳しく解説していますので合わせてご覧ください。
売却のみの場合の譲渡損失の特例
買い替えではなく、単純に売却のみの場合でも、住宅ローンが残っているマイホームをローン残高を下回る価額で売却して譲渡損失が生じたときは、他の所得との損益通算と翌年以後3年間の繰越控除が適用できます(「特定のマイホームの譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例」・国税庁タックスアンサーNo.3390)。新たにマイホームを買わない場合でも使えるのがポイントです。
主な要件は、売った年の1月1日時点で所有期間が5年を超えていること、譲渡契約締結日の前日時点で、そのマイホームに償還期間10年以上の住宅ローン残高があること、そして譲渡価額がその住宅ローン残高を下回っていることです。繰越控除は買い換えの特例と同様、合計所得金額3,000万円以下の年分に限られます。
また、損益通算できる損失の金額は、譲渡損失の金額と「住宅ローン残高−譲渡価額」のいずれか少ない金額が限度となります。
2つの特例を受けるための共通の適用要件
マイホームの譲渡損失について2つの特例を適用するには、次のような共通の要件を満たしている必要があります。
1.ご自身が住んでいる(住んでいた)居住用の住宅を売却したこと
(別荘など保養目的で所有している住宅は適用外)
2.以前に住んでいた住宅の場合、住まなくなった日から3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却すること
3.一定の譲渡損失が発生していること
4.家屋を取り壊して敷地だけを売る場合は、取り壊しから1年以内に譲渡契約を締結していること(災害で家屋が滅失した場合の敷地にも所定の期限があります)
5.譲渡相手が配偶者・親子などの特別な関係にないこと(生計を一にする親族や特殊な関係の法人も含む)
このほか、前年・前々年に3,000万円特別控除や買換え特例など他の居住用財産の特例を使っている場合は適用できないなど、細かな除外要件があります。
2つの特例を受けるには確定申告が必要

居住用の住宅を売却して譲渡損失が発生した場合は、確定申告を行わなければ特例を受けることはできません。給与所得者は毎月の給与から所得税が源泉徴収されているため、確定申告をしなければ還付を受けられず、本来より多くの税金を負担したままになってしまいます。
繰越控除を受ける場合は、損失が出た年の翌年以降も連続して確定申告書を提出する必要がある点にも注意しましょう。申告には譲渡損失の明細書や住宅ローンの年末残高証明書など所定の書類が必要です。詳しくは、最寄りの税務署や税理士に相談すると安心です。
よくある質問
Q. 2つの特例はどう使い分けるのですか?
A. 新しいマイホームに買い換えるなら「買い換えの特例」、買い換えずに売却だけするなら「売却のみの特例」です。両者は次のように要件が異なります。
| 比較の観点 | 買い換えの特例 | 売却のみの特例 |
|---|---|---|
| 新居の購入 | 必要(床面積50㎡以上) | 不要 |
| 住宅ローンの要件 | 新居に償還期間10年以上のローンが必要 | 売却する住宅にローン残高が必要(残高>売却価額) |
| 損益通算できる金額 | 譲渡損失の金額 | 譲渡損失と「ローン残高−譲渡価額」の少ない方 |
| 繰越控除の期間 | いずれも譲渡の年の翌年以後3年間(合計所得金額3,000万円以下の年分のみ) | |
Q. 特例はいつまで使えますか?
A. 適用期限は2年ごとの延長が繰り返されており、令和8年度税制改正で2027年(令和9年)12月31日までの譲渡まで延長されています(2026年7月時点)。今後も改正される可能性があるため、売却を検討する際は国税庁サイトで最新の期限・要件をご確認ください。
Q. 住宅ローン控除と併用できますか?
A. 買い換えの特例は新居の住宅ローン控除と併用できます。譲渡損失の損益通算で課税所得が減った年は住宅ローン控除を引ききれないこともありますが、その場合も繰越控除とあわせて数年単位で税負担を軽減できます。具体的な有利不利は税務署や税理士に確認しましょう。

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