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離婚とマイホーム|住宅ローンの名義はどうなる?2026年改正も解説

マイホームを買ったあとの離婚。あまり考えたくないことですが、実際に起きると「この家をどうするか」「住宅ローンは誰が返していくのか」という重い問題が一度に押し寄せてきます。

しかも住宅ローンは、離婚届を出しただけでは何も変わりません。「家の名義(登記)」と「ローンの契約(誰が返す義務を負っているか)」はまったく別のもので、それぞれ別の手続きが必要だからです。ここを知らないまま離婚してしまうと、後から「思っていたのと違う」と困ることになります。

かつての超低金利のもとでは、夫婦の収入を合わせてローンを組み、少し背伸びした金額の家を買う方も少なくありませんでした。日本銀行の政策金利は2026年7月31日の金融政策決定会合で年1.0%程度に据え置かれており、いまは「金利のある世界」に戻っています(出典:日本銀行)。二人分の収入を前提に組んだローンは、片方が抜けた瞬間に一気に重くなります。

この記事では、実際にあったご相談を2つご紹介しながら、離婚に伴う住宅ローンの問題と対処の考え方を、はじめての方にもわかるように整理していきます。あわせて、2026年4月1日に施行された家族法(民法など)の改正で変わったポイントもお伝えします。

まず押さえたい:「家の名義」と「ローンの契約」は別々に考える

離婚の話し合いでこじれやすいのは、この2つを一緒くたにしてしまうからです。

  • 名義(所有権)……その家が誰のものか。法務局の登記簿に記録されています。夫婦の話し合いや財産分与で変えることができます。
  • ローンの契約(債務)……誰が銀行にお金を返す義務を負っているか。こちらは夫婦の合意だけでは変えられず、必ず金融機関の承諾が必要です。

「離婚したから、私はもうローンとは関係ありません」は通用しません。銀行から見れば、契約者は契約者、連帯保証人は連帯保証人のままです。まずは自分たちがどの組み方でローンを借りたのかを、契約書(金銭消費貸借契約証書)で確認しましょう。

借り方 どういう状態か 離婚のときにつまずきやすい点
単独名義・単独債務 夫婦の一方だけが所有者で、その人だけがローンを返す 比較的シンプル。ただし住み続ける人と返す人が違うと後々もめやすい
連帯債務 1本のローンを夫婦2人がそろって背負う(収入合算の代表例) どちらも「全額を返す義務」がある。片方が払わなければもう片方に請求が来る
連帯保証 契約者は1人だが、配偶者が保証人として責任を負う 離婚しても保証人からは自動的に外れない。銀行の承諾と代わりの保証人などが必要
ペアローン 夫婦がそれぞれ別々にローンを契約し、互いに相手の保証人になる ローンが2本あるため整理が最も複雑。持分(共有名義)も残る

夫婦の共有名義で購入したマイホームを、離婚後に妻の単独名義にしようとしたケース

Mさん夫妻は、結婚後に夫婦共有名義でマンションを購入しました。ところが夫は結婚後まもなく会社を辞め、実際には妻が住宅ローンのほとんどを返済していました。

その後Mさん夫妻は離婚することになります。妻は離婚後もその家に住み続け、名義も自分ひとりにしたいと望んでいましたが、所有権だけでなくローンも2人の名義になっているため、「売却するしか方法はないのか」というご相談でした。

対処は次のように進めました。

まず名義は、「財産分与」を原因とする登記によって妻の単独名義にすることができます。

次に返済については、夫との返済の分担を離婚協議で決めます。本件では弁護士に依頼し、合意内容を書面(公正証書などの形)に残しました。口約束にしないことが、後々の紛争を防ぐいちばんの近道です。

そして銀行への対応です。夫と妻は連帯して返済する関係であることを踏まえ、一方(妻)の返済が滞ったときにはもう一方(夫)が返済することを確約したうえで、離婚した旨を届け出ることで済みました。

銀行側からすれば、家庭の状況がどうなろうと、約束どおり返済されることがいちばん大事だからです。逆にいえば、「夫を債務者から外してほしい」と求める場合は、残った一人の収入だけで審査に通る必要があり、簡単には認められません。この点は誤解の多いところなので、離婚を決める前に金融機関へ相談しておくと安心です。

