住宅を残したまま債務軽減はできるのか?個人版民事再生の概要を徹底解説
住宅ローンを返済中に、住宅ローン以外にもカードローンや自動車ローンなど複数のローンを契約している方は多いかと思いますが、近年ではこれらの債務の返済が困難になる方が増加しています。
債務の返済が困難になった場合、基本的には自己破産として手続きをすることで、ご自身が所有している住宅やその他の財産を手放す必要があります。ただし、住宅だけは手放したくないと考えている場合、住宅の手放し不要で債務軽減ができる手続きとして「個人版民事再生」があります。
今回は、個人版民事再生の概要について解説するとともに、自己破産との違いや細かい条件についても合わせて見ていきます。
個人版民事再生とは、住宅を手放すこと無く再建可能な手続き
個人版民事再生とは、住宅ローンや自動車ローン、カードローンなど複数の借入を行っている「多重債務」によって、返済が困難になった場合に、個人に適用する民事再生制度です。
民事再生制度は、一般的に企業が経営に行き詰った場合に行う手続きというイメージがあります。企業が適用する民事再生は、将来の事業収益から再生債務を弁済する、もしくは、スポンサーを募って資金援助により再建する、スポンサーに事業の全部もしくは一部を譲渡し、その譲渡で得た資金を債務の返済にあてる方法があります。
一方で、個人の場合は大きく分けて2種類あります。1つ目が個人事業主など自営業者を対象とした「小規模個人再生」、2つ目は給与所得者を対象とした「給与所得者等再生」があります。いずれも、将来的な収入が見込める場合のみに、債務負担を軽減することで再建を図る制度です。
企業と個人ともに共通しているのは、借り入れている借金が全てゼロになるわけではなく、あらかじめ何しかしらの収入が見込める場合に適用できる制度であると言えます。
債務の返済軽減はできるが住宅ローンの返済額は軽減されない
個人が行う手続きとしてよくあげられる「自己破産」がありますが、こちらは全ての財産を差し押さえることで借金を「ゼロ」にする方法です。そのため、所有している住宅やその他の財産は全て手放す必要があります。また、これから先の生活は全て「ゼロ」の状態から再スタートする必要があります。
個人版民事再生の場合は、自己破産とは異なり財産の差し押さえはないため、借金がゼロになるわけではありませんが、住宅ローン以外の債務を対象に返済の負担を軽減します。その代わりに、所有している今までの住宅に住み続けることができます。
個人版民事再生の手続きを行った後でも、住宅ローンについては、契約時に決定した返済額と金利を、引き続き返済もしくは支払いを続けていく必要があります。
個人版民事再生は残りの債務を3年で返済する必要がある
個人版民事再生の手続きを行った場合、債務が軽減された後は、原則3年以内に残りの債務を返済する必要があります。そのため、3年以内に返済ができるようにするためにもあらかじめ、債務額についても一定基準が儲けられており、住宅ローンを除いた債務額が5,000万円以下である必要があります。
返済額については、債務の金額によって決定し最大10分の1まで減額することができます。債務額が100万円未満の場合は全額を返済、100万円以上500万円未満は100万円を返済、500万円以上1,500万円以下は5分の1を返済、1,500万円以上3,000万円未満は300万円を返済、3,000万円以上5,000万円以下は10分の1となっています。
個人版民事再生の利用者が増加!住宅ローンは借りすぎないこと
住宅を手放さずに、個人が再建できる手続きとして紹介した「個人版民事再生」ですが、年々債務負担が増加し同制度を利用する人が増えています。2017年7月3日付の日本経済新聞の記事によると「最高裁判所によると2016年は前年比13%増の9602件と2年連続で増えた。」としています。
個人版民事再生利用者数推移(最高裁判所のデータを元に筆者作成)
最高裁判所のホームページで過去の個人版民事再生を利用した人の推移を上記表にしてまとめてみた所、過去は意外と個人版民事再生の利用者が現在より圧倒的に多く、2008年には27,672人となっています。その後は、右肩下がりに減少していますが、2015年の7,668人と底をついた後、2016年は9,602人と再び増加傾向となっています。
個人版民事再生が再び増えている背景としては、2014年1月に日銀が実施したマイナス金利政策により、新たな収益源確保として銀行各社がカードローンを無条件に貸し付けたことに加え、金利の低さにより身の丈を超えた住宅ローンを借り入れてしまった事により生活費が不足したことで、銀行から進められたカードローンに手を出してしまったことで借金が増えてしまったことが考えられます。
そのため、住宅ローンを借りる場合は、2017年9月23日の記事でも記載していますが、無理のな無い返済額として年収の25%を目安にし、将来的なリスクなども十分に考慮した上で十分な頭金を用意する必要があると言えます。
- 2017.11.18
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