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不動産価格が高い理由と相場の調べ方|売り手側の目線で見る

同じような条件にも関わらず、販売価格が数百万円も違うことに関連して、前回は販売価格がどのようにして決められているかについて説明しました。

その事を踏まえ、大きな価格差がなぜ生じるのか、あきらかに高い価格の理由はどうしてなのか、詳しく説明していきます。

売主の事情 ①物件に対する思い入れ

長く住んでいた家には、誰しも特別な思い入れがあるものです。

一念発起して手に入れたマイホーム、両親が苦労して建てた家、先祖代々受け継いできた土地など、お金では換算できないほどの思いが込められていて、「自分の物件は特別」という見方をされる方も少なくありません。

そんな売主の心情からすれば、安売りはしたくない、できるだけ高く買って欲しいと思うのは、自然の考え方でしょう。

あきらかに高い価格で売り出されている物件には、こうした事情を含んでいる場合も考えられます。

思い入れは価格の根拠にはなりませんが、交渉のしかたには影響します。「この家のどこが気に入ったか」を素直に伝えると、売主の気持ちがほぐれて話が進みやすくなることもあります。値引きの数字だけをぶつけるより、案外こちらのほうが近道だったりするのです。

売主の事情 ②資金面

不動産の相場というのは、売主と買主の利害が一致する価格帯と言えます。そのため、特別な事情を除くと、売買はほぼ相場で決まっています。

にも関わらず、あきらかに高い価格で売りに出される理由に、売主側の資金事情が挙げられます。

主なケースでは、売主が購入した時にオーバーローンを組んでしまい、残債が支払うために、相場を上回る金額で売りに出さざるを得なかったり、買い換えるために必要な頭金を確保しようと、高く売り出す場合などがあります。

【用語ミニ解説】

  • 残債…住宅ローンのまだ返し終わっていない残高のこと。家を売るときは、原則としてこの残債を完済して抵当権を抹消しないと引き渡せません。
  • オーバーローン…売却価格よりも残債のほうが多い状態。売っても借金が残るため、売主は「これ以上は下げられない」という下限を抱えることになります。

つまり、売主が値下げに応じないのは強気だからとは限らず、物理的に下げられない事情があるケースが混ざっているということです。買主から見れば、いくら粘っても動かない物件と、時間が経てば動く物件があるわけで、その見極めが交渉の成否を分けます。

不動産会社の意向

高く売り出されている物件の中には、不動産会社の意向が働いている場合もあります。不動産会社は、自社で売主から売却の依頼を受けると、成約した時に売主からの仲介手数料が確実に見込めます。

さらに、買主を見つけることができれば、そちらからも手数料が見込めることになり、手数料報酬が2倍になります。

そして当然、他の業者も同じことを考えますから、相場通りの査定をしていては、より高く提示した業者が選ばれることになる訳です。

そのため、まずは依頼を獲得しようと、高い価格を提示することになるのです。

ただし、ここには歯止めもかかっています。宅地建物取引業法第34条の2第2項は、媒介契約で売買すべき価額や評価額について意見を述べるときは、その根拠を明らかにしなければならないと定めています。査定額は「なんとなくの希望」ではなく、根拠を示すべきものだということです。売主の立場に立つ日が来たら、提示された金額の理由をきちんと聞いてください。

また、依頼を受けた業者が物件を他社に紹介せず抱え込む、いわゆる「囲い込み」への対策も進んでいます。国土交通省は令和6年6月に宅地建物取引業法施行規則を改正し、2025年(令和7年)1月1日から、宅地建物取引業者にレインズ(指定流通機構)への物件の取引状況の登録を義務づけました。あわせてレインズが機能強化され、売主が自分の物件の取引状況を「売主専用画面」で確認できるようになっています。

なお専任媒介契約の有効期間は3か月を超えることができず、業者には業務の処理状況を専任媒介なら2週間に1回以上、専属専任媒介なら1週間に1回以上報告する義務があります(宅地建物取引業法第34条の2)。ルールを知っているだけで、任せきりにならずに済みます。

「売り出し価格」と「成約価格」は別のものです

ここが、この記事でいちばんお伝えしたい点です。ニュースなどで見かけるマンション価格の数字には、売主が「この値段で売りたい」と出した希望価格と、実際に売買が成立した成約価格の2種類があり、両者は一致しません。

たとえば東京カンテイが公表している中古マンションの70㎡換算価格は、同社のデータベースに登録された売り希望価格をもとに集計したものです。2026年7月分では首都圏(1都3県)の平均が7,547万円で前月比+1.2%、一方で都心部は3か月連続のマイナスとなっており、報道によれば東京23区は2か月連続の下落となりました(2026年8月24日公表)。