マンションを共有名義で購入したが、離別後に売却を拒否されたケース

これはいろいろとややこしい案件でした。

事の経緯としては、結婚を前提に交際していた婚約者(女性は「元彼」と言っていました)と、共有名義かつ連帯債務で中古マンションを購入しました。双方がフルタイムで働いていたため早期にローンは完済できたのですが、男性側の浮気が原因で婚約破棄になってしまいます。女性側はマンションを出て行きましたが、男性側はそこに住み続け、しかも女性側は売却したいのに男性側が同意しないので困っている、という事例です。

このケースのポイントは「共有名義にしていたこと」です。

もし購入の際に「男性側が世帯主になるのだから」と相手の単独名義にしていたら、女性側は登記上まったく権利のない状態になり、出したお金を取り戻すのに大変な苦労をすることになります。長期間そのまま放置すれば、民法の取得時効(20年間の占有。占有の開始時に自分の物だと信じ、そう信じたことに過失がなければ10年間。民法162条)によって、相手の所有が確定してしまうおそれもあります。

この女性の場合は共有名義にしていたので、持分という形で所有権が守られました。お金を出したなら、その割合に応じて持分を登記しておく。これは結婚前でも結婚後でも変わらない鉄則です。

さて、本題の「売却拒否」への対処法です。まず女性側の持分を相手に買い取るよう請求し、もしその請求も拒むようなら、裁判所に共有物分割請求(民法258条)を申し立てて争う用意もしていました。

婚約破棄の原因は相手側にあり、女性の主張が正当と判断される見込みがあったので、相手は買い取りを拒めないと踏んだのです。案の定、相手は売却に応じ、2か月後に無事契約に至りました。

なお、この共有物分割については2023年(令和5年)4月1日施行の改正民法でルールが整理されました。裁判所が命じられる分割方法として「現物を分ける方法」と「一方が持分を取得して相手にお金を支払う方法(賠償分割)」が条文に明記され、そのいずれもできない場合などに競売、という順序になっています(民法258条2項・3項)。話し合いが決裂しても、いきなり競売で叩き売られるとは限らない、ということです。

2026年4月から、財産分与のルールが変わりました

2024年(令和6年)5月に成立した「民法等の一部を改正する法律」(令和6年法律第33号)が、2026年(令和8年)4月1日に施行されました。離婚後の子の養育に関する見直しが中心ですが、財産分与についても実務に直結する変更が入っています。

  • 請求できる期間が2年から5年に伸びました……離婚のときに財産分与を決めきれなかった場合でも、後から家庭裁判所に請求できる期間が長くなりました。ただし2026年3月31日までに離婚が成立したケースは、従来どおり2年のままです。
  • 考慮すべき要素が明確化されました……財産の取得・維持に対する夫婦の寄与の割合は、原則として2分の1ずつであることが条文上はっきりしました。「専業主婦(主夫)だから取り分が少ない」という理屈は通らない、ということです。
  • 裁判手続で財産の情報を開示させやすくなりました……相手が財産を明らかにしないケースへの対応が整備されています。
  • あわせて、離婚後の親権について共同親権を選べるようになりました(単独親権との選択制)。

住宅ローンが残った家は、たいてい夫婦の財産のなかでいちばん大きな金額になります。期間が延びたからといって先延ばしにする理由にはなりませんが、「離婚を急いだせいで家のことを決めきれなかった」という方にとっては、立て直しの時間が確保されたことになります。詳しい内容は法務省のページで確認できます。

離婚で名字や住所が変わったら、登記の変更もお忘れなく

見落とされがちですが、2026年(令和8年)4月1日から、不動産の所有者は氏名・名称や住所が変わったときに、変更の日から2年以内に変更登記を申請することが義務づけられました(不動産登記法76条の5)。正当な理由なく怠ると、5万円以下の過料の対象になります。

離婚で旧姓に戻ったり引っ越したりすれば、まさにこの「変更」に当たります。しかも施行日より前の変更も対象で、その場合は2028年(令和10年)3月31日までが期限とされています。

法務局にあらかじめ「検索用情報」(氏名のふりがな・生年月日など)を届け出ておけば、登記官の職権で住所等の変更登記をしてもらえる仕組み(いわゆるスマート変更登記)も2026年4月から始まっています。手続きの詳しい方法は法務省・法務局の案内をご確認ください。

