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繰り上げ返済は急がない?住宅ローンと積立を両立させる資金計画

住宅ローンを組むとき、「5年後、10年後に繰り上げ返済して残高を減らしましょう」とすすめられることがあります。利息を減らせるのですから、たしかに合理的な考え方です。

でも、本当にそれだけがベストと言えるでしょうか?

かつてのような大幅な昇給を前提にした返済計画は立てにくくなっていますし、一時的にお金が入っても、旅行や趣味の出費にまわってしまうのが現実、という方も多いはずです。また、生活していくうえでまとまった出費が生じれば、繰り上げ返済に回すはずの貯金を崩さなければならなくなります。

そこで今回は、「繰り上げ返済を前提にしない」もうひとつの資金計画を、はじめての方にもわかるように整理してみます。あわせて、この考え方の弱点や、2026年の金利環境で気をつけたい点まで、正直にお話しします。

住宅ローンの返済表を2通り作ってみる

まず最初の一歩は、借入期間ちがいの返済表を2通り作って見比べることです。たとえば「住宅ローンを20年で組む場合と30年で組む場合」。ほかにも、完済年齢が65歳の場合と60歳の場合、といった比べ方でもかまいません。

ちょっと計算してみましょう。

※借入額2,000万円・金利年2.000%・元利均等返済・ボーナス返済なしで試算(金利は説明のための仮の前提です。実際の適用金利は借入時期や金融機関、商品によって異なります)

比較の観点 返済期間20年 返済期間30年
毎月の返済額 101,177円 73,924円
毎月の差額 27,253円(20年-30年)
総返済額の目安 約2,428万円 約2,661万円
総返済額の差 約233万円(30年のほうが多い)

ここで、毎月27,253円の差額をどう扱うかが分かれ道になります。

「賢い資金計画」という観点で申し上げますと、20年でローンを組んだつもりで家計を組み立て、実際には30年で借りるという考え方があります。そして差額の27,253円は、返済ではなく「積み立て」にまわすのです。

まず押さえたい:期間を延ばすと総返済額は増えます

ここは正直にお伝えしておきます。上の表のとおり、同じ金利なら、返済期間を30年に延ばすことで総返済額は約233万円増えます。「30年で借りたほうが得」という話ではありません。

それでもこの方法に意味があるのは、毎月の返済負担を下げ、そのぶんを手元に残せるからです。手元にお金があるということは、急な出費に耐えられるということ。逆に、繰り上げ返済に回してしまったお金は、いざというときに引き出せません。「約233万円の追加コストを払って、手元の自由度を買う」——この方法は、そう理解しておくのが正確です。

差額は何に積み立てる?

積立先は、金融機関の定期預金や積立定期でもかまいませんし、投資信託などで積立投資をするという方法もあります。

ここで、2026年はかつてと状況が変わっていることにも触れておきましょう。日本銀行の政策金利引き上げを受けて、安全性の高い商品の利回りも上がってきました。たとえば個人向け国債「固定5年」(第185回・2026年8月6日〜8月31日募集、9月15日発行)の適用利率は年2.06%(税引前/税引後は年1.6415110%)です(財務省公表)。数年前まで0.05%程度が続いていたことを思えば、大きな変化です。

ただし注意点もあります。個人向け国債は原則として発行から1年間は中途換金できませんし、投資信託などのリスク商品は元本が保証されていません。「住宅ローンの金利より高い利回りで必ず運用できる」といった前提で計画を立てるのは危険です。運用の成果は事前には分かりません。

いっぽう、積み立てそのものには確実な効果があります。毎月27,253円を積み立てるだけでも、元本の合計は10年で約327万円、15年で約490万円、20年で約654万円になります(運用益を含まない、単純な積立額の合計です)。増やす前に、まず「貯まる仕組み」ができることが大きいのです。

で、そのお金を繰り上げ返済にまわ……しません。次の節でその理由をお話しします。

積み立てたお金は、来たるべきライフイベント費用に回す

日々生活していくうえではさまざまなライフイベント(節目の出来事)があり、その中にはまとまった出費を要する出来事がいくつかあります。

住宅購入後に迎える出来事として代表的なものといえば、「子どもの進学」ではないでしょうか。そう、積み立てたお金は進学費用に充てるのです

ほかにも、将来的に独立・起業を目指している方の開業資金、車の買い換え資金、住宅そのもののメンテナンス費用(外壁や屋根の修繕、給湯器の交換など)も、いずれ必ずやってくる出費です。マンションであれば、修繕積立金が段階的に上がっていくケースもあります。

こうした予測できるライフイベント費用の確保を目的に「差額積立」を行う、というのがこの考え方の中心です。

若いうちは明るい将来像を描きますから、往々にして出世払い的に借金が増えていったりします。ですから、住宅購入と並行して、予測されるライフイベント費用まで想定した「ライフプランニング」をしっかり立てることをおすすめします。

2026年の金利環境で、あらためて気をつけたいこと

この考え方は今も有効ですが、金利が動く局面では前提の置き方に注意が必要です。はじめての方がつまずきやすい点を3つに絞ってお伝えします。

1. 変動金利で借りるなら「返済額が上がる可能性」を織り込む

日本銀行は2026年6月に政策金利を1.0%程度へ引き上げ、7月30・31日の会合では据え置きました。変動金利の目安となる短期プライムレートも、これを受けて各行が引き上げています。

