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住宅ローンは定年後まで返して大丈夫?完済年齢と老後の備え

定年後まで返済が続く住宅ローンを組むこと自体はできます。多くの金融機関は完済時の年齢を80歳未満としているからです。ただ、「借りられる期間」と「無理なく返せる期間」は別物です。定年後は収入が下がりやすいので、借りる前に「何歳までに、どうやって返し終えるか」を決めておくことが大切です。ここでは、その考え方と、老後に残債が残りそうなときの選択肢を順番に見ていきましょう。

60歳までに完済したい住宅ローン

住宅ローンは、多くの金融機関で借入時の年齢が18歳以上70歳未満、完済時の年齢が80歳未満とされています。国土交通省の「令和7年度 民間住宅ローンの実態に関する調査」(2026年6月公表)でも、融資の際に考慮する項目として「完済時年齢」を挙げた金融機関は98.4%にのぼり、審査でもっとも重く見られている項目のひとつです。

近年は最長50年まで借りられる商品も増えています。たとえばSBI新生銀行は2025年10月に最長50年の取り扱いを始めました。ただし対象は変動金利(半年型)で新たに住宅を購入・建設する場合に限られ、35年を超えると当初の金利に年0.1%が上乗せされ、完済時の年齢が満80歳未満であることも条件です。晩婚化や住宅価格の上昇もあり、定年以降も返済が続く方は珍しくありません。

たとえば45歳で35年ローンを組むと、完済は80歳です。制度上は借りられても、定年から先の15〜20年を年金中心の収入で返し続ける計画になっている、ということは意識しておきたいところです。定年を迎えると、多くの場合、収入は大きく減ります。だからこそ、定年までに完済することが理想なのです。

働ける環境そのものは整ってきています。高年齢者雇用安定法の経過措置が2025年3月31日で終了し、2025年4月1日以降は「定年の廃止」「65歳までの定年引き上げ」「希望者全員の65歳までの継続雇用制度」のいずれかを講じることが企業に義務づけられました(厚生労働省)。さらに、70歳までの就業機会の確保も努力義務とされています。

とはいえ、継続雇用や再雇用では給与が大きく下がるのが一般的です。収入減を補ってきた高年齢雇用継続給付も、2025年4月1日以降に60歳になる方からは支給率が最大15%から最大10%へ引き下げられました。公的年金の支給開始は原則65歳ですから、60代前半は「収入は下がったのに年金はまだ」という期間になりやすいのです。

60歳は、多くの人にとって今までと同じように払うのが厳しくなる年齢です。
そのため、老後の生活のためにも60歳までに完済しておくのが理想なのです。

老後はお金がかかる!払えなくなったらどうなる?


老後は、マイホームも修繕が必要になったり、医療費や介護費用などがかかるようになります。お子さんやお孫さんへの援助をするというご家庭もあるでしょう。

しかし、現実には年金だけで生活するのは厳しいものです。足りない分は貯金を切り崩して補っている人が多いです。その状況で住宅ローンの返済も加わると、払えなくなるということも出てきます。

住宅ローンが払えなくなると、一定期間が過ぎた後に一括返済を求められます。それでもお金が用意できない時には、自分で家を売るか、競売で売られるかということになります。せっかく定年まで返済してきたにも関わらず、思い出も家も手放さなければならなくなるのです。

ただし、いちばんいけないのは「払えないまま黙っている」ことです。返済がきびしくなりそうだと感じた段階で、まずは借入先の金融機関に相談してください。事情によっては返済期間の延長や、一定期間の返済額の減額といった条件変更(リスケジュール)に応じてもらえる場合があります。延滞が続いてからでは選べる手が減ってしまうため、早い相談ほど選択肢が多いと覚えておきましょう。収入減や病気で返済が苦しくなったときの動き方は、収入減・失業・病気で住宅ローン返済が苦しくなる前の備え方でも詳しくまとめています。

そんな状況には誰でもなりたくありませんが、60歳までに完済というのは簡単ではなく、誰でもできることではありません。そのため、困らないように早めに対応していきましょう。

定年退職後に困らないためにできること

毎月しっかり貯金できるという場合は、繰り上げ返済を検討しましょう。
ただし、お子さまがいる場合には学費などでまとまったお金が必要になる時がありますし、年齢とともに予期せぬ医療費などでお金がかかります。

貯金を全て繰り上げ返済に充てるのは大変危険ですから慎重に検討しましょう。手元の現金は、いざというときに家計を守る「保険」でもあります。生活費の半年分程度は残す、といった目安を決めておくと安心です。

他には、退職金で残額を支払うという人は多いです。
ただ、早いうちから退職金を当てにしてはいけません。出るかどうか確実ではないからです。就業規則などで、退職金が出るのかどうか・出る場合はどれぐらい出るのか、おおまかな金額だけは把握しておきましょう。

そして、年金がどれぐらい出るのかも確認しておく必要があります。毎年、誕生日の月になると「ねんきん定期便」が届いていると思いますが、50歳をすぎるとそこに年金見込額も書かれています。50歳未満の方や、より詳しく確認したい方は、日本年金機構の「ねんきんネット」や、厚生労働省の「公的年金シミュレーター」も利用できます。