「私ひとりの名義にしたい」ときの現実的な選択肢

住み続ける側の単独名義・単独債務にしたい場合、実務では次のいずれかになります。

  1. 住み続ける人が単独で借り換える……もっともすっきりする方法です。残債を自分ひとりの収入で借り直せるかが審査のポイントで、これに通れば相手を債務者・連帯保証人から外せます。
  2. いまの銀行に債務者の変更を相談する……認められるかは金融機関の判断次第で、ハードルは高めです。
  3. 売却して清算する……売却額でローンを完済できる(アンダーローン)なら、残ったお金を分けるだけで済みます。売っても残債が消えない(オーバーローン)場合は、不足分を誰がどう負担するかを決める必要があり、任意売却などの検討になります。

借り換えを検討するときは、金利の低さだけでなく、事務手数料・保証料・繰上返済手数料といった諸費用まで含めた総額で比べてください。離婚後は収入も家計も変わるため、「借りたあとにかかるお金」が家計に効いてきます。

たとえばSBI新生銀行は、事務手数料が借入金額×2.20%(税込)の定率型である一方、保証料は原則0円、一部繰上返済手数料も0円、一般団信の上乗せもなしと、費用の内訳が把握しやすいのが特徴です(同行公式サイトの手数料・諸費用ページで確認できます)。店頭での相談とオンライン手続きの両方に対応しているので、事情が込み入っていて誰かに相談しながら進めたい方にも向いています。もちろん他行も含めて、条件を並べて比べたうえで選ぶのが大前提です。適用金利や条件は改定されるため、最新の内容は各金融機関の公式サイトでご確認ください。

よくある質問

Q. 離婚して家を出れば、連帯保証人からも外れられますか?
A. 外れられません。連帯保証は金融機関との契約なので、離婚という夫婦間の事情では解消されないためです。外すには金融機関の承諾が必要で、実務上は借り換えや、代わりとなる保証人・担保を用意するといった対応が求められます。

Q. 「住み続ける側が全額返す」と離婚協議書に書けば安心ですか?
A. 夫婦の間ではその約束が有効ですが、銀行に対しては効きません。相手が滞納すれば、連帯債務者・連帯保証人には請求が来ます。だからこそ、書面で分担を決めることと、金融機関の手続き(借り換え等)は「両方」必要になります。

Q. 財産分与で家をもらうと、税金はかかりますか?
A. 財産分与による取得は原則として贈与税の対象になりませんが、分与した側に譲渡所得税がかかる場合や、名義変更の登録免許税・不動産取得税が問題になる場合があります。金額や事情によって扱いが変わるため、税務署や税理士に個別に確認してください。

Q. 住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)はどうなりますか?
A. 控除は「その住宅に住んでいる本人」が要件です。家を出た側は原則として使えなくなり、持分やローンの状態によっても変わります。確定申告の前に、国税庁の案内や税務署で自分のケースを確認しておきましょう。

Q. 相手と連絡が取れず、話し合いになりません。
A. 家庭裁判所の調停という手続きがあります。共有名義の不動産であれば共有物分割請求という道もあります。感情的な対立が激しいほど、早い段階で弁護士など第三者に入ってもらったほうが、結果的に費用も時間も抑えられることが多いです。

まとめ

今回は、数ある事例のなかから一部をご紹介しました。離婚するとお金や権利の関係が一気に複雑になり、面倒に感じるあまり主張すべきことをしないまま終わらせてしまったり、必要以上の負担を背負ってしまったりする方がいらっしゃいます。

ポイントを改めて整理すると、次の3つです。

  1. 名義とローンは別物。ローンの契約者・連帯保証人は、金融機関の承諾なしには変えられない。
  2. お金を出したら、その割合で持分を登記しておく。共有にしておけば、いざというとき権利を主張できる。
  3. 決めたことは書面に残す。そのうえで、借り換えなど金融機関の手続きもセットで進める。

ですから、少々お金がかかってもプロの方に相談して、再出発に備えるほうが良いのです。離婚に備えるというわけではありませんが、どんなときでも不測の事態は起こり得るのだということを認識して購入するようにしましょう。無理のない借入額にしておくことが、結局はいちばんの備えになります。

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