- 公開日: 2026.07.13
- 住宅購入の基礎知識
マンションの建替えはどう決まる?区分所有法と2026年改正をやさしく解説

マンションを購入する際に考えておきたいことのひとつに、建物そのものが時間の経過とともに老朽化し、いずれ「建替え」の話が出てくる可能性がある、という点があります。ただ、購入時に老朽化したときのことまで考える方は少なく、いざそのときになって慌ててしまうケースも少なくありません。
しかも、マンションの建替えをめぐるルールは大きな転換点を迎えています。2025年5月に成立した改正区分所有法が2026年4月1日に施行され、約24年ぶりにルールが大きく見直されました。
今回は、マンションの購入を検討している方に向けて、将来建物が老朽化した場合に建替えはどのように決まるのかを、「区分所有法」の基礎と最新の法改正とあわせてやさしく解説します。
マンションの管理・権利関係は「区分所有法」によって決められる
分譲マンションや中古マンションを購入する場合、多くはご自身やご家族が居住する「部屋」を購入することになります。一戸建て住宅とは異なり、建物そのものをまるごと購入するわけではありません。こういった所有形態を「区分所有」と呼びます。
一戸建て住宅であれば、建替えやメンテナンスといった建物まわりのことは家族で話し合って決められますが、マンションの場合、ご自身の部屋(専有部分)以外の、階段やエレベーター、廊下といった建物全体の共用部分については、マンションの管理組合を通じて、入居者の権利関係を調整したうえで決定されます。
マンションでは管理組合に対して管理費を支払っていきますが、共用部分に関する取り決めは管理組合が好き勝手に行ってよいわけではなく、「建物の区分所有等に関する法律(区分所有法)」によってルールが決められています。
区分所有法では、原則として専有部分の床面積の割合によって議決権(権利)の割合が決まります。そのため、専有部分が大きいほど、その持ち分に応じた発言力を持つことになります。
区分所有法は1962年(昭和37年)に制定される

区分所有法は、1962年(昭和37年)に制定されました(昭和37年法律第69号)。高度経済成長に伴って住宅の供給が増えていくなか、現在のような大型のマンションが都市部を中心に建設されるようになりましたが、当時は管理組合の明確な規定がなく、旧来の法律では対応しきれないさまざまな問題が生じたためです。
制定当時は、「区分所有権の対象の明確化」と「共用部分の範囲および所有関係」、「管理者と管理規約、集会」について盛り込まれました。
その後、1983年(昭和58年)に改正され、専有部分と敷地利用権の一体化と管理制度の充実が図られ、規約を変更する際の「全員可決から多数決議主義への転換」、「悪質な区分所有者の排除」、「特別多数決による建替えの実現」が盛り込まれました。
2002年(平成14年)にも改正され、「大規模修繕に関する決議」、「管理者の権限の拡大」、「議事録の電子記録の容認」、「建替えに関する決議の要件の見直し」が行われました。
そして2025年(令和7年)5月には、老朽化マンションの増加と所有者の高齢化という「2つの老い」に対応するための大規模な改正法が成立し、2026年4月1日に施行されました(法務省・令和7年法律第47号)。2002年以来、約24年ぶりの大改正です。詳しくは後半のセクションで解説します。
普通決議は出席者の多数決で決定(2026年4月から)
管理組合の日常的な運営事項(収支予算や役員の選任など)は「普通決議」で決められます。
従来の区分所有法では、決議は原則として「全区分所有者」を母数とした多数決だったため、総会に来ない人や連絡が取れない所有者が多いマンションでは、賛成多数でも決議が成立しにくいという問題がありました。
2026年4月施行の改正法では、普通決議は「集会(総会)の出席者」を母数とした多数決へと見直され、意思決定がしやすくなりました。書面や電磁的方法(オンライン等)、委任状での参加も「出席」に含まれます。金銭的・心理的な負担が大きくなく、建物の形状やその効用が著しく変化しない事項が、この普通決議で決められます。
裏を返せば、総会を欠席し続けると、自分の知らないうちに物事が決まっていくということでもあります。マンションを購入したら、管理組合の総会にはできるだけ参加することが、これまで以上に大切になりました。
規約の変更や新設、廃止は特別決議の4分の3以上で可決
マンションの管理規約を変更する、新しく設定する、廃止するといった重要な事項は、「特別決議」として4分の3以上の賛成で可決されます。そのほか、管理組合法人の設立や、共用部分の重大な変更、建物の一部が滅失した場合の復旧なども特別決議の対象です。
また、悪質な区分所有者に対する専有部分の使用禁止の請求や、区分所有権の競売に関する請求、占有者に対する引き渡しの請求についても特別決議が求められます。
なお、規約変更などの特別決議についても、2026年4月施行の改正法で出席者を母数とする方式へ見直され、合意形成のハードルが下がっています(建替えなど、区分所有権の処分を伴う決議は除きます)。
建物の建替えは原則5分の4以上の賛成で可決

