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単身者向け賃貸併用住宅に向いた立地とは?5つの見極め方

前回の記事では、ファミリー向けの賃貸併用住宅を建てるための立地のポイントを紹介しました。賃貸併用住宅はファミリー向けだけでなく、単身者向けに部屋を貸し出すこともできます。 ファミリー向けと比べると、限られた土地と建物であっても、各部屋を狭くして部屋数を多くできるため、より多くの入居者を受け入れられるのが特徴です。ただし単身者向けは入居期間が短くなりやすいぶん、「次の入居者がすぐ決まる場所かどうか」=立地の善し悪しが、そのまま家賃収入の安定につながります。 今回は、単身者向けの賃貸併用住宅を建てるのに向いた立地を、押さえるべき順番に沿って整理します。数字で確かめる方法や、そのまま使えるチェックリストも後半にご用意しました。

単身者向けの賃貸併用住宅

単身者向けの賃貸併用住宅は、仕事や学業のために単身で近隣へ通勤・通学している方を対象に部屋を貸し出します。ファミリー向けと比較して、部屋を狭くして供給できる部屋数を多くできるため、限られた建物や土地のスペースを有効に活用できるメリットがあります。また、同じ広さでも多くの入居者を受け入れられるため、家賃収入を多く得られる可能性も高まります。 ただし、ファミリー向けの賃貸併用住宅と比べると、転勤や卒業、結婚といったライフステージの変化によって入居期間が短めになり、場合によっては家賃収入が不安定になることも考えられます。裏を返せば、退去が起きても次の入居者をすぐ確保できる立地であれば、この弱点はかなり打ち消せるということです。今回解説する立地のポイントは、まさにそのための見極め方です。 なお、賃貸併用住宅は「自宅」と「賃貸住宅」がひとつの建物に同居する形なので、入居者にとって住みやすい場所であると同時に、自分たち家族にとっても暮らしやすい場所である必要があります。この二つを両立させる、というのが単純な賃貸アパートの土地探しとは違うところです。

生活する上で利便性が高いこと

単身者向けの賃貸併用住宅を建てる立地のポイントとして一番にあげられるのは、生活する上での利便性が高いことです。 多くの単身者は、日中は仕事や学業で部屋を空けています。極端にいえば、帰って寝るための場所として部屋を借りている状態に近く、家事に長い時間はかけられません。そのため、限られた時間で日用品や食品を近場で素早く調達できる環境にあることが望まれます。 具体的には、近隣にスーパーマーケット、コンビニエンスストア、ドラッグストアなどの小売店が複数あることがポイントです。加えて、郵便局や金融機関、役所の窓口といった公共施設がそろっていると、休日にまとめて用事を済ませられるため評価が高まります。 もう一段細かく見るなら、営業時間まで確認しておきたいところです。単身の会社員は帰宅が遅くなりがちなので、21時や22時まで開いているスーパーが1軒あるかどうかで、住みやすさの体感はかなり変わります。逆に、日中しか開いていない商店だけの地域では「近くに店はあるのに使えない」ということになりかねません。

近くに企業や大学が複数あること

単身者は、働いている職場や学校の近くに住まいを探す傾向にあります。そのため、近隣に企業の事業所・工場・研究所が複数立地していること、30分以内に通勤できること、複数の大学へ通学できることが望ましいといえます。 規模の大きな企業がある場合、その社員だけでなく取引先や協力会社の社員も周辺に通うことが考えられるため、まとまった賃貸需要が見込めます。 ただし、必ず確認しておきたいのは1つの企業や学校だけに依存していないかという点です。企業が撤退したり、リーマン・ショックのような大きな景気後退で人員を減らしたりすれば、賃貸需要は一気に細ります。大学のキャンパス移転や学部の統廃合も、単身者向け賃貸には大きな影響があります。 そのため、1つの企業や大学だけではなく、複数の企業や大学が立地している場所を選ぶことが重要です。さらに言えば、業種が偏っていないほうが安心です。製造業だけ、大学だけ、というエリアより、事業所・病院・学校などが混ざっているエリアのほうが、ひとつの変化で需要が消えにくくなります。 移転や新設の予定は、自治体の情報から拾えます。市区町村が公表している都市計画や、企業誘致・区画整理に関する資料には、これから何が建つのかというヒントが載っていることがあります。土地を決める前に、一度は目を通しておきましょう。

