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住宅ローンの繰り上げ返済はいつがお得?控除0.7%と10年の壁

住宅ローンを組んだあと、「まとまったお金ができたら、少しでも早く返してしまいたい」と考える方は多いと思います。その方法が繰り上げ返済です。

毎月の返済とは別に、手元の資金からまとまった額(たとえば100万円、200万円)を返済にあてて、元金だけを直接減らす手続きのことをいいます。元金が減れば、その元金に対してかかるはずだった利息がまるごと消えるため、総返済額を減らせます。

ただし「いつやってもお得」というわけではありません。とくに住宅ローン控除(住宅ローン減税)を受けている間は、あわてて繰り上げ返済しないほうがよいケースや、やり方によっては控除そのものが受けられなくなるケースもあります。初めての方がつまずきやすい順に、ひとつずつ整理していきましょう。

繰り上げ返済の方法は2種類

繰り上げ返済で入れたお金は、利息ではなく元金にそのまま充てられます。元利均等返済で「なかなか元金が減らない」と感じる部分を、自分のペースで直接削っていけるのが繰り上げ返済のいいところです。

そのうえで、減らした元金の効果を「期間」で受け取るか「毎月の返済額」で受け取るかを選びます。これが期間短縮型と返済額軽減型の違いです。

比較の観点 期間短縮型 返済額軽減型
毎月の返済額 変わりません 少なくなります
返済期間(完済時期) 短くなります 変わりません
利息を減らす効果 同じ金額なら大きくなります 期間短縮型より小さくなります
向いている場面 総返済額をできるだけ抑えたい/定年までに完済したい 毎月の家計の負担を軽くしたい/収入が変わる予定がある

同じ金額を入れるなら、利息を減らす効果が大きいのは期間短縮型です。ただし毎月の返済額は変わらないので、家計が今すぐ楽になるわけではありません。逆に返済額軽減型は、利息の削減効果は控えめでも、毎月の負担がそのぶん軽くなります。「総額を減らしたいのか、毎月を楽にしたいのか」で選ぶ、と覚えておけば迷いません。

どちらを選ぶか決めきれないときは、金融機関のウェブサイトにある返済シミュレーションを使ってみてください。借入残高・残り期間・金利・繰り上げ返済する金額を入れるだけで、2種類の違いが数字で見えるようになります。

効果が大きいのは「早いうち」。その理由

繰り上げ返済は、同じ金額なら早い時期に行うほど、消せる利息が大きくなります。返済が始まったばかりの時期は借入残高が大きく、毎月の返済額に占める利息の割合も大きいためです。返済が進んで残高が小さくなるほど、同じ100万円を入れても消える利息は少なくなっていきます。

また、借入金利が高いほど、繰り上げ返済で消せる利息も大きくなります。低金利で借りている方より、金利が高めの方のほうが繰り上げ返済のメリットは出やすい、ということです。

ただし「早いほど効果が大きい」は、あくまで利息だけを見た話です。次に説明する住宅ローン控除や手数料、そして手元に残しておくお金とのバランスで、最適なタイミングは人によって変わります

住宅ローン控除を受けている方は待っていた方がお得な場合も!


借入残高が多い早いうちに繰り上げ返済をした方がお得だと書きましたが、住宅ローン控除を受けている方は、少し待ってみるという考え方もあります。

住宅ローン控除は、その年の年末(12月31日)時点の住宅ローン残高が計算のもとになります。つまり繰り上げ返済で年末残高を減らすと、そのぶん控除される金額も減ってしまいます。

ここで大事なのが控除率です。2022年(令和4年)入居分から控除率は年末残高の0.7%になりました(それ以前は1%でした)。古い記事やパンフレットには「1%」と書かれていることがあるので、ご注意ください

考え方はシンプルで、「借入金利」と「控除率0.7%」のどちらが大きいかです。

  • 借入金利が0.7%を下回っている…払う利息より戻る税金のほうが大きい状態です。控除を受けられる間は、あわてて残高を減らさず持っておくほうが有利になりやすいといえます。
  • 借入金利が0.7%を上回っている…払う利息のほうが大きいので、繰り上げ返済で利息を減らす効果のほうが大きくなりやすいといえます。

