- 公開日: 2026.09.20
- 住宅ローンQ&A
不動産会社を通さず売り主から直接購入できる?仕組みと注意点を解説

売り主から直接、物件を買うこと自体は法律で禁止されていません。売り主と買い主が合意すれば売買契約は成立します。ただし、契約前に必要な重要事項説明は宅地建物取引士にしかできず、住宅ローンの審査に出す書類もそろいにくくなるため、はじめての住宅購入で個人間売買を選ぶのは現実的にはかなり難しいのが実情です。
いっぽうで「仲介手数料がかからない買い方」は別の形で存在します。売り主が不動産会社の売主物件を買う場合です。まずは仲介手数料の仕組みを押さえてから、直接取引のメリットと落とし穴を順に見ていきましょう。手数料の基本は仲介手数料について解説した記事でもくわしく紹介しています。
そもそも仲介手数料はいくらかかる?
「直接買えば節約できるのでは」と考える前に、まず金額の相場を知っておきましょう。仲介手数料には法律で上限が決められていて、不動産会社が自由に決められるわけではありません。
売買価格が400万円を超える場合の上限は、売買価格×3%+6万円(これに消費税)です。たとえば3,000万円の物件なら、上限は96万円+消費税=105万6,000円(税込)になります。
さらに2024年(令和6年)7月1日からは、価格800万円以下の「低廉な空家等」について、現地調査などの費用を勘案して30万円×1.1=33万円(税込)まで受け取れる特例が設けられました。以前は400万円以下が対象だったので、対象が広がったかたちです。
この特例を使う場合、不動産会社は媒介契約を結ぶ前にあらかじめ金額を説明し、依頼者の合意を得ることが求められています(国土交通省「宅地建物取引業法関係」)。安い物件ほど「3%+6万円」より高い手数料になることがある、と覚えておくと驚かずに済みます。
不動産会社を通さない購入は「可能」だが一般の人には難しい
あらためて整理すると、物件の購入そのものに必ずしも不動産会社を通す必要はありません。法律上、売り主と買い主が直接売買すること自体は禁止されていないからです。
ただし不動産の購入は高額な取引です。さまざまな重要事項の確認、所有権移転の手続き、住宅ローンの契約手続きなど、専門的な知識がないと進めるのが難しい場面が数多くあります。
さらに、法務局・金融機関などいろいろな機関と連携して手続きを進める必要があり、専門知識・交渉スキル・まとまった時間も求められます。購入自体は不動産会社を通さなくても行えますが、一般の方がこれらをすべて自分で行うのは、現実的にはかなり困難だといえます。
重要事項説明は「宅地建物取引士」しかできない

不動産会社を通さない売買も一応はできますが、不動産会社(とその有資格者)にしかできない手続きがあるため、多くの場合は不動産会社を通すのが一般的です。
その代表が「重要事項説明」です。物件の権利関係や契約条件などをまとめた重要事項説明書をもとに、契約前に買い主へ説明する手続きで、これを行えるのは宅地建物取引士(宅建士)に限られます。
かつては「宅地建物取引主任者」と呼ばれていましたが、宅地建物取引業法の改正により2015年4月から「宅地建物取引士」に名称変更されています。重要事項説明は、買い主が思わぬ欠陥や不利益を負わないための大切な手続きで、これを省いて売買するのは大きなリスクがあります。
所有権移転などの手続きをプロに任せられる
不動産会社を通すもう一つの理由は、所有権移転登記をはじめとする各種手続きを、プロの力を借りて進められることです。
不動産の売買は、スーパーで野菜を買うのとは違い、金額が高額なうえに手続きも多岐にわたります。一般の方がこうした手続きを行う機会はめったにありません。
進めるうちに分からないことが次々に出てきたり、何らかの理由で手続きが止まってしまうといったトラブルも起こりがちです。不慣れな手続きを専門家に任せられることで、スムーズに、そして安心して購入を進められます。
プロの力を借りた価格交渉ができる