都心へのアクセスなど交通へのアクセスの利便性が高いこと

交通の利便性が高い場所も、単身者の入居需要が高いエリアといえます。単身者はファミリー層と異なり自家用車を持たない方も多いため、出かける際は公共交通機関を使うことが多くなるからです。 また、通勤者が多い都心や、大学が立地している場所へ乗り換えなしでアクセスできる鉄道路線沿いであれば、多くの単身者の希望に応えられます。 同じ「駅近」でも、普通電車しか止まらない駅と、急行・快速・特急が止まる駅とでは賃貸需要が大きく異なります。優等列車が停まる駅の近くであれば、交通アクセスが良いだけでなく、駅周辺に商業施設が集まる傾向があるため、生活の利便性も同時に確保できます。 一方で、駅からの距離は「地図上の直線」ではなく「実際に歩いた時間」で測ってください。踏切、大きな交差点、急な坂、街灯の少ない道があると、表示上は徒歩8分でも体感はもっと遠くなります。夜に一度歩いてみると、女性の入居者が安心できる道かどうかも含めて判断できます。 バス便しかないエリアは、単身者向けでは不利になりやすいのが実情です。どうしてもバス便になる場合は、朝夕の本数と最終便の時刻を確認し、それでも通える職場・学校が近くにあるかを慎重に見ましょう。

繁華街に近すぎず静かな場所であること

生活と交通の利便性を突き詰めると、活気のある繁華街の近くという結論になりがちですが、実際には利便性は確保しつつ、繁華街から少し離れた静かな場所を選ぶのがおすすめです。 繁華街は騒音が大きく、落ち着いて生活しづらいことがあります。人の出入りが多いため防犯面の不安もあり、あまりに繁華街の中心に賃貸住宅を供給すると、かえって入居者から敬遠されてしまうことにもつながります。 そのため、繁華街から少し離れつつも、徒歩で行ける範囲にある一般住宅や集合住宅が多い場所を選ぶとよいでしょう。賃貸併用住宅の場合はご自身も同じ建物に住むことになりますから、この「静かさ」は自分たちの暮らしの質にも直結します。 あわせて、隣接する土地の使われ方も確認しておきたいところです。すぐ隣が資材置き場や工場、大型の駐車場だと、将来そこに何が建つか分かりません。用途地域(その土地にどんな建物を建ててよいかの区分)を自治体の窓口やウェブサイトで調べておくと、周辺の将来像をある程度読むことができます。

感覚ではなく「数字」で立地を確かめる

ここまでの5つは、いわば「現地を歩いて感じ取る」視点です。加えて、公表されている統計で裏付けを取っておくと、思い込みによる判断ミスを減らせます。
1978年から2023年までの全国の空き家率の推移を示した折れ線グラフ
2023年の空き家率13.8%は過去最高。空き家900万2千戸のうち443万6千戸(49.3%)が「賃貸用の空き家」です。
まず知っておきたいのが空き家の状況です。総務省の令和5年住宅・土地統計調査(2023年10月1日現在)によると、全国の空き家数は900万2千戸、空き家率は13.8%でいずれも過去最多・過去最高となりました。しかも、空き家900万2千戸のうち443万6千戸(49.3%)は「賃貸用の空き家」で、共同住宅の空き家に限れば78.5%が賃貸用です。つまり、「借り手が見つからないまま空いている賃貸住宅」は全国にたくさんあるということです。 同じ調査では都道府県別の空き家率も公表されており、たとえば東京都は10.9%、埼玉県は9.3%、沖縄県は9.4%と低い一方で、和歌山県21.2%、徳島県21.3%、高知県20.3%、鹿児島県20.5%、山梨県20.4%などは20%を超えています。もちろん県単位の数字だけで判断はできませんが、市区町村単位の数値まで公表されているので、検討中のエリアの数字は必ず確認しておきましょう。 次に見たいのが家賃の相場観です。同調査によると、借家(専用住宅)の1か月当たり家賃は全国平均で59,656円、2018年と比べて7.1%の増加でした。種類別では民営借家(木造)が54,409円、民営借家(非木造)が68,548円です。単身者向けの部屋はこれより狭いぶん家賃も下がりますので、近隣の同じ広さ・築年数の募集家賃を実際に調べて、そこから逆算して事業計画を立てるのが確実です。 そのうえで確認したいのが、人の増減です。市区町村の人口・世帯数の推移や、住民基本台帳の転入・転出のデータは自治体が公表しています。人口が減っていても単身世帯だけは増えている地域もあるため、「総人口」ではなく「単身世帯の数」がどう動いているかを見るのがポイントです。