近年は金利が上がってきており、たとえば全期間固定の【フラット35】は、2026年8月資金受取分で借入期間21年以上35年以下・融資率9割以下の場合、最も多い金利が年3.290%です(住宅金融支援機構の公式サイトで確認)。これから借りる方や固定金利で借りている方は、借入金利が控除率0.7%を上回っているケースが多いと考えてよいでしょう。一方で、以前に低い変動金利で借りた方は0.7%を下回っていることもあります。まずはご自身の適用金利を返済予定表で確認するところから始めてみてください。

そしてもうひとつ、控除を受けられる期間は「10年」とは限りません。新築住宅や買取再販住宅は原則13年間、中古(既存)住宅は10年間が基本でしたが、2026年(令和8年)1月1日以降に入居する場合、省エネ性能の高い既存住宅も控除期間が13年に広がりました。制度そのものも2030年(令和12年)12月31日入居分まで5年延長されています(国土交通省)。

したがって「10年目の12月まで待つ」と一律に考えるのではなく、ご自身の控除期間が終わる年の12月まで待ち、その翌年1月に繰り上げ返済する——というのが、控除を最後まで取り切るうえでの基本形になります。控除期間や借入限度額は入居した年の制度で決まりますので、ご自身がどの制度に当てはまるかは、国税庁・国土交通省の案内や、確定申告時の書類でご確認ください。

要注意:返済期間が10年未満になると控除が受けられません

これは意外と知られていない、しかし影響の大きい落とし穴です。

住宅ローン控除の対象になるのは、償還期間が10年以上のローンと決められています。そして国税庁は、繰り上げ返済をした場合の償還期間について「繰上返済後の返済期間で判定する」としています。

具体的には、当初の契約で最初に返済した月から、繰り上げ返済によって短くなったあとの最終返済月までの期間が10年以上あれば、その後も控除を受けられます。逆にいえば、期間短縮型の繰り上げ返済をした結果この期間が10年未満になってしまうと、該当しなくなった年以後は住宅ローン控除が受けられなくなります

つまり、控除期間の途中で大きな期間短縮型の繰り上げ返済をすると、残りの控除をまるごと失ってしまうことがあるわけです。控除を受けている最中に期間短縮型を使うときは、「短縮後も最初の返済月から10年以上残るか」を必ず確認しましょう。返済期間が変わらない返済額軽減型を選ぶ、あるいは控除期間が終わってから期間短縮型を使うのも、安全な進め方です。

繰り上げ返済時の手数料が有料なら回数に注意

そして、忘れてはいけない事があります。
それは、繰り上げ返済を行う際、手数料が必要になる金融機関もあります。

せっかく繰り上げ返済をしたのに、手数料が想像以上にかかっては効果が目減りしてしまいます。返済シミュレーションを行うときには、必ず手数料の確認もしておくようにしてくださいね。

手数料が無料であれば、回数が増えても損はありません。むしろこまめに入れたほうが、早く元金が減って効果的です。反対に1回ごとに手数料がかかる金融機関では、回数が増えるほど出費もかさむため、ある程度まとまった金額になってから実行するほうが合理的です。

チェックすべきポイントは次の3つです。

  • 一部繰り上げ返済の手数料…インターネットからの手続きなら無料、窓口や電話だと有料、という設定の金融機関もあります。
  • 全額繰り上げ返済(完済)の手数料…一部繰り上げ返済とは別料金のことがあります。たとえばドコモの銀行(旧・住信SBIネット銀行)のネット専用住宅ローンは、一部繰り上げ返済は無料ですが、全額繰り上げ返済は変動金利適用期間中は無料、固定金利適用期間中は33,000円(税込)とされています。
  • 最低金額と受付方法…「1万円以上」などの下限や、申し込みの締切日が決められていることがあります。金額の下限や締切は金融機関ごとに違うため、公式サイトでご確認ください。