不動産の売買は、売り主と買い主の条件が一致しなければ成立しません。売り主はできるだけ高く売りたい、買い主はできるだけ安く買いたいと考えるのが普通です。
このとき、当事者同士が直接やり取りして条件をまとめるのは、なかなか難しいものです。不動産会社を間に入れることで、第三者の立場からの売買交渉ができるようになります。お互いが納得できる条件で取引するためにも、不動産会社を通したほうがまとまりやすいといえます。
住宅ローンを使うなら「個人間売買」はとくに慎重に
ここが、はじめて家を買う方にとっていちばんの分かれ道になります。住宅ローンを使う前提なら、個人間売買はハードルが一段高くなるのです。
理由はシンプルで、金融機関が審査で求める書類がそろいにくいからです。売買契約書、重要事項説明書、物件の図面や登記関係の資料——これらは通常、仲介する不動産会社が整えます。
金融機関によっては、個人間売買そのものを取り扱っていないこともあります。「手数料を浮かせたのに、肝心のローンが組めなかった」では本末転倒です。個人間での購入を考えるなら、物件を決める前に、借りる予定の金融機関へ取り扱いの可否を確認しておきましょう。
土地を先に買って家を建てる場合など、資金の出るタイミングがずれるケースについては土地を住宅ローンで購入できる?つなぎ融資と注意点もあわせて読んでみてください。
手数料が不要になるのは「売主物件」を買うとき
「仲介手数料を払わずに買いたい」という目的だけなら、個人間売買より現実的な方法があります。それが売主物件を買うことです。
売主物件とは、その物件を所有している不動産会社から直接買う形のこと。新築の建売住宅や新築マンション、不動産会社が買い取って再販している中古物件などが代表例です。
この場合、間に入って「仲介」する会社がいないため、そもそも仲介手数料が発生しません。それでいて売主は宅地建物取引業者なので、重要事項説明もきちんと受けられます。
物件広告の「取引態様」という欄を見ると、売主/代理/媒介(仲介)のどれかが書かれています。「売主」または「代理」なら仲介手数料はかからないのが原則です。まずはここをチェックする習慣をつけましょう。
親族同士なら不動産会社を通さないケースもある
一方で、親族の土地や建物の一部を譲り受けるようなケースでは、不動産会社を通さずに取引することもあります。この場合は、契約書などの法的な書類は弁護士や司法書士に依頼し、売買の話し合いは親族同士で進める、という形が多いようです。
ただし、親族間の取引でも「身内だから」と曖昧なまま進めてしまうと、後から条件のくい違いで争いに発展することがあります。
さらに、相場より極端に安い価格で売買すると贈与とみなされて贈与税の対象になることもあるため、弁護士・司法書士・税理士などの専門家を間に入れて進めるのが安心です。
安心して取引するなら不動産会社を通すのが望ましい
不動産の売買そのものは不動産会社を通さなくてもできますが、相手が親族などよく知っている人でない場合は、不動産会社を通じて取引したほうが望ましいでしょう。
重要事項説明はもちろん、売り手と買い手の間に立った中立的な交渉、複雑な手続きのサポートまで考えると、一般の方が直接取引を行うのはやはりハードルが高いといえます。
互いが公正に取引し、「売ってよかった」「買ってよかった」と思える結果を実現するのが不動産会社の役割です。そう考えると、仲介手数料は「安心して取引するための費用」ともいえ、支払う価値は決して小さくないでしょう。
よくある質問(FAQ)
Q. 不動産会社を通さなければ、仲介手数料は本当にかからないのですか?
A. 売り主と直接、仲介を介さずに売買すれば仲介手数料はかかりません。ただし重要事項説明や登記手続きなどを別途専門家に依頼すれば、その費用が別にかかります。手間とリスクも踏まえて、総額で判断しましょう。
Q. 個人間売買でも住宅ローンは借りられますか?
A. 金融機関によっては審査が通りにくかったり、取り扱いがなかったりします。重要事項説明書や売買契約書など、審査に必要な書類がそろわないことが主な理由です。住宅ローンの利用を前提にするなら、物件を決める前に金融機関へ取り扱いの可否を確認してください。
Q. 3,000万円の中古住宅だと仲介手数料はいくらですか?
A. 上限は「3,000万円×3%+6万円=96万円」に消費税を加えた105万6,000円(税込)です。これは上限であって定価ではありません。なお2024年7月1日からは、800万円以下の低廉な空家等について33万円(税込)まで受け取れる特例があります。
Q. 売り主が知り合いでも不動産会社を入れたほうがよいですか?
A. 金額が大きく、後々のトラブルを避けたい取引では、知り合い同士でも専門家を入れたほうが安心です。権利関係の確認・契約書の作成・税金の扱いなど、見落としやすいポイントをプロがチェックしてくれます。
「直接買えば手数料を節約できそう」という発想は自然ですが、不動産取引には専門的な手続きと交渉がつきものです。手数料を抑えたいなら、個人間売買に踏み込む前に取引態様が「売主」の物件を探すほうが、はるかに安全で現実的です。
はじめての住宅購入では、不動産会社というプロの力を借りて、安心して一歩を踏み出すのがおすすめです。仕組みを一つずつ理解しながら、自分に合った進め方を選んでいきましょう。

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