- 公開日: 2026.08.24
- ゼロから学ぶ住宅ローン
収入は同じなのに家計が苦しい理由|住宅ローンと教育費の重なり

住宅ローンの返済額を決めるとき、いちばんの目安にするのは「いま住んでいるアパートの家賃」ではないでしょうか。毎月これだけ払えているのだから、同じくらいなら大丈夫だろう——そう考えるのは、とても自然なことです。
そこに固定資産税や年払いの火災保険料などを足して、マイホームにかかる1年間の総支払額を組み立てていく。一見すると、たしかに合理的な決め方に見えます。
ただ、ここにひとつ見落としやすい点があります。家計の負担は、これから先ずっと同じではないということです。とくに子育て世帯には、収入がほとんど変わらないのに支出だけが一段と重くなる時期が、ほぼ確実にやってきます。この記事では、その時期がいつ・なぜ訪れるのかを整理したうえで、住宅ローンを組む段階でできる備え方をやさしく解説します。

学校教育費・学校給食費・学校外活動費(塾や習い事)の合計。子ども1人あたりの年額です。
小学校の約36万7千円に対して、中学校は約54万2千円。1年あたりで約17万5千円、月あたりにすると約1万5千円ぶんの差があります。子どもが2人いれば、この段差も単純に2倍で効いてきます。高校(全日制)ではさらに増えて約59万7千円です。
「収入は変わっていないのに、中学に上がった途端に苦しくなった」という声が多いのは、気のせいではなく、こうした構造的な段差があるからです。配偶者が働きに出るタイミングとしてこの時期が挙げられることが多いのも、同じ背景といえます。
かつてフラット35では団信の特約料を毎年別に支払う仕組みでしたが、現在は返済金に含まれています。古い情報のまま「団信は年払い」と見積もっていると、内訳の理解がずれてしまうので注意しましょう。
マイホームを買う時期と、子どもの年齢は重なりやすい
マイホームを購入する時期は人それぞれですが、20代後半から40代前半、なかでも30代で購入する方が多い傾向にあります。 このころの家族構成は、未就学児か小学校低・中学年の子どもが1人か2人、というケースが少なくありません。習い事などの出費はあっても、子育て期間全体で見れば教育費がまだ軽い時期です。だからこそ「住宅ローンの返済も、思ったほど重くないな」と感じやすいのです。 ところが、子どもが中学生・高校生になると、支出の景色が変わります。入学時の制服・体操着・教材費に始まり、部活動にかかる費用(これが意外と大きい)、日々の学用品、塾や受験にかかる費用。年齢が上がれば食費やおこづかいも増えていきます。高校ではさらに通学定期代や、進学に向けた費用も重なります。数字で見る「中学からの段差」
感覚の話だけでは実感しづらいので、公的な調査を見てみましょう。文部科学省の「令和5年度 子供の学習費調査」によると、保護者が1年間に支出した子ども1人あたりの学習費総額(授業料などの学校教育費+学校給食費+塾や習い事などの学校外活動費の合計)は、公立でおおよそ次のとおりです。
もうひとつの要因は「物価」
家計が苦しくなる理由は、教育費だけではありません。同じ収入でも、物価が上がれば実際に買えるものは減ります。 総務省の消費者物価指数によると、2026年7月の全国の指数(生鮮食品を除く総合)は前年同月比で1.8%の上昇でした。上がっているものと下がっているものが混在しているため実感には個人差がありますが、「去年と同じ買い物をしているのに、レジの合計だけが増えている」という状態は、多くの家庭で起きています。 住宅ローンの返済額そのものが変わらなくても、食費・光熱費・保険料といった周辺の固定費が上がれば、家計に残る余力は確実に細ります。返済計画を立てるときは、「返済額」だけでなく「返済額以外の生活費が増える可能性」もセットで考えておきたいところです。住まいそのものにかかるお金も、あとから増える
見落とされがちなのが、住まいを維持するための費用です。住宅ローンの返済とは別に、次のようなお金が定期的にかかります。| 費用の種類 | どんなお金か | 見落としがちな点 |
|---|---|---|
| 固定資産税・都市計画税 | 土地・建物にかかる税金。毎年課税されます | 新築住宅の税額を軽くする特例は期間が限られており、期間が終わると税額が上がります |
| 火災保険・地震保険 | 建物と家財を守る保険。多くは複数年分をまとめて支払います | 更新のたびに保険料の水準が見直されるため、次回も同額とは限りません |
| 修繕・メンテナンス費 | 外壁・屋根・給湯器などの手入れや交換(マンションは修繕積立金) | 築10〜15年ごろからまとまった出費が出やすく、ちょうど教育費のピークと重なりがちです |
| 団体信用生命保険(団信) | 返済中に万一があったとき、残りのローンが保険金で清算される保険 | 民間の住宅ローンでは金利に含まれるのが一般的で、別途の支払いはありません。フラット35も2017年10月1日以後の申込分は毎月の返済金に含まれ、年払いは不要です |
返済計画を、子どもの年齢に合わせて設計する