なお、公的年金は受け取り開始を遅らせることもできます。66歳から75歳までの間で繰り下げると、1か月遅らせるごとに0.7%、最大84%増額されます(日本年金機構「年金の繰下げ受給」。昭和27年4月1日以前生まれの方は上限70歳)。増えた年金額は一生変わりません。65歳以降も働ける見込みがあるなら、「繰下げで年金を増やす」か「その間に住宅ローンを返す」かを、家計全体で比べて考えてみましょう。

年金の見込額をもとに、定年退職後でも住宅ローンを支払っていけるのかシミュレーションをしておくことも大切です。

今現在は働いていて収入もありますが、先の事は誰にもわかりませんよね。
しかし、わからないからとそのままにせず、今からしっかり貯蓄して定年後に備えましょう。

65歳以降も働きながら返すときに知っておきたいこと

「定年後も働いて、その給料で返済を続ける」という計画の方も多いと思います。そのときに知っておきたいのが在職老齢年金という仕組みです。

在職老齢年金は、厚生年金に加入して働きながら老齢厚生年金を受け取る場合に、給与と年金の合計が一定額を超えると、年金の一部が支給停止になる制度です。この基準額が2026年4月から月51万円→65万円に引き上げられました(令和8年度の額。日本年金機構「在職老齢年金の計算方法」)。

以前より「働くと年金が減る」場面は少なくなり、65歳以降も働きながら返済を続けやすくなったといえます。ただし、基準額は毎年度、賃金の変動に応じて見直されます。また、健康や勤め先の事情で、予定どおり働き続けられるとは限りません。「働けなくなったら返済はどうなるか」も、あわせて考えておきましょう。

万一のときに返済がどうなるかは、加入している団体信用生命保険(団信)の保障内容によって変わります。団信で何が保障されるのかは、住宅ローンを払わなくてよくなるケースと団信の保障で整理しています。

それでも定年後に残りそうなときの選択肢

シミュレーションの結果、定年後にまとまった残債が残りそうだと分かっても、打てる手はあります。おもな選択肢を整理しておきましょう。

選択肢 どんな効果があるか 注意点
繰上返済(期間短縮型) 完済年齢を前倒しできる 手元資金を使いすぎない
借り換え 金利や返済額を見直せる 諸費用がかかる・審査がある
金融機関への条件変更の相談 返済額を一時的に抑えられる 総返済額は増えやすい・早めの相談が前提
【リ・バース60】 毎月の支払いを利息のみにできる 元金は死亡時に自宅売却等で返済
住み替え・ダウンサイジング 住居費そのものを下げられる 売却価格や住み替え先の検討が必要

このうち【リ・バース60】は、住宅金融支援機構の住宅融資保険を使った満60歳以上向けのリバースモーゲージ型住宅ローンで、民間の金融機関が取り扱っています。毎月の支払いは利息のみです。元金は、契約者が亡くなったときに相続人が一括返済するか、担保となっている住宅・土地の売却で返済する仕組みです。

住宅の建設・購入・リフォームのほか、住宅ローンの借り換えにも利用できます。融資限度額は担保評価額の50%または60%で、1億2,000万円以下かつ所要資金以内です(長期優良住宅で満60歳以上の場合は55%または65%)。金融機関によっては満50歳以上60歳未満でも利用できますが、その場合の限度額は担保評価額の30%になります(住宅金融支援機構「リ・バース60」)。利用できる年齢や商品内容は取扱金融機関ごとに異なります。

よくある質問

Q. 何歳まで住宅ローンを借りられますか?

A. 多くの金融機関で借入時70歳未満・完済時80歳未満が目安です。返済期間は完済時年齢の上限から逆算されるため、たとえば50歳で申し込むと、35年ではなく30年程度までしか組めない、ということが起こります。

Q. 返済期間は長いほうがいいですか、短いほうがいいですか?

A. 期間を長くすると毎月の返済額は下がりますが、支払う利息の総額は増え、完済年齢も上がります。まず「定年までに返し終わるか」を基準に考え、届かない場合は繰上返済で短縮していく前提で長めに組む、という順番がおすすめです。

Q. 退職金で一括返済するのは正解ですか?

A. 残債と手元資金のバランス次第です。老後の生活費・医療費・介護費用を残さずに一括返済すると、その後の生活が苦しくなります。また、完済すると団体信用生命保険(団信)の保障も終わります。返済負担と保障のバランスも含めて検討しましょう。

Q. 65歳を過ぎて働きながら返済すると、年金は減りますか?

A. 厚生年金に加入して働く場合、給与と老齢厚生年金の合計が基準額(2026年度は月65万円)を超えると、超えた分の半額が年金から支給停止になります。基準額を超えなければ年金は減りません。

Q. 定年後に借り換えはできますか?

A. 収入や年齢の条件によっては難しい場合もありますが、まったく不可能というわけではありません。退職前の、収入が安定しているうちに検討しておくほうが選択肢は広がります。60歳以上なら【リ・バース60】での借り換えも候補になります。

老後の家計は、住宅ローンの残り方ひとつで大きく変わります。制度や商品の内容は変更されることがありますので、最新の取り扱いは各金融機関・関係機関の公式サイトでご確認ください。

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