そのまま使える立地チェックリスト

土地の候補が挙がったら、次の観点を1つずつ確認してみてください。すべてを満たす土地はまずありませんので、「どれを優先するか」を先に決めておくのがコツです。
確認する観点見るポイント備考
生活の利便性徒歩圏のスーパー・コンビニ・ドラッグストアの数と営業時間夜まで開いている店が1軒あるかが効く
需要のもと(勤務先・学校)近隣の事業所・大学が複数あるか、業種が偏っていないか1社依存・1校依存はリスク
交通アクセス最寄り駅の種別(優等列車が停まるか)、実際に歩いた時間夜間に一度歩いて確認する
周辺環境繁華街との距離、騒音、街灯、用途地域自分たちも住む点を忘れない
空き家の状況市区町村単位の空き家率・賃貸用の空き家の多さ令和5年住宅・土地統計調査で確認できる
家賃相場同じ広さ・築年数の募集家賃、募集期間の長さ長く募集が出ている=埋まりにくい兆候
人の増減単身世帯数の推移、転入・転出の傾向総人口だけで判断しない
競合の状況周辺で建設中・計画中の賃貸物件数年後に供給が増える可能性

立地の見立てを誤ると何が起きるか

賃貸併用住宅は、賃貸部分の家賃収入を返済の一部に充てる計画を立てることが多いため、入居が想定どおりに埋まらないと、家計の負担がそのまま重くなります。 たとえば、家賃収入を毎月見込んで資金計画を立てていた場合、空室が続けば、その分をご自身の給与から補うことになります。さらに、埋めるために家賃を下げれば収入は恒久的に減り、募集条件を緩めれば入居者の質にも影響します。 そして、建物は建ててしまうと立地を変えられません。間取りや設備は後から手直しできますが、駅からの距離や周辺環境はどうにもなりません。だからこそ、土地を決める前に時間をかける価値があるのです。 不安な場合は、複数の不動産会社・建築会社に賃貸需要の見立てを聞き、その根拠まで確認することをおすすめします。「このあたりは需要があります」で終わらせず、近隣の空室率や募集期間といった具体的な数字を示してもらいましょう。あわせて、空室が2〜3室続いた場合でも家計が回るかを必ず試算しておいてください。

立地選びでよくある質問

Q. 駅からの距離は、単身者向けだと何分までが目安ですか? A. 一律の正解はありませんが、単身者は車を持たない方が多いため、ファミリー向けより駅距離の影響を強く受けます。気になるエリアで実際に募集されている単身者向け物件が、駅から何分の範囲に集中しているかを調べると、その地域の目安が見えてきます。 Q. すでに持っている土地で建てたいのですが、立地が良くありません。 A. 立地が弱いなら、単身者向けにこだわらないという選択もあります。ファミリー向けにして入居期間の長さで安定を取る、賃貸部分を小さくして自宅中心の計画にする、といった調整が可能です。土地に計画を合わせるという発想に切り替えてみてください。 Q. 大学の近くなら安心でしょうか? A. 学生需要は分かりやすい反面、3月の卒業でまとめて退去が発生するという季節性があります。また、キャンパス移転が起きると需要そのものが消えます。学生だけに頼らず、社会人の需要も重なるエリアかどうかを確認しておくと安心です。 Q. 自宅部分と賃貸部分の玄関や動線は、立地選びに関係しますか? A. 関係します。単身者向けは入退去の頻度が高く、人の出入りも多くなります。敷地の形や道路との接し方によっては、自宅と賃貸の入口を離しにくいことがあり、それが入居者にも自分たちにもストレスになります。土地を見る段階で、大まかな配置まで想像しておきましょう。 Q. 郊外でも成り立つケースはありますか? A. あります。工場や病院、大規模な事業所が近くにあり、そこで働く単身者の受け皿が不足している地域では、駅から離れていても入居が安定することがあります。ただしその1か所に依存する形になるため、勤務先の動向は継続的に見ておく必要があります。

まとめ:土地を決める前にしかできないことがある

単身者向けの賃貸併用住宅で立地を選ぶときの軸は、生活の利便性・複数の需要源・交通アクセス・繁華街から少し離れた静けさの4つです。そのうえで、空き家率や家賃相場、単身世帯数の推移といった公表データで裏付けを取ると、判断の確度が上がります。 賃貸併用住宅は、家賃収入という心強い味方がある一方で、その収入が前提になっている分だけ立地の失敗が響きます。間取りや設備は建ててから直せますが、立地だけは後から変えられません。 気になる土地が見つかったら、平日の朝と夜、そして休日に一度ずつ歩いてみてください。時間帯によって、街の顔はまったく違って見えます。焦らず、納得できるまで確かめてから前に進みましょう。統計や制度は更新されますので、最新の数値は総務省統計局など公的機関の公式サイトでご確認ください。

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