では、どう備えればよいのでしょうか。ポイントは、「一番苦しい時期をあらかじめ決めておき、そこに合わせて計画を組む」ことです。多くの家庭では、子どもが13歳〜19歳、つまり中学入学から大学入学までがその時期にあたります。 具体的には、次のような考え方があります。 1.返済額は「教育費のピーク時にも払える額」で決める いま払える額ではなく、教育費が最も重くなる時期にも無理なく払える額を上限にします。家賃と同額まで借りられる、ではなく、家賃より少し抑える、が安全側の発想です。 2.余力がある時期に繰上返済で残高を減らしておく 子どもが小さいうちは、家計に比較的余裕があります。この時期に一部繰上返済を進めておくと、利息の総額が減るだけでなく、教育費のピーク時に「毎月の返済額を減らす」という選択肢を取りやすくなります。 3.返済額を見直せる仕組みがあるかを、借りる前に確認する 金融機関によっては、ライフイベントに応じて返済額を増減できるサービスを用意しています。たとえばみずほ銀行の「ライフステージ応援プラン」は、収支に余裕がある時期は返済額を増やし、育休中や子どもの在学中は返済額を減らす(借入期間の延長を伴う場合があります)といった見直しができるサービスです。利用には所定の条件と審査があり、手数料は1回あたり5,500円(税込)ですが、同行の「子育て応援サービス」の対象になると無料になります。詳細・最新の条件はみずほ銀行の公式ページでご確認ください。用語ミニ解説
はじめて住宅ローンを調べる方がつまずきやすい言葉を、簡単に整理しておきます。 元利均等返済…毎月の返済額(元金+利息)が一定になる返し方。返済額が読めるので家計管理がしやすい反面、初期は利息の割合が大きく、元金が減りにくいという特徴があります。 一部繰上返済…毎月の返済とは別に、まとまった金額を返して元金を減らすこと。返済額を減らす「返済額軽減型」と、返済期間を短くする「期間短縮型」があり、教育費に備えるなら前者が選択肢になります。 金利タイプ…変動金利・固定金利期間選択型・全期間固定金利の3つが基本。全期間固定は返済額が確定するため、教育費の見通しを立てやすいという利点があります。よくある質問
Q. 子どもが小さいうちに家を買うと不利なのでしょうか? 不利ということはありません。むしろ、教育費が軽い時期が数年あることは、繰上返済や貯蓄を進めるうえで有利にはたらきます。大切なのは「その余裕が永続しない」と分かったうえで計画を立てることです。 Q. 教育費のピークに返済が苦しくなったら、どうすればよいですか? 延滞してしまう前に、必ず借入先の金融機関へ早めに相談してください。返済額の減額や借入期間の延長といった条件変更に応じてもらえる場合があります。滞納が発生してからでは選べる手段が減ってしまうため、「苦しくなりそう」の段階で動くのが鉄則です。 Q. 教育費のために、住宅ローンは長めに借りたほうがよいですか? 借入期間を長くすると毎月の返済額は下がりますが、利息の総額は増え、完済年齢も上がります。「毎月の負担を軽くする」ことと「総返済額を抑える」ことはトレードオフの関係にあるため、退職時期までに無理なく返し終えられるかを軸に判断しましょう。 Q. 子どもの人数が増えるかもしれない場合、どう見積もればよいですか? 上の表の学習費はあくまで子ども1人あたりの金額です。人数が増えればその分だけ上乗せされると考え、余裕を持った返済額に設定しておくと安心です。借入先を選ぶときに見ておきたいこと
長く付き合う住宅ローンだからこそ、金利の低さだけでなく、「借りたあとの使いやすさ」も比べてみてください。とくに教育費に備えたい家庭では、繰上返済のしやすさが効いてきます。 たとえばSBI新生銀行の住宅ローンは、インターネットバンキングから1円単位・手数料0円で、いつでも何度でも繰上返済ができます(全額繰上返済も手数料0円)。余裕のある時期にこまめに元金を減らしておきたい、という使い方と相性がよい仕組みです。保証料は0円で、事務手数料は借入金額×2.20%(税込)の定率型と、費用の内訳が分かりやすいのも特徴です。店舗での相談とオンライン手続きの両方に対応しているため、初めての方でも進めやすいでしょう。もちろん、金利や団信の内容も含めて他行と並べて比べたうえで判断してください。まとめ
住宅ローンを検討していると、どうしても金利・返済年数・諸費用といった「借りる条件」に目が向きます。 もちろん条件は大事ですが、それ以上に重要なのは、いまの家計と将来の家計を見極めることです。教育費の段差、物価の上昇、住まいの維持費——これらは誰の家庭にも訪れる、いわば予定された負担です。 「子どもが13歳〜19歳になる時期」を最初から計画に織り込んでおく。たったこれだけで、将来「収入は変わっていないのに、なぜか苦しい」と慌てる可能性はぐっと下がります。まずは、その時期に自分の家計がどうなるかを紙に書き出すところから始めてみてください。
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