こまめに繰り上げ返済していきたい方にとっては、手数料が0円かどうかが実務上いちばん効いてきます。たとえばSBI新生銀行の住宅ローンは、インターネットバンキング(パワーダイレクト)から1円単位・いつでも何度でも手数料0円で一部繰り上げ返済ができ、全額繰り上げ返済も手数料0円とされています(電話での手続き)。借りたあとの使い勝手も含めて比べたい方にとっては、検討に値する選択肢のひとつです。

なお、こうした手数料や条件は改定されることがあります。最新の内容は必ず各金融機関の公式サイトでご確認ください。

実行する前に確かめておきたい3つのこと

繰り上げ返済は「余ったお金を入れる」ものであって、無理をしてまで急ぐものではありません。実行前に、次の3点だけは落ち着いて確認しておきましょう。

  1. 生活予備費を残しているか…病気やケガ、収入の変動に備えるお金まで返済に回すと、いざというときに高い金利の借り入れに頼ることになりかねません。繰り上げ返済したお金は、原則として引き出せません。
  2. 近い将来の大きな支出…教育費、車の買い替え、リフォームなど、数年以内に予定がある支出は先に確保しておきます。
  3. 団体信用生命保険(団信)の存在…住宅ローンを完済すると、万一のときに残債が0になる団信の保障も終わります。全額繰り上げ返済を考えるときは、保障がなくなる点も一緒に考えておくと安心です。

初めての方が迷いやすいポイント(Q&A)

Q. 繰り上げ返済はいくらから利用できますか?
金融機関によって異なります。1円単位で受け付けるところもあれば、1万円以上などの下限を設けているところもあります。手続きの方法(インターネット・窓口・電話)によって条件が変わることもあるため、契約先の公式サイトで確認してください。

Q. ボーナスのたびに少しずつ返すのと、数年ためてまとめて返すのは、どちらが得ですか?
手数料が無料なら、早く元金を減らせる「こまめに」のほうが有利になりやすいです。1回ごとに手数料がかかるなら、回数を絞って「まとめて」のほうが無駄がありません。手数料の有無で答えが変わる、と考えてください。

Q. 期間短縮型と返済額軽減型は、あとから変更できますか?
すでに実行した分の取り扱いを後から変えることは、原則としてできません。ただし次回の繰り上げ返済で別のタイプを選べる金融機関もあります。1回目を実行する前に、どちらの効果がほしいのかを決めておきましょう。

Q. 住宅ローン控除を受けている間は、繰り上げ返済をしないほうがいいのですか?
一律にそうとは言えません。判断のもとになるのは借入金利と控除率0.7%の関係です。借入金利が0.7%を大きく上回っているなら、控除期間中でも繰り上げ返済の効果が上回ることがあります。ただし期間短縮型で返済期間が10年未満になると控除が受けられなくなる点には注意してください。

Q. 繰り上げ返済と借り換えは、どちらを先に考えるべきですか?
今より低い金利に替えられる見込みがあるなら、まず借り換えを検討し、そのうえで繰り上げ返済を考えるという順番が分かりやすいでしょう。借り換えには事務手数料や登記費用などの諸費用がかかるため、手数料まで含めた総額で比べることが大切です。

まとめ:判断の順番は「控除」→「手数料」→「手元資金」

繰り上げ返済でいちばん大事なのは、金額よりも順番です。

  1. まず住宅ローン控除。自分の控除期間はいつまでか、借入金利は0.7%を上回っているかを確認します。期間短縮型を使うなら、返済期間が10年未満にならないかも必ずチェックを。
  2. 次に手数料。無料ならこまめに、有料ならまとめて。全額繰り上げ返済の手数料が別建てになっていないかも見ておきます。
  3. 最後に手元資金。生活予備費と近い将来の支出を残したうえで、余裕資金の範囲で行います。

この3つを押さえておけば、大きな失敗はまず避けられます。まずは手元の返済予定表を開いて、ご自身の適用金利と残りの返済期間を確認するところから始めてみてください。

※本記事は2026年8月時点の公表情報にもとづいています。金利・手数料・税制は改定されることがありますので、最新の内容は各金融機関および国税庁・国土交通省の公式サイトでご確認ください。

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