同じ月・同じエリアでも、都心と周辺で逆方向に動いていることがわかります。「マンションが値上がりしている」「下がり始めた」という一言でくくれるものではありません。

そして繰り返しになりますが、これらは売り出しの希望価格であって、そこで売れた価格ではありません。高く出しても売れなければ、いずれ値を下げることになります。前の章で見たとおり、その高さの理由は思い入れだったり、残債だったり、業者の受注競争だったりするわけです。

相場は、買主が自分でも確かめられます

以前は「不動産会社に出向いて過去の成約事例を検索してもらう」しか手がありませんでした。いまは買主が自分で調べられる公的な仕組みがあります。

比較の観点 見るポイント 備考
実際に取引された価格 国土交通省「不動産情報ライブラリ」 2024年4月1日運用開始。取引当事者へのアンケートにもとづく取引価格情報を公開(2025年3月31日時点で約547万件)
売り出しの希望価格 不動産ポータルサイトの掲載価格、民間調査会社の月次データ 成約価格ではない。同じエリア・同じ広さで比べる
自分の物件の取引状況(売主の立場のとき) レインズの「売主専用画面」 2025年1月から。二次元コードでアクセスでき、囲い込みの防止につながる
不動産会社の査定額 その金額にした根拠を必ず説明してもらう 宅地建物取引業法第34条の2第2項で根拠の明示が義務づけられている

※2026年8月時点で確認した内容です。各サイトの提供内容は変更されることがあります。

不動産情報ライブラリでは、所在地・取引時期・取引価格のほか、土地の面積や形状、建物の用途・構造・床面積、建築年、前面道路、最寄駅、用途地域、建ぺい率、容積率といった情報を見ることができます。希望する物件に近い条件で検索すれば、売り出し価格との差がひと目で分かります。あとは、その事例を持って交渉に臨むだけです。

もちろん、不動産会社に成約事例を出してもらう方法も引き続き有効です。自分で調べた数字を手元に持ったうえで説明を聞くと、話の精度がぐっと上がります。

価格交渉に入る前に、気をつけたいこと

Q. 高すぎる物件は、待っていれば必ず下がりますか?

多くの場合は値下げされますが、必ずとは言えません。売主が残債の都合で下げられないケースや、条件のよい物件に別の買主が現れるケースもあります。「下がるまで待つ」だけの作戦は、気に入った物件ほど危ないということです。値下がりを待つのか、いま条件を詰めるのかは、物件ごとに判断しましょう。

Q. 交渉して値引きできれば、それだけ得をしたことになりますか?

購入時の総額は売買代金だけでは決まりません。仲介手数料、登記費用、火災保険料、税金といった諸費用が上乗せされます。値引き交渉と同じくらい、諸費用と住宅ローンの条件を詰めることが効きます。とくに借入額が大きいほど、金利や事務手数料の差は数十万円単位で効いてきます。

Q. 相場より安い物件は、逆に警戒したほうがよいですか?

安いことには理由があります。再建築ができない土地、私道の負担、越境、雨漏りや傾きなど、価格に反映されている事情が隠れていることがあります。安さに飛びつく前に、なぜこの価格なのかを説明してもらうのが鉄則です。中古住宅であれば、建物状況調査(インスペクション)の実施状況もあわせて確認しましょう。

まとめ

先に述べたように、普通はほぼ相場で決まっていますので、あきらかに高い物件は、いずれ価格を下げることになります。その下がった時を狙って問い合わせ、もし気に入ったらそこから価格交渉をしてみるのです。

ここでひとつ、有効なテクニックを伝授します。不動産会社に出向き、希望する物件に近い条件で、過去の成約事例を検索してもらうのです。

そこには実際に成約した価格が明記されていますので、売り出されている物件との価格差がひと目で分かってしまいます。
あとは、事例を盾にして交渉するのみです。

そして現在は、国土交通省の「不動産情報ライブラリ」で、あなた自身が取引価格を調べることもできます。売主にも不動産会社にもそれぞれの事情があるのは当然のこと。だからこそ、買主は感情ではなくデータで判断する——これが、数百万円の価格差に振り回されないための、いちばん確実な備えです。

物件の目星がついたら、次は住宅ローンです。借入額や金利タイプによって、毎月の負担も総支払額も変わります。SBI新生銀行のように保証料と一部繰上返済手数料が0円で、一般団信の上乗せ金利もかからない銀行なら、購入にかかる総額を早い段階で見積もりやすくなります。物件価格の交渉と並行して、資金計画にも目を向けておきましょう。

※本記事は2026年8月時点で確認した公的資料・公表データにもとづいています。市況や制度は変わりますので、最新の情報は各公式サイトでご確認ください。

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