- 公開日: 2026.07.19
- 住宅購入の基礎知識
住宅が自然災害で被災したら?雑損控除と災害減免法をやさしく解説

地震や台風、豪雨による洪水・土砂災害など、日本では毎年のようにどこかで大きな自然災害が発生しています。もしお住まいの住宅が自然災害で損害を受けてしまった場合、火災保険や地震保険で備える方法もありますが、あわせて確認しておきたいこととして確定申告を行うことで「雑損控除」や「災害減免法」の適用が可能になります。
今回は、住宅が自然災害で損害を受けた場合に適用できる「雑損控除」と「災害減免法」について、初めての方にもわかりやすく解説します。
住宅に損害が発生した場合は確定申告を行えば減税が受けられる
自然災害で住宅に損害が発生した場合、確定申告を行うことで、その年の所得税について損害額に応じて税金の負担を軽くすることができます。
自然災害などの損害が発生した場合に利用できる制度は、冒頭でも触れたとおり「雑損控除」と「災害減免法」の2つです。どちらか一方を選んで適用します(併用はできません)。
普段は確定申告をしていない会社員の方でも、災害で住宅や家財に損害が出たときは、確定申告をすることで支払うべき税金を減らせます。税金面の負担が軽くなれば、その分を住まいの再建に充てることもできます。
すでに住宅をお持ちの方はもちろん、これから住宅の購入を検討している方も、いざというときに慌てないよう、仕組みを知っておきたいものです。
雑損控除は所得から一定額を控除できる

雑損控除は、自然災害や盗難、横領などによってご自身の資産(生活に通常必要な住宅や家財など)に損害が発生した場合に、1年間の所得から損害額に応じた一定額を控除して、支払うべき税金を軽減できる制度です。
雑損控除が適用できる損害の原因は、震災や風水害、冷害、雪害、落雷などの自然災害、火災や爆発、害虫などによる異常な被害、盗難、横領です。そのため、自然災害での損害はもちろん、「住宅に泥棒が入って物を盗まれた」「料理中に火事になってしまった」という場合にも適用できます。
ただし、すべての損害が対象になるわけではありません。詐欺や恐喝によって発生した損害は、雑損控除の対象外とされています(国税庁タックスアンサーNo.1110)。
控除額は次の2つの計算式のうち、いずれか多い方が適用されます。「差引損失額」とは、損害金額に災害関連支出(住宅の取壊しや撤去などのやむを得ない支出)を加え、保険金などで補てんされる金額を差し引いた額のことです。
(1)差引損失額-総所得金額等×10%
(2)差引損失額のうち災害関連支出の金額-5万円
また、雑損控除はその年の所得から控除しきれなかった場合、翌年以後最長3年間にわたり繰越が可能です。さらに、2023年(令和5年)4月1日以後に発生した「特定非常災害」に指定された大規模災害による損失は、繰越期間が最長5年間に延長されています(東日本大震災による損失も5年間です)。
住宅や家財の損害額が時価の50%以上の場合は災害減免法を適用

災害減免法は、災害による住宅や家財の損害額(保険金などで補てんされる金額を除く)が時価の50%以上の場合に、被害にあった方の所得水準に応じて、その年の所得税の全額もしくは一定割合が軽減・免除される制度です。
災害にあった年の所得金額の合計額が1,000万円以下であること、そしてその損失について雑損控除の適用を受けないことが条件となっており、軽減・免除される額は以下のとおりです。
(1)年間所得が500万円以下は全額免除
(2)年間所得が500万円超750万円以下は所得税の2分の1が軽減
(3)年間所得が750万円超1,000万円以下は所得税の4分の1が軽減
ここでいう所得とは、給与所得や事業所得のほか、山林所得、雑所得、譲渡所得、配当所得などすべての所得を合計した金額です。なお、災害減免法で軽減されるのは所得税で、住民税については各市区町村が条例で定める減免制度を別途確認してください。
損害額を計算しどちらか有利な方を選択して確定申告を行う
雑損控除を適用するか災害減免法を適用するかは、どちらか有利な方を選択することができます。いずれにしても、まずは損害額を算出する必要があります。
住宅の損害額は、購入時の価格ではなく、損害が発生する直前の時価をもとに計算します。時価は取得額から経年劣化による減価分を差し引いて求めます。また、災害により破損したものを撤去するなど、復旧に関連した支出も損失額に含めることができます。計算が難しい場合は、国税庁が「損失額の合理的な計算方法」(取得価額や被災前の時価をもとにした簡便な計算方法)を案内しているので、税務署に相談しながら進めると安心です。
2つの制度の主な違いを表にまとめると、次のようになります。
| 比較の観点 | 雑損控除 | 災害減免法 |
|---|---|---|
| 対象となる損害 | 災害・盗難・横領(詐欺・恐喝は対象外) | 災害のみ |
| 所得の制限 | なし | 合計1,000万円以下 |
| 損害額の要件 | なし(計算式で控除額を算出) | 住宅・家財の時価の50%以上 |
| 軽減のしかた | 所得控除(損害額に応じて所得から差し引く) | 所得税を全額〜4分の1軽減・免除 |
| 翌年以降への繰越 | 最長3年(特定非常災害は最長5年) | 繰越なし(その年限り) |
どちらが良いかはその方の所得や損害の大きさによって異なるため一概には言えませんが、損害額が大きく1年で控除しきれない場合は、最長3年間(特定非常災害は5年間)繰り越せる雑損控除が有利となるケースが多いです。一方、所得が500万円以下で損害が時価の半分以上に及ぶ場合は、その年の所得税が全額免除される災害減免法が有利になることもあります。迷った場合は、最寄りの税務署に相談することをおすすめします。
また、注意点として、火災保険や地震保険で損害額の一部が補償された場合は、その分を差し引いた額が適用対象になります。損害のすべてを保険でまかなえた場合は、雑損控除・災害減免法のいずれも適用できません。
よくある質問(FAQ)
Q. 会社員で年末調整を受けていますが、雑損控除は自動で反映されますか?
A. 反映されません。雑損控除も災害減免法も、年末調整では適用されず、ご自身で確定申告を行う必要があります。申告を忘れていた場合でも、還付申告は対象の年の翌年1月1日から5年間さかのぼって行えます。
Q. 住宅ローンの返済中に被災した場合、住宅ローン控除と雑損控除は同じ年に使えますか?
A. 両方の要件を満たしていれば、同じ年に適用することができます。雑損控除は所得から差し引く「所得控除」、住宅ローン控除は税額から差し引く「税額控除」と仕組みが異なります。なお、損害額はローン残高ではなく住宅の時価をもとに計算します。具体的な組み合わせの有利・不利は所得や損害額によって変わるため、税務署に確認すると確実です。
Q. 申告にはどのような書類が必要ですか?
A. 確定申告書のほか、災害関連支出(取壊し・撤去・修繕など)の領収書、保険金などで補てんされた金額がわかる書類が必要です。市区町村が発行する罹災証明書は、被害の事実や程度を示す書類として取得しておくと手続きがスムーズです。被災直後に住宅や家財の被害状況を写真に残しておくことも大切です。
※本記事の内容は2026年7月時点の情報です。制度の詳細や最新の取り扱いは、国税庁ホームページや最寄りの税務署でご確認ください。

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