マンションの建替えについては、区分所有者の財産に最も大きな影響を与える決定であるため、原則として5分の4以上の賛成があってはじめて可決となります。この「5分の4」という高いハードルは、改正後も原則として維持されています(緩和される場合は次のセクションで解説します)。
建替え決議を行う場合は、決議を行う2ヶ月前までに招集通知を発送する必要があります。さらに、決議を行う1ヶ月前までには、決議事項に関する説明会を開催することが義務付けられています。
説明会・総会では、建替えを必要とする理由のほか、建物をそのまま維持する場合と建て替える場合それぞれの費用の額と内訳、建替えの計画、これまで修繕積立金として積み立てられている金額などを説明する必要があります。
2026年4月施行の改正区分所有法で何が変わった?
今回の改正のポイントのうち、これからマンションを購入する方に特に関わる変更を整理します(法務省の公表資料にもとづく・2026年7月時点)。
| 変更点 | 改正前 | 改正後(2026年4月〜) |
|---|---|---|
| 普通決議・規約変更などの母数 | 全区分所有者ベース | 総会の出席者ベース(書面・オンライン・委任状も出席扱い) |
| 建替え決議 | 一律5分の4以上 | 原則5分の4以上を維持。ただし耐震性・火災安全性の不足など客観的な事由がある場合は4分の3以上に緩和 |
| 所在不明の所有者 | 母数に含まれ、決議の障害に | 裁判所の決定で母数から除外できる |
| 建替え以外の再生手法 | 選択肢が限定的 | 建物・敷地の一括売却、取壊し、一棟リノベーションなどの決議制度を新設 |
つまり、「所有者と連絡が取れない」「総会に人が集まらない」ことで何も決められなかった老朽化マンションでも、建替えや売却といった再生の道筋を付けやすくなったのが今回の改正の大きな意義です。中古マンションの購入を検討している方にとっては、築年数の古い物件でも将来の再生シナリオが描きやすくなった一方、管理組合の運営状況(総会の出席率や修繕積立金の状況)が資産価値を左右する傾向はより強まったといえます。
よくある質問(FAQ)
Q1. 建替えに反対したら、住み続けることはできますか?
建替え決議が成立した場合、決議に賛成しなかった区分所有者に対しては、区分所有権を時価で売り渡すよう請求できる仕組み(売渡請求)があります。つまり、決議が成立すると、反対していてもそのまま住み続けることは基本的にできません。だからこそ、建替えには5分の4という高い賛成割合が求められています。
Q2. 中古マンションを買うとき、建替えリスクはどこを見ればいいですか?
築年数だけでなく、新耐震基準(1981年6月以降の建築確認)を満たしているか、修繕積立金が計画的に積み立てられているか、管理組合の総会が機能しているかを確認しましょう。改正法では耐震性が不足するマンションは建替え決議の要件が緩和されたため、旧耐震の物件は将来建替えの議論が本格化する可能性が相対的に高くなっています。
Q3. 建替えが決まったら、住宅ローンが残っていてもお金はかかりますか?
建替えでは、仮住まいの費用や建替え費用の負担金が発生するのが一般的です(積立金や再建後の住戸の売却でまかなえるかは物件により大きく異なります)。住宅ローンの返済中に建替えとなる場合の資金計画は複雑になるため、管理組合から示される資金計画をよく確認し、必要に応じて金融機関や専門家に相談することをおすすめします。
※本記事は制度の概要をわかりやすくまとめたものです。改正法の詳細な運用は、法務省・国土交通省の公表資料や、お住まいのマンションの管理規約でご確認ください。

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