多くの銀行の変動金利型(元利均等返済)には、返済額の見直しを5年ごとに行う「5年ルール」や、見直し後の返済額を直前の1.25倍までに抑える「125%ルール」が設けられていることがあります。返済額がすぐには変わらないので安心に見えますが、返済額が据え置かれている間も、金利が上がれば利息の割合は増えます(元金の減りが遅くなります)。ルールの有無や内容は銀行・商品によって異なりますので、必ずご自身の契約内容と返済予定表を確認してください。

差額を積み立てる計画を立てるなら、「将来、返済額が増えても積立を続けられるか」まで見ておくと安心です。

2. 住宅ローン控除の期間中は、繰り上げ返済を急がない考え方もある

住宅ローン控除(住宅借入金等特別控除)は、年末時点のローン残高等の0.7%を所得税額などから差し引ける制度です(令和4年以降に居住した場合。住宅の区分や居住年により借入限度額・控除期間は異なり、認定住宅等では控除期間13年)。

つまり、控除を受けている期間に繰り上げ返済をして残高を減らすと、その分だけ控除額も小さくなります。もちろん利息の軽減効果と比べてどちらが有利かは、金利・残高・所得税額によって変わります。「繰り上げ返済=いつでも得」ではない、ということだけは覚えておいてください。適用要件は細かく定められていますので、詳しくは国税庁のページでご確認ください。

3. 団体信用生命保険(団信)の保障は、残高が減るほど小さくなる

住宅ローンには通常、団信が付いています。万一のときにローン残高が保険で完済される仕組みですので、繰り上げ返済で残高を減らすことは、団信の保障額を減らすことでもあります。この点も、「手元に残す」か「返す」かを考えるときの材料のひとつです。

それでも繰り上げ返済が向いている人

公平を期すために、逆のケースにも触れておきます。次のような方は、繰り上げ返済を優先する判断のほうがしっくりくるはずです。

  • 金利が比較的高い借入がある方……利息の軽減効果がそのぶん大きくなります。
  • すでに十分な生活防衛資金(当面の生活費や教育資金)を確保できている方……手元の流動性に不安がないなら、返済を進める判断は合理的です。
  • 投資の値動きが気になって落ち着かない方……確実に利息を減らせる繰り上げ返済は、精神的に安定した選択肢です。
  • 完済年齢を定年前に引き寄せたい方……老後の家計を考えるうえでは大切な視点です。

なお、繰り上げ返済にかかる手数料や最低金額は銀行によって差があります。たとえばSBI新生銀行の住宅ローンは、一部繰り上げ返済の手数料が0円で1円から何度でも利用できるほか、保証料や一般団信の上乗せ金利も0円と、諸費用の考え方が分かりやすい銀行のひとつです。店舗での相談とオンライン手続きの両方に対応しているため、「借りたあとの返し方まで含めて相談したい」という方にとって検討に値する選択肢と言えるでしょう。取扱い内容や条件は変わることがありますので、最新の情報は各金融機関の公式サイトでご確認ください。

よくある質問

Q. 結局、繰り上げ返済はしないほうがいいのですか?

いいえ、どちらが正解と決まっているわけではありません。繰り上げ返済は利息を確実に減らせる一方、使ったお金は戻ってきません。手元の資金が薄い時期は積立を優先し、教育費のピークを越えてから繰り上げ返済に切り替える、といった時期による使い分けが現実的です。

Q. 期間を延ばすと総返済額が増えるのに、なぜわざわざ30年で借りるのですか?

毎月の返済負担を下げて、手元に現金を残すためです。この記事の試算では、増える利息は約233万円。それを「もしものときに家計が止まらないための保険料」と考えられるかどうかが判断の分かれ目になります。なお、30年で借りたあとで繰り上げ返済(期間短縮型)をすれば、結果的に返済期間を縮めることもできます。

Q. 積立は預金と投資、どちらがよいですか?

使う時期が決まっているお金かどうかで分けるのが基本です。3年以内に使う予定があるお金(教育費の直前資金など)は、元本が変動しない預金などで確保しておくほうが安全です。10年以上先まで動かさないお金であれば、リスクを取る選択肢も検討できます。ただしリスク商品は元本割れの可能性があります。

Q. 「20年のつもりで30年」の場合、いくら積み立てればよいですか?

2通りの返済表の差額がそのまま目安になります。この記事の例なら月27,253円です。まずはご自身の借入額・金利・期間で2通り試算し、差額を出すところから始めてみてください。金融機関のシミュレーションを使えばすぐに計算できます。

まとめ

繰り上げ返済は有効な方法ですが、「繰り上げ返済ありき」で計画を立てると、いざというときに手元の資金が足りなくなることがあります。

  1. 返済期間ちがいの返済表を2通り作り、毎月の差額と総返済額の差の両方を確認する
  2. 差額を積み立て、進学・車の買い替え・住宅のメンテナンスなど予測できる出費に備える
  3. 変動金利なら返済額の見直し、住宅ローン控除の期間、団信の保障まで含めて考える

この3ステップを踏むだけで、資金計画はぐっと現実的になります。大切なのは「返す」か「貯める」かの二択ではなく、ご自身のライフイベントに合わせて配分を決めることです。金利や制度の内容は変わりますので、実際に判断するときは各金融機関・公的機関の最新情報をご確